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「アニマルウェルフェアと豚生産システム」OIE動物福祉基準に意見

OIE(世界動物保健機関)には日本を含む世界180ケ国が加盟しています。
そのOIEでは、動物福祉について14の基準(コード)が採択されています(2015年1月時点)。

これらの動物福祉基準について、OIEのサイトには次のように書かれています。
OIEの各国事務局はOIEの動物福祉基準を正しく人々に伝え、そして彼らの政府にこの基準を実行に移すように説得すること (The World Organization for Animal Health (OIE)サイトより)

OIE加盟国である日本は、この動物福祉基準を遵守するよう努力していかねばなりません。
今、このOIEの動物福祉基準に「アニマルウェルフェアと豚生産システム」が追加するための作業が進められています。

「アニマルウェルフェアと豚生産システム」はまず案が出され、その案に対して、各国がOIE コード委員会にコメント(意見)を提出し、それらをすり合わせて採択される運びとなります。

※「アニマルウェルフェアと豚生産システム」案
http://animals-peace.net/event/oie-2nd-2016.html

「アニマルウェルフェアと豚生産システム」案へ、日本からおコメントが提出される前に、私たちアニマルライツセンターと、PEACEヘルプアニマルズJAVAは、2016年1月4日、下記の提案書を農林水産省に提出させていただきました。

「アニマルウェルフェアと豚生産システム」案の各条項ごと提出した意見

第7.X.4条

9.飼養管理上の処置による合併症
「飼養管理を円滑化し、市場の要件を満たし、人の安全及びアニマルウェルフェアを向上させるために、外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識、鼻輪、蹄の処置等が通常、行われる。
ただし、これらの処置が適切に実施されない場合には(以下略)」

(私たちからの意見)
「飼養管理を円滑化し、市場の要件を満たし、人の安全及びアニマルウェルフェアを向上させるために、外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識、鼻輪、蹄の処置等が実施される場合があるが、これらの処置が適切に実施されない場合には(以下略)」

(理由)
第7.X.9条において、3つのRのうちの代替についても述べられており、「通常、行われる」とすることは矛盾がある。
特に外科的去勢については欧米諸国を中心に禁止・廃止の流れにあり、「通常、行われる」と記述することは実態にそぐわない。
また我が国の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」も歯切りについては削る方法を例示している。

第7.X.6条

「豚は社交的な動物であり、群で生活することを好むため、成熟雌豚や未経産豚が群れで飼われるような舎飼システムが推奨される。」

(私たちからの意見)
「豚は社交的な動物であり、群で生活することを好むため、成熟雌豚や未経産豚は群れで飼われるような舎飼システムにすべき。」

(理由)
個別飼育は豚の生態上好ましいものではなく、その福祉を著しく阻害する。欧米を中心に母豚の個別飼育は廃止の方向にあり、推奨ではなく勧告が望ましいと考える。
第7.X.9条
「外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識、鼻輪等の処置は豚に対して一般的に行われる。」

(私たちからの意見)
「外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識、鼻輪等の処置は、最小限にとどめるものとする。」

(理由)
3つのRについて後述されており、代替可能なものについては代替する(処置は行わない)ということをまずは選択させるべき。
特に外科的去勢については欧米諸国を中心に禁止・廃止の流れにあり、「一般的に行われる」と記述することは実態にそぐわない。
また我が国の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」も歯切りについては削る方法を例示している。
第7.X.13条

3ストール(クレート)
「ストールは、豚が以下の行動をとれるように適切な大きさでなければならない。」

(私たちからの意見)
「ストールは常時使用されるべきではない。
ストールは、豚が以下の行動をとれるように適切な大きさでなければならない。」

(理由)
方向転換すらできないストール飼育は豚の行動の自由を奪い、その福祉を著しく阻害する。使用せざるを得ない場合も限定的とされるべき。
第7.X.14条

「すべての生産システムにおいて、豚には、水はけが良く、快適な休息場所が必要である。」

(私たちからの意見)
「すべての生産システムにおいて、豚には、敷料、遊べる素材が提供され、水はけが良く、快適な休息場所が必要である。」

(理由)
豚には、穴を掘れる環境や遊べる素材の提供が必要である。豚は、土を掘り起こすルーティングや、ものを噛むチューイングといった行動に対して強い発現欲求を持っており、それらの行動を制限されることは、福祉の低下だけではなく、尾かじりや仲間との闘争につながっている。

以上。

日本からOIEコード委員会に提出されたコメント

その後、日本からOIEコード委員会に提出されたコメント(意見)が、農林水産省のサイトに公開されました。
2017年1月 陸生動物衛生規約改正案に対するコメント
内容は次の通りです。わたしたちNPOの意見が反映されているかどうかを見ると….

