2018年11月21日、衆議院農林水産委員会で堀越啓仁議員がアニマルウェルフェアの推進の必要性、具体的な課題について質問を行った。
(※以下、答弁の内容は仮での文字起こしであり正式なものが発表され次第差し替えます)
2016年にOIE:国際獣疫事務局(世界動物保健機関)が日本のPVS評価が行われたが、その中のアニマルウェルフェアの評価が3と低いものであり、具体的な勧告(Recommendation)は非常に的をえたものであった。この勧告の内容について、どのように受け止めているのかと、どのように国内で取り組み、実効性を上げていくのか質問がなされた。
吉川貴盛農林水産大臣
アニマルウェルフェアにつきましては、家畜を快適な環境下で飼育することにより、家畜のストレスや疾病を減らしまして、結果として生産性の向上や安全な畜産物の生産につながることから、我が国の畜産において重要な課題であると考えているところでございます。
我が国に対する国際獣疫事務局による獣医能力組織評価、今委員から様々な形でご指摘をいただきました。本年7月にその結果が公表されたところでもございます。
その中でアニマルウェルフェアにつきましても、評価助言を頂いたところでもございまして、今後共ですね、頂いたこの助言も参考にしながら、生産者の理解を得ながら、アニマルウェルフェアを推進してまいりたいと思います。
濱村進農林水産大臣政務官
取り組みにつきましても質問いただきましたのでご答弁させていただきます。先程委員ご指摘の通りOIEからの助言は4点に渡ってされているわけでございますけども、農水省といたしましてはこの助言をうけまして、家畜輸送等につきましては現在畜産技術協会において指針の検討が行われているところでございまして、指針が策定されればその普及に取り組んでまいりたいと思っているところでございます。
また、関係省庁の協力等につきましては、まず引き続き3省での定期的な打ち合わせを実施するとともに、虐待等動物愛護法の違反事例がございますれば、地方組織も含め、情報を共有し連携して対応していくこととしております。今後こうした助言も参考にしつつ、生産者の理解もえながら、アニマルウェルフェアの推進をしてまいりたいと思っているところでございます。
また、堀越議員はアニマルウェルフェアの必要性について、東京オリンピック・パラリンピックの食材調達を絡め、強く求めた。
このアニマルウェルフェア、非常にこれからの日本で大きな問題となってくるのは、東京オリンピックにむけて、世界の目もかなり厳しくなってきているところでありまして、じつはこの東京オリパラ選手村で扱う食材について、オリンピック選手、アスリートの側からぜひこの食べるものを調達するときに、飼育環境を重視するアニマルウェルフェアに準じた食材に徹底してくださいという申し入れが都知事の方に入っております。主にこのメダリストの皆さんで9人から構成されている要望書というものが提出されましたが、選手の食べるものが、協議の結果に直結する、ストレスを与える方法で飼育されたグレードの低い栄養のものでは、それなりの結果しか出ないと強調されており、そしてその上で、ケージフリー、例えば平飼いであるとか放し飼いの鶏が生んだ卵や、妊娠中にストール、非常に狭い中で妊娠を強制されてそこで管理をされる、そういった豚肉などを使わないよう、訴えてるんですね。(中略)日本全体でこの農業畜産業をしっかり底上げしていくためには、このアニマルウェルフェア非常に重要な観点であるということをお伝えをさせていただきたいというふうに思います。
採卵鶏を屠畜する際、その前日に食鳥処理場に搬入して長時間ギュウギュウ詰めで水も飲めず不衛生な状態で放置する問題について、これまでも予算委員会分科会、厚生労働委員会、環境委員会等でたびたび改善が促されてきた。2018年3月には通知が農林水産省や厚生労働省が、環境省からも事務連絡から発出されたが改善が、アニマルライツセンターの調査によると改善は進んでいないように見える。この点について質問がなされた。
農水省 枝元生産局長
今ご指摘いただきましたとおり、食鳥処理場で夜間を中心に成鶏が長時間放置をされる、こういう状況を防止改善したいということで、農林水産省では平成30年3月に関係団体等に対しまして成鶏の計画的な出荷を促す通知を発出するとともに、食鳥処理場を所管しております厚生労働省に対しても周知を依頼しているところでございます。農林省の方では同通知の主旨を周知徹底するために、関係団体に対しまして広報誌により通知の内容を照会するよう働きかける、また生産者団体なり、成鶏処理事業者団体との間での意見交換を通じて計画的出荷の必要性についての認識を養成する、こういう取り組みを進めてきてございます。また食鳥処理場での実際の食鳥の保管状況について、厚生労働省が調査いたしました。この中で、通知をうけまして、養鶏業者との間で出荷計画を調整して改善した食鳥処理業者がある一方で、一部の食鳥処理業者においては養鶏業者との間で計画的出荷の調整が困難であるという状況もあるというふうに認識をしてございます。
現在このような調整が困難とおっしゃっている処理業者の状況の詳細について、厚生労働省の方で確認中でございます。その実態に応じまして、厚生労働省また関係団体とも連携をいたしまして、通知の主旨のさらなる徹底をはかっていきたいと考えております。
行政は改善に向けた取り組みを継続している様子であるが、実行が伴っていない状態と言える。
堀越議員の質問を引用しよう。(一部中略)
この畜産動物関係で言えば、優遇されている方かなと私は考えておりますが、牛に関してでございます。大切にされている方だと思いますが、しかしですね平成28年度農業災害補償制度家畜共済統計表によると、関節炎や股関節脱臼などの運動器病による乳牛の死廃事故は24.34%パーセント、21,866頭にも及んでいます。この数には胎児の事故は含んでいません。
これを改善するためには、繋ぎ飼いの廃止、そして搾乳牛であっても一定時間放牧させる必要があります。体重700キロにもなる牛を運動もさせずに本来の10倍ちかい牛乳を絞るのには無理があります。私は作業療法士という現場で12年間働いてきました、関節の構造を我々は非常に重視しているわけですが、その観点から皆さんに「運動してください」というんです。「歩くのが大事です」と言うんです。歩くことによって、血液が循環し、関節を栄養することができる。だからこそ、運動してくださいということを常に言うんですが、健康状態を保つために、より良い乳牛を育てるために、やはり運動というのは動物においても非常に重要であります。これがですね、やはり北海道なんかだとそういったところが少ないわけです、吉川大臣のご当地でありますけれども、そういったところは非常に少ないんですが、全体で見ますと繋ぎ飼いというものをしているあるいは、タイストールで飼育するという酪農場は畜産技術協会の調査によると73%にものぼります。鼻輪で繋がれ、その下にコンクリートが敷いてある、たとえゴムマットが敷いてあっても、コンクリートの上に長く居続ければ身体中、特に関節に褥瘡(じょくそう)ができます。関節炎はひどくなれば細胞が壊死してしまう。これに対し、根本的な治療はやはり大変忙しいですから殆ど行われていないというのが現状であります。カウコンフォートを充実させたとしても繋ぎ飼いではアニマルウェルフェアは担保されないということは、科学的にも明らかなことです。繋ぎ飼いが関節炎、股関節脱臼、乳房炎、細菌性感染症、難産の原因になるということが明らかになっているわけでございます。先程も大臣からご答弁いただいた、生産性に関わることであります。
そろそろですね、日本においてもやはり、科学的根拠に基づいた具体的なアニマルウェルフェアを推進する時期である。先ほどお話をさせていただきました2020年東京オリパラもございます。そういった時代に我々日本も入ってきているのだというふうに考えておりますので、ぜひこの点についてご答弁をいただければと思います。
現在、農林水産省が推進するアニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針には、「アニマルウェルフェアへの対応において、 最も重視されるべきは、施設の構造や設備の状況ではなく、日々の家畜の観察や記録、 家畜の丁寧な取扱い、良質な飼料や水の給与等の適正な飼養管理により、家畜が健康 であること」とありますが、繋ぎ飼いや、バタリーケージ、拘束飼育などの構造や設備を改善する方向性は、いまだにないのでしょうか。
また、繋ぎ飼いや、バタリーケージ、拘束飼育でも、アニマルウェルフェアが良い状態に保てると考えている場合には、その根拠をお示しいただければとお思います。
農林水産省 枝元生産局長
OIEの指針では施設につきまして、水はけがよく、快適な休息場所が必要であること、また牛体の損傷を予防するため、鋭利な角、突起がないことにすることが求められておりまして、若干先生と認識が違うかもしれませんけれども、繋ぎ飼いそのものがOIEで否定されているというようには理解してございません。OIEの考え方も踏まえまして、我が国の飼養管理指針に置きましては、繋ぎ飼いを行う場合には、牛が困難なく起立横臥身繕いができるように配慮し、正常な姿勢がとれ、頭が自由に動くことと等が必要であると、そういうふうに記載しているところでございます。
このようなOIEの指針、または飼養管理指針につきまして、今後とも生産者の理解を得ながら推進してまいりたいと思います。
また先生からご指摘ございました繋ぎ飼いに関する考え方でございますが、ご指摘いただきましたとおり、アニマルウェルフェアの観点から見ますと、行動が制約されますので、運動不足に起因する関節炎だとか睡眠不足というふうになりやすい面がございます。他方で、牛の能力とか状態に合わせた個体管理が行わいやすい、牛同士の闘争とか競合が少ない、そういう意味では放し飼い等にあるそういう問題は起こりにくいという観点もございます。そういう意味からしますと、様々な観点があるんだろうというふうに認識をしてございます。
なお、OIE動物福祉規約には以下のように書かれている。
また、コンクリートの上(薄いゴムマットが敷いてあっても)に繋がれた状態で糞尿をする場所に横臥しなくてはならないのは「快適な休息場所」にはなりえない。
繋ぎ飼いの状態で分娩させるのが「特別な配慮が、分娩に使用される区域の設備には払われるものとする」に適合するのか?するはずはない。
畜産技術協会が作成した飼養管理指針はあまりにゆるく捉えすぎている。直接的な言葉のみを捉え、都合よく解釈している。
日本が固執する拘束飼育の壁は今回の委員会答弁でも超えることはできなかったが、以前よりは間違いなくアニマルウェルフェアへの理解は進んでいるということは言える答弁であった。
○堀越委員 皆さん、おはようございます。立憲民主党・市民クラブの堀越啓仁でございます。
本日は、諸先輩方から多大なる御配慮をいただきまして、農林水産委員会で初めての質問をさせていただきたいと思いますので、改めてよろしくお願い申し上げます。
私は、昨年の初当選以来、常任委員会では環境委員会に所属をさせていただいておりました。また、今国会から、この農林水産委員会に配属をさせていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
これまで環境委員会では、環境省の自然系職員つまりレンジャーに倣って、自然系国会議員を目指しておりますということを述べさせていただいておりますけれども、自然環境と、そしてこの農林水産、農業と林業、水産業、切って切り離せない問題でありますので、一体となって取り組ませていただくことを本当にうれしく思っております。農水省所管のさまざまな問題に、そういった観点からも取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、早速質問の方に入らせていただきたいと思いますが、まず初めに、これまで環境省所管の動物愛護管理法の観点からたびたび質問をさせていただいておりました畜産動物に係るアニマルウエルフェアについて、同じ関係行政たる農林水産省の新たな吉川大臣に伺いたいと思います。
農林水産省における畜産動物に係るアニマルウエルフェアの必要性の認識は、以前、私、予算委員会の分科会にて、農林水産前大臣であります齋藤前大臣にお伺いをさせていただきました。そのとき、心強い御答弁をいただきました。この場で齋藤委員にお礼を言いたかったんですが、今おりませんので、また後でちょっとお礼を述べさせていただきたいと思いますが、本当に心強い答弁をいただいたわけでございます。
そのあたりの認識も含めて伺っていきたいと思いますが、二〇一六年の十月十一日から二十六日にかけて、OIEのPVS評価が実施されました。評価項目の中にはアニマルウエルフェアