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ブロイラー(商業鶏)だけでなく、地鶏の福祉も低下

改悪された「地鶏」の定義

チャンキーやコブなどの大量生産されるブロイラー(コマーシャル鶏)は、増体を重視し短期間で急成長させることを目的として「品種改良」が行われた結果、さまざまな動物福祉の問題を抱えている。ブロイラーたちは歩行困難、腹水症、心臓疾患などの病気で苦しみの多い一生をおくっている。

しかしブロイラーとは違い、わずかながらいくつかの点で福祉が保証されているのが地鶏だ。
地鶏には地鶏肉の日本農林規格が存在するからだ(もっとも、地鶏肉の日本農林規格の目的は動物福祉ではなく差別化だが)。
この規格には

  • 飼養期間
  • 飼養方法
  • 飼養密度

が定められている。

飼養方法については、28日齢以降平飼いで飼育していること。
飼養密度については、28日齢以降1㎡当たり10羽以下で飼育していること。
と決められている。1㎡あたり10羽というのはかなりの過密だが、それでも「地鶏」ではない鶏の場合飼育密度が16羽ということを考えるとずいぶんマシになる。

じつはこの飼養期間、2015年に改悪されている。

2015年の、地鶏肉の日本農林規格の見直しで、

「ふ化日から80日間以上飼育していること」が、
「ふ化日から75日間以上飼育していること」に変わってしまったのだ。

なぜ改悪されてしまったのか?

ブロイラーは生後50日ほどで出荷されているが、そのように短期間で鶏を成長させることへの批判が日々高まっている。「一日でも早く出荷を!」という効率優先で動物福祉を顧みない畜産はこれからますます時代遅れのものになってくるはずだ。それなのになぜ時代に逆行するような改正が行われてしまったのだろうか。

2015年6月9日の農林物資規格調査会の議事録*を読むと、その経緯が明らかになる。要は、地鶏の一つである「阿波尾鶏」をたくさん売るためにこの改正が行われたのだそして改正に当たって動物福祉が全く考慮されていないことが分かる。

はじめに頭に入れておきたいのは、じつは地鶏であっても片方の親はブロイラー専用種の系統が使われることがあるということだ。それらの系統は日々増体を目指して「品種改良」が行われている。その結果、それらの系統と掛け合わされて作出された地鶏でもさまざまな動物福祉上の問題を抱えることになってしまっている。

議事録を読むと、最近の阿波尾鳥は、出荷時には足の骨が湾曲し皮が破れ、赤い斑点が出てきて炎症が起こっているという。生後たった80日にしてそのような状態に陥っているというのは異常だ。だがもともと4~5か月かけて大人になる鶏に対して、増体を目的とした過酷な育種が行われていることに問題提起するような発言は一つも出ていないことが分かる。

会議で問題になったのは「そのような状態だと出荷できない(商品にならない)」ということのみだ。そして「それならば足の骨が湾曲し炎症が起こり商品価値が下がる前に出荷できるようにしよう」というのが会議の結論だ。これが2015年の改正の目的だった。

「阿波尾鶏の生産振興」という一つの商売のために農林規格が改正されることがあるということにも驚くが、それ以上に、有識者が集まり動物福祉という議論されて当然の意見がまったく出なかったことに、日本の救いようのないレベルの低さと、動物を「経済動物」というカテゴリに入れることの本質的な残酷性を感じる。

2015年6月9日の農林物資規格調査会の議事録

(地鶏肉の日本農林規格見直し議事の部分のみ全文抜粋。赤字・太字はアニマルライツセンターが強調)

○阿久澤会長 異議はないようですので、その旨報告させていただきます。
それでは、次に、地鶏肉の日本農林規格の見直しについて審議を行います。
事務局から資料の説明をお願いいたします。
○高崎上席表示・規格専門官 それでは、地鶏肉についてご説明申し上げます。
初めに資料の2の1ページ目、2ページ目をごらんください。これ、日本農林規格の改正についての諮問ということでございまして、先ほどのハンバーガーパティと内容的には同じということで省略させていただきますが、今回の地鶏肉の見直し事項といたしまして、これは資料2の2ページ目の中にございますけれども、飼育期間について80日という規定を75日に短縮するというのがメインになっているというところでございます。
それでは、まず机上配付の参考資料の1をちょっと開いていただいて、これの3ページ目でございます。地鶏肉のJAS規格ということで整理したものでございまして、地鶏肉のJASというのは、特色ある生産方法の基準ということで、ここに書いてあります素びな、飼育期間、飼育方法、飼育密度というものを規定をしておりまして、この基準に合致した生産方法で生産された鶏肉等を地鶏肉としているということです。それぞれの生産方法の基準といたしまして、素びなについては在来種由来の血液百分率が50%以上、要は在来種の血が半分以上入っているということと、出生の証明ができるということ。それから、飼育期間につきましては、孵化してから80日間以上飼育する。飼育方法につきましては、28日齢以降、孵化してから28日たった以降、これは平飼いにする。飼育密度についても、28日齢以降は1m2当たり10羽以下にするといった内容で、これが地鶏肉のJASの規格でございます。
続きまして、今度は資料の2に戻っていただいて、地鶏肉の規格調査の概要というものでございます。
この規格調査の結果の概要ということで3ページ目に書いてございます。品質の現況の中の表の2に、先ほど申し上げた生産方法の基準がありますが、その下に在来種として38種類の鶏種、種類が書かれています。こういったものを在来種としてJAS規格の中で規定しているということです。
それから、同じく3ページ目の一番下の品質の実態ということで、地鶏肉の認定を受けていらっしゃる生産者、それと、地鶏肉をつくっているけれども認定を受けていらっしゃらないという生産者の方々、そういった方々に対してアンケート調査を行いました。その結果、回答をいただいた全ての事業者の方は、認定を受けていらっしゃらない事業者につきましてもJASの基準を満たしているという、そういった生産方法で生産しているということでございました。
続きまして、4ページ目の生産の現況ということで、表の3に食鶏の出荷数量の推移という表がございます。この中で国内の出荷数量がトータルで平成25年約208万トンということですが、この区分の中に残念ながら地鶏という区分がございません。この統計の区分は、表にあるとおり肉用若鶏、これはいわゆるブロイラーに該当するものが大半だと思いますが、肥育日数が3カ月未満のものを、この肉用若鶏として区分しています。廃鶏というのは、採卵鶏とか種鶏にした、もう役目が終わったものということでございまして、③のその他の肉用鶏、これは肥育期間が3カ月以上のものということで、地鶏は、この③のその他の肉用鶏の中に含まれていると一般的に整理され、このその他の肉用鶏が25年は2万6,000トン程度ということで、全体の比率からすると1%ちょっとという、こういった状況でございます。
一方、地鶏肉の格付状況ですが、次のページ、5ページ目を見ていただくと、表の4に格付数量といったものが書いてあります。平成25年度地鶏肉の格付数量が7,392トンということです。格付率というものが出ない、地鶏自体の生産がわかりませんので、先ほど申し上げたその他の肉用鶏で比較すると、その他の肉用鶏が2万6,335トンということでございます。この中に地鶏が大半含まれるというふうに思われますので、こういった数字を1つ参考にしていただければと思います。
また、認定生産工程管理者の数ですが、25年度14者ということです。ただ、その14者のうち上位2者が、表の5に書いてありますが、上位2者で格付数量6,937トンということで、全体の格付数量の94%、95%、大半を占めているといった状況です。格付実績がある地鶏肉といたしましては、この5ページ目の上から2行目にちょっと書いてありますが、この阿波尾鶏とか奥美濃古地鶏等々のものに限定的だったという状況でございます。
それと、表の6ですが、これは小分け認定業者ですけれども、25年度は、ゼロということで、26年、昨年1者増えまして、今現在1者いらっしゃるんですけれども、こういう状況です。認定事業者が例えばスーパーに出荷いたしました、それをスーパーで小分けしますという場合、JASマークがついている場合、小分けしたものにもJASマークを継続して張る場合には小分け認定が必要でして、なかなか小分け業者が増えないという状況の中で、一般の消費者が店頭、お店でJASマークがついた地鶏肉を見るという機会は限定的なのかなという状況だとは思われます。
全体的に地鶏肉の格付数量がおおむね一定の数字で推移しているということで、今後も一定数量の格付は維持されるのではないかということでございます。
続きまして、改正の概要ということでご説明いたします。
7ページ目をまず見ていただくと、まず規格の位置づけでございます。地鶏の肉というのを規格自体が、先ほど申し上げたとおり生産方法に特色があるということで、一般的な鶏肉との間で明確な差別化が図られているということから、引き続き「特色規格」として位置づけるというものでございます。
それから、改正内容ということで、「飼育期間」の短縮でございます。80日を75日に短縮するということですが、ちょっとまた机上配付の資料のほうに、申しわけございません。戻っていただきまして、机上配付資料の参考資料の4ページ目、5ページ目をご説明させていただきたいと思います。
この内容につきましては、原案作成委員会の中で検討された、あるいは提供されたデータを整理しているというものですが、今回の改正内容につきましては、実際格付の大半を占めております阿波尾鶏の生産振興をしている徳島県のほうから改正要望があったということです。この阿波尾鶏ですが父方が在来種である軍鶏で、母親がホワイトプリマスロック、これをかけ合わせたものということです。最近、この母方のホワイトプリマスロック、これ、育種改良が進んで増体性がよくなった。要は早く大きくなるということでございまして、それに伴いまして阿波尾鶏も成長が早期化しているということで、出荷体重が以前3.5キロだったものが4.5キロに増加しておりまして、それに伴ういろいろ弊害が出てきているということです。
図の2をごらんいただくと、この折れ線グラフが出荷時の平均的な体重。これは雄鶏の体重なんですけれども、生体体重ということで、平成11年にこの規格が制定された当時は3.5キロ平均だったものが、だんだん増えていきまして、最近は4.5キロと1キロ増加した。それに伴って、棒グラフが規格外の発生率ということなんですけれども、要は品質的にちょっと問題があるものということで、体重増加に伴い規格外の発生率も増えているということでございます。
図の1に事例ということで、これは写真がございますけれども、足の骨の写真、左側は曲がっております。これは成長が早まって体重が重くなって骨が曲がった、湾曲したということです。湾曲することで、例えば皮が破れるとか、あるいは右側のもも肉の写真がございます。ちょっとこれ、色が見にくいのですが、黄色で囲っている部分、これは赤い斑点が出てきている。
これは炎症だということでございますけれども、こういった炎症が出て商品価値を損ねているということ。
それと、鶏肉、解体する場合に機械で処理するのですが、大きくなり過ぎて機械に入らない、手作業になってしまうという、そういった実態的な部分という弊害が出てきているということです。
では、この弊害が出るボーダーラインといいますか、それがどれぐらいなのかというと、次のページを見ていただくと、生体体重として4キロ、これが一つの分岐点になるということです。4キロに成長するのはどれぐらいの期間なのかということで、この5ページ目の図に書いてございます。これも折れ線グラフが日齢別の生体体重ということで、生体体重が4キロになる時点というのが74と書いてありますが、これぐらいで4キロになるということと、もう一つは、棒グラフで書いてあるのは雄の精巣重量なんですけれども、70から74のところで増えている。これぐらいのところで性成熟が始まるということです。
この地鶏肉の80日という肥育期間、そもそも規格制定した当時、地鶏の肉がおいしくなる時期を設定するということで、いろいろ議論はあったんですけれども、一つの目安、指標として、この性成熟という切り口があるということです。規格制定当時は、この阿波尾鶏につきましても大体80日ぐらいで性成熟が開始するということで、その結果、現行規格では80日ということになっていますが、今現在、阿波尾鶏は5日ぐらい短縮して性成熟が開始しているだろうということです。そういったことから、今回肥育期間の基準につきましては80日から75日に短縮するという改正内容でございます。 

資料2の7ページ目に戻っていただきまして、また改正案の概要ということで、食品表示基準の制定に関してということです。これはハンバーガーパティと同じで、食品表示基準の規定に上乗せする部分のみ記載する、重複する部分は整理するということで今回改正させていただきたいということでございます。
また、今回パブリックコメント、事前意図公告によるコメントにつきましてはございませんでした。
以上でございます。
それとあと、ハンバーガーパティのところでも申し上げましたけれども、改正案につきましては、法令的な観点から字句の修正があり得るということをご承知おきいただければと思います。
以上でございます。
○阿久澤会長 ありがとうございました。
それでは、次に、原案作成委員会での議論の概要について原案作成委員会事務局から説明をお願いいたします。
○原案作成委員会事務局(出島) それでは、原案作成委員会の概要についてご説明をさせていただきます。
地鶏肉の日本農林規格の確認等の原案作成委員会は、鈴木敏郎東京農業大学農学部長を委員長といたしまして、消費者、生産者、販売者等の各分野の代表13名の委員から成る合議体で、その事務局を独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が務めました。委員会は、平成26年7月30日と、同じく同年10月30日の2回開催いたしまして、規格の位置づけの明確化と具体的な改正内容の審議を行いました。
なお、この委員会は、会議規則にのっとり会議の開催に当たり会議の一般傍聴及び意見陳述を公募したところ、一般傍聴のほか意見陳述の希望がありました。
その結果、規格の位置づけの明確化につきましては、地鶏肉のJAS規格は、これまで「特色規格」として位置づけられているところですけれども、地鶏肉の生産状況及び当該規格の利用状況を踏まえ検討した結果、地鶏肉の生産行程は標準的な行程と比較して相当程度明確化された特色を有しているということから、引き続き「特色規格」に位置づけることが適当ということで議決がされました。
次に、規格の見直しの方向性についての議論でございますけれども、意見陳述人から、まず1点目としまして、近年の阿波尾鶏の出荷体重の増加による弊害の抑制の観点から飼育期間の短縮についての意見陳述がございました。2点目としましては、生産効率向上の観点から、冬の期間ということですけれども、冬期における飼育密度の緩和についての意見陳述がございました。これらについて、消費者及び実需者に良質な製品を提供する観点から、科学的知見に基づき根拠となるデータの提示を受けまして、その内容を踏まえて改正の必要性を議論いたしました。
次に、規格の改正につきましてですけれども、まず飼育期間の短縮につきましては、良質な製品を提供する観点から、阿波尾鶏が直面している体重増加に伴う品質劣化を防止するため、飼育期間の短縮は必要であるということについて合意が得られ、飼育期間を現行の「80日間以上」から「75日間以上」とする改正を行うことが適当と議決がされました。
次に、冬期における飼育密度の緩和につきましてですけれども、こちらにつきましては、提出されたデータでは改正を検討するには不十分という結論となりまして、改正しないということが議決されました。
説明は以上でございます。
○阿久澤会長 ありがとうございました。
それでは、地鶏肉の日本農林規格の改正案につきまして、ご質問やご意見等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
夏目委員、どうぞ。
○夏目委員 すみません。今の原案作成委員会の説明はちょっと違っていると思うんですけれども、今、阿波尾鶏について、この飼育期間の短縮について合意がとれたというご発言でしたけれども、今ここで議論しているのは、阿波尾鶏のことから始まりましたけれども、地鶏肉という形になっておりまして、全く議論がそこは違うと思うんですね。もしかしたらご発言がちょっと違う形になってしまったのかなと思うのですけれども、確かに徳島県から体重の増加による弊害抑制、さまざまな支障が出ているので飼育期間を短縮してほしいという、こういう動きがあって、それを取り上げてというのはわかりますけれども、地鶏というのはJAS認定されているのが先ほど5種類あるとおっしゃいました。阿波尾鶏だけではないわけです。そうしますと、ほかの地鶏についてきちんと議論されたかどうかということがないと、この地鶏肉全体に改正が行き渡るという点での説明が十分ではなかったというふうに考えておりますので、そこをもう少し丁寧にご説明いただければというふうに思います。
○阿久澤会長 原案作成委員会のほうですか。いずれでも結構ですが、ご説明をお願いいたします。
○高崎上席表示・規格専門官 ありがとうございます。おっしゃるとおり、ほかの地鶏についてはどうなのかというような議論というのは原案作成委員会の中でもございました。実際、例えば地鶏もいろいろ種類がございまして、飼育期間、種類によって長いものから短いものまでいろいろございます。
例えば、机上配付資料の3の、ページで申し上げますと5ページをごらんいただくと、これは地鶏の一般の生産者も含めての数字なんですけれども、飼育期間の分布ということで雄と雌分かれておりますけれども、かなり幅広く分布しているということです。一番長いものでいうと、飼育期間で270日というのもございまして、それぞれの事業者の方々は、それぞれの飼育している鶏の品質の実態に応じまして一番適切な時期に出荷しているということです。阿波尾鶏の場合は、その適切な時期というのが今現在の80日では実態に合っていないということなんでしょうけれども、では、ほかのところはどうなのかというと、それは別に全然変わらないというところもあるだろうということで、全般的に地鶏肉のJASの規格としては80日を75日にするということですが、5日間短縮しても、ほかのものもおしなべて短縮になるかというと、それはそうではないという議論があったところでございます。
○阿久澤会長 そうしますと、他の地鶏肉においても、75日以上で十分地鶏肉の品質は今までどおり確保できるという検討をされたということでよろしいですか。
○高崎上席表示・規格専門官 他の地鶏肉についても75日ということでございます。
○阿久澤会長 いや、要するに75日以上あれば……。多くはそれ以上今やっているわけですよね。ですから、夏目委員のおっしゃるのは、そういう検討をされたかということですので。
○高崎上席表示・規格専門官 わかりました。すみません。原案作成委員会の中で、ほかの地鶏につきましても5日間の短縮でどうなのかという検討というのは、具体的な数字をもっての検討というのは残念ながら、申しわけございません。やってございません。
○阿久澤会長 しかし、今の事務局からの説明ですと、ほかの地鶏肉では80日以上のものですよね、現状。ですから75日にしても差し支えないということですね。
○高崎上席表示・規格専門官 そういう結論でございます。
○阿久澤会長 ということは、ある意味検討はされているということのように感じますが、いかがですか。
○高崎上席表示・規格専門官 そういうことで、会長がおっしゃられるように検討をさせていただいたというところでございます。
○阿久澤会長 夏目委員、いかがでしょうか。
○夏目委員 実態がよくわかりませんので。
○原案作成委員会事務局(出島) じゃ、ちょっとこちらから。すみません。
○阿久澤会長 お願いします。
○原案作成委員会事務局(出島) それでは、原案作成委員会の審議の中で、先ほど説明した内容が間違っているんではないかというお話でございましたけれども、先ほど説明がございましたように、今回データが出されたものは阿波尾鶏ということで、その問題、課題となっている部分を解決するためにということでデータに基づいて審議をしたという状況でございますが、それ以外の地鶏肉の生産者等につきましては、ヒアリング等も行ったりアンケート等の結果等を確認をして、それも踏まえて審議を実施しております。最終的に規格を、飼育期間を80日から75日にするということで、阿波尾鶏が直面している問題は解決されるだろうと。さらに、先ほど説明がありましたように、それぞれの地鶏については飼育期間がかなり違っておりますので、そちらにつきましては、それぞれの地鶏で一番おいしく出荷できる飼育期間というのがございますので、そちらのほうに今回大きく影響することはないだろうという審議を委員会の中で行っているということでご理解いただければというふうに思います。
○阿久澤会長 ありがとうございます。
ほか、よろしいですか。どうぞ、森光委員。
○森光委員 今回の改正につきましては、特に私自身は賛成で、基本的に国内においての恐らく地鶏生産というのは、先ほどの3-5にあるような「こだわりのある生産者」が頑張っておられます。国内の地鶏について、日にちもすごく長い、日数なんかでいうと270日で、びっくりするぐらい長く、確かに軍鶏系の肉自身は、それほど肉づきが悪いという言い方は変ですけれども、細身が急に太っていくことが性成熟に伴ってという、ある程度の根拠をもって今回の短縮は正しいと考えました。
ただ一方で、今回、例えば母鶏系の種鶏としてホワイトプリマスロックを使っている。例えば、これがもっと肉づきのいい鶏に変わっていって、性成熟がある程度ぎりぎりになるかもしれませんが、若鶏が3カ月未満ですから、もはやどこが境界かわからなくなって、あとは性成熟が始まらない肉の柔らかさを売りにする若鶏と、地鶏の結局、境界線というのがどんどん短縮する方向に向かう可能性があるのかというところが少し気になった点ではあります。ポイントとしては、なぜ例えば阿波尾鶏さんとか上位2社さんでほとんどこのJASを占めているのか。逆に言うと、例えば生産者全体が、先ほど冒頭で説明があったように、結構このJASの規格に合った形で地鶏についてこだわりを持って生産されているのに、JASを取らない理由は何なのか。逆に、取っていらっしゃるところは顧客への訴求効果という形で机上配付の3-15、16あたりに書いてはありますが、一方で取らないのは、多分それがあまり、要は一般消費者の方に、鶏肉が売られているところを見て、JASマークの地鶏は見たことがなく、むしろ我々が食べているような居酒屋での売り文句の中で地鶏というのが出ている。そういった中で、なぜ取る人と取らない人の差が、戦略的に違うだけなのか、理由があったら1つ教えてほしい点と、逆にこの規格はあってしかるべきでよかったなと思ったのは、まだ発生してないと思いますが、ちょうど今日の新聞記事にあったような、日本酒の話が国内でつくられて云々とあるように、もしかすると地鶏というのが自由につけられる名称だとしたときに、海外産で広々として、まさにこの規格に合ったようなものというのはまだ出回っていないのかという2点を、簡単ですけれども教えてください。
○阿久澤会長 ご意見とご質問とあったと思いますが、質問のほう、2点ございます。よろしくお願いいたします。
○高崎上席表示・規格専門官 まず、阿波尾鶏以外でJASの格付をなぜ取らないかという理由でございます。地鶏肉のJAS規格自体、任意の制度ということでございまして、地鶏肉の規格と合致した生産方法で生産している地鶏、この鶏肉につきましては、認定を受けなくても地鶏肉という表記ができるということでございまして、JASの認定のコスト、費用対効果の面から、それぞれの生産者の方の戦略で認定をとらない、あるいはJASの格付をしないといった選択を選ばれているのがあるのかなというところでございます。これはちょっと残念なところでございますけれども。
それから、海外産の地鶏の関係ということで、当方でこういったものがあるというのは特段情報としてはキャッチしていないというところでございます。
○阿久澤会長 この点について、室長のほうからお願いします。
○島崎食品表示・規格調整担当室長 規格全般を担当させていただいております島崎と申します。
ハンバーガーパティのときにもありましたし、今の地鶏肉にもありました、JASがまだまだ普及していないところはどういうことかというご発言が相次いでおります。JASというのは、格付率の非常に高いものから残念ながら低いものまで、結構幅広くございます。高いものは90%を超えているという状態であります。
JASを取る業界さんの考え方なんですけれども、おおむね3つあるんではないかと思っておりまして、1つは、皆さんがお考えのように消費者へのアピール、2つ目は、取引として取引先にJASを取っていますよというアピールができるというのと、3つ目は、JASは取らなくても、その中身を、基準を社内基準として用いたいというのがあります。ですから、例えば認定を取っても、中にはJASマークをつけないで、ただ工場として第三者監査が入るということを一つのメリットとして考えていらっしゃるところもあるという状況で、さまざまな取り組みがあるんだというふうに理解をしております。
今回のハンバーガーパティだとか地鶏肉は、特に消費者の目になかなか触れない状態で、どちらかというと取引規格のような形で運営されているものだというふうに考えています。ただ、皆さんから相次いでいますように、もう少しJASを取ってもらうようにというお言葉は非常によくわかっておりまして、ある意味、事業者の方がやっぱり取りたい、あるいはつけたいという魅力ある規格にどうしていったらいいのかというのが、まず第一に我々の仕事だというふうに思っています。そのことからも5年ごとにこうやって皆さんに審議をしていただく。あるいは社会情勢も変わってくるので審議をしてもらうということが一つだと思っています。
そのほかに、やっぱりPRももう少ししないといけないということは、実をいうと工場さんからもよく言われることなんですけれども、私達として、全然手をこまねいて何もしていないというわけではありません。ホームページ、あるいはJAS協会さんというのがあって、JAS協会さんにも関係者に集まっていただいて、どうやって普及していけばいいのかという議論も、実をいうと、この間させていただいております。特に任意の規格ですので、国が全面的に何か予算をつぎ込んでPRというのは、ちょっと今の時代はなかなかできない状況になっておりまして、JASを取っていただいている方、JASに魅力を感じていただいている方は、それぞれがどうやったら普及できるかというのを今検討しているという状況でございます。私達も、ホームページや、ちょっとしたパンフレットをつくったりしていますけれども、なかなか素人がつくるもので余りいいものができないんですが、そういう努力は今後とも続けていきたいというふうに考えております。
すみません。ちょっと普及について一言だけ。
○阿久澤会長 どうもありがとうございました。よろしいですか。
どうぞ、宮地委員。
○宮地委員 机上配付資料の3-10にあるんですが、(2)に一般生産者という話の中で在来種の血統について書れている資料が出てきています。これ、ほぼ回答数32のうちの10が血統率が50%、それから14が100%ということで、生産者も二極化しているんだろうなというふうに思います。二極化しているのに、地鶏という話をしたときに1つだけの基準で話をしているので、受け取り方がそれぞれ違っている。じゃ、この50%の肉を今回、その50%の方たちの意見を聞いて飼育日数を短くしましたよ、さらに今後、育種ですからどんどんかけ合わせるところの鶏が飼育日数が短くなってくる。じゃ、その都度もう一度変えるんですかという話をしたときに、この100%の在来種を使われている、地鶏で生産されている方にとっては、やっぱりこれはJASでは売れないよなという、そういうふうな思いをされるんじゃないかなという、そういう気がします。
○阿久澤会長 ありがとうございました。ご意見として、森光委員のご発言と同様、今後課題としていく内容かなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
○夏目委員 今の件に関していいですか。宮地委員のご意見もごもっともだと思いまして、検討会の中でも、今後の課題として1つの基準でいいのかどうかというのはご議論されていて、それは机上配付の3-28にも書かれているとおり、例えばフランスでは区分ごとに決めているというようなこともあって、日本もこういうことを今後検討しましょうねというふうに課題に挙げられていますので、今回は上がってきませんでしたけれども、そういう時期に来ているのかなと、私はこの検討会の議事録を読ませていただきましたので、参考までにという発言です。
○阿久澤会長 ありがとうございました。
そのほか、ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、ご意見も出尽くしたようですので、地鶏肉の日本農林規格について、原案どおり改正するということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○阿久澤会長 異議がないようですので、その旨報告させていただきます。 

 

* 農林物資規格調査会 日時:平成27年6月9日(火) 会場:農林水産省第2特別会議室
http://www.maff.go.jp/j/jas/H27_01/pdf/h270609_jas_tyosakai_giziroku.pdf

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