■第7.X.4条について
「飼養管理を円滑化し、市場の要件を満たし、人の安全及びアニマルウェルフェアを向上させるために、外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識、鼻輪、蹄の処置等が通常、行われる。」
とあったコード案について、これらの処置は欧米諸国を中心に禁止・廃止の流れにあるため「通常」との文言は省くべきとの意見を農林水産省に出していたところ、日本側からのコメントも同様に、「通常」の文言が省くべき、というものになりました。(ただし省いた理由は「通常という言葉があいまいなため」となっています。)

■第7.X.6条について
「豚は社交的な動物であり、群で生活することを好むため、妊娠した成熟雌豚や未経産豚が群れで飼われるような舎飼システムが推奨される。」
とあったコード案について、推奨ではなく「すべき」との意見を農林水産省に出していたところ、日本側からのコメントは、

豚は社会的な動物であり、群で生活することを好むため、妊娠した成熟雌豚や未経産 雌豚が群で飼われるような舎飼システムを選択する際には、可能な限り豚の社会性 を損なわないようにすべきであるが推奨される。」(黄色い部分は追加)

というものになっています。
本来の案では、「個別飼育される妊娠ストールの使用は好ましくない。できるだけ群れで飼育したほうが良い」と、妊娠ストールの問題が明確にされていますが、日本側から出したコメントからは「群で飼う」という文言が消え、具体性にかけた表現になっていると感じます。

■第7.X.9条について
「外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識、鼻輪等の処置は豚に対して一般的に行われる。」
とあったコード案について、これらの処置は欧米諸国を中心に禁止・廃止の流れにあるため「一般的に行われる」との文言を「最小限にとどめるものとする」と変更する意見を農林水産省に出していたところ、日本側からのコメントは、

「外科的去勢、断尾、歯切り、牙切り、個体標識(耳標、耳刻、入墨等)、鼻輪等の処置は豚に対して一般的に行われる。これらの処置は飼養管理を円滑にするため、また市場の要件を満たすため、人の安全及びアニマルウェルフェアを向上するためにのみ行われるものとする。
これらの処置は苦痛をもたらす可能性があるため、動物への痛み及び苦痛を最低限にする方法で行われるものとする。これらの処置は、できるだけ若いうちに実施するか、獣医師の監督や助言に基づいて、鎮静または麻酔で実施するものとする。
アニマルウェルフェアを向上させるための選択肢としては、管理戦略によってこうした処置を不要とする、動物に快適性を増すことが知られている非外科的代替手段に置き換える、といったことが考えられる。
当該行為に関連して、アニマルウェルフェアを強化するための選択肢には、国際的に認識されている「3 つの R」、代替(去勢豚に対して(去勢等の処置を行っていない)雄豚又は免疫的去勢豚)、削減(必要な場合のみの断尾及び切歯)、改善(鎮痛又は麻
酔)等がある。
」(黄色い部分は追加)

というものになっています。
「一般的に」という言葉が削除されただけではなく(削除の理由は「一般的」という言葉があいまいだからというものですが)、この日本側からのコメントには、「獣医師の監督や助言」「鎮静または麻酔の実施」という記述が盛り込まれています。
これらの記述は「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」と「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム」に掲載されているものと同様の記述で、元の案よりも動物への配慮のあるものになっているといえます。しかしそのあとの3つのRに続く具体的な方法を記した文が削除されてしまっています。(この章の修文の理由を日本側は「他の畜種(乳用及び肉用牛)の章と整合性を図るため」としています)

■第7.X.13条について
ストール(クレート)について、「ストールは常時使用されるべきではない」の一文を追加すべきとの提案を農林水産省に出していましたが、日本側のコメントは、

「ストールは、豚が以下の行動をとるためにとれるよう、適切な大きさでなければならないとなるものとする。」(黄色い部分は追加)

というものになっています。
私たちの意見は反映されませんでした。

■第7.X.14条について
「すべての生産システムにおいて、豚には、水はけが良く、快適な休息場所が必要である。」
とあったコード案について、「すべての生産システムにおいて、豚には、敷料、遊べる素材が提供され、水はけが良く、快適な休息場所が必要である。」と加筆すべきとの意見を農林水産省に出していましたが、日本側のコメントには反映されませんでした。


「アニマルウェルフェアと豚生産システム」OIEコードは、今後OIE総会で検討され、その後通常通りであれば2018年に採択される見込みです。その間第二のコメントが提出される可能性もあります。引き続き、OIEの動物福祉基準の策定状況を、注視し、意見していきたいと思います。

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