牛の舌遊びは、日本の畜産場でよく見られる光景です。
2019年日本
*上の動画の牛たちの白い斑点は皮膚真菌症です。カビが原因の皮膚炎です。
牛の抵抗力が弱い場合や、飼育環境が悪い場合に多く見られます*。
2017年日本
2017年日本
2016年日本
*子牛を別々の囲いに単飼いしている農場です。囲いの広さ高さ幅、いずれも、子牛のサイズに十分とは言えず、子牛の行動を著しく制限しています。一頭一頭が別々に飼育されているため、ほかの仲間とじゃれ合ったり親和関係を結ぶこともできない状況です。
日本でたびたび見られる牛の舌遊びは、不適切な環境で飼育されていることのあらわれです。
舌遊び行動とは,舌を口の外に長く出したり,舌先を左右に動かしたり,舌先を丸めたりする動作を持続的に行う行動.さらに柵や空の飼槽(餌入れ)などを持続的に舐める動作は模擬舌遊び行動と呼ばれる.
人工哺乳(吸乳時間の不足),粗飼料の不足,繋留,単飼(1頭のみで飼育する)などの行動抑制による長期的葛藤状態から誘発される.引用元:国立大学法人帯広畜産大学サイト http://www.obihiro.ac.jp/~seo/tpl.html
ほとんどの動物がそうですが、牛も本来なら一日のほとんどの時間を採餌行動に費やします。しかし現代の畜産では、牛は牛舎に閉じ込められ、餌を自分で探すという行動欲求は満たされません。
集約畜産で指向されてきた餌のコンプリート飼料化や濃厚化は、探査および咀嚼の方法と時間を単純かつ短縮させた。その葛藤が、ウシでは舌遊び行動として発現する。
引用元:「ウシの科学」広岡博之 編
牛は与えられた餌を食べるよりも、自分の舌で草を刈りとり、巻き取って食べることを好みます。
自分の舌で草を刈りらなければならない「放牧」と、与えられた餌を食べるだけでよい「放飼」の、好きなほうを牛に自由に選択させたところ、手間はかかるけれど自分の舌で刈りとって食べるほうを牛は選択した、という研究もあります。
舌遊び行動をする牛は、心拍数が低下し、安寧効果があると言われています。
などの自身の力でどうしようもできない苦悩、積み重なった葛藤を、舌遊び行動でまぎらわしているのです。
* 城南家保ニュース Vol. 19-19熊本県城南家畜保健衛生所 平成20年1月 発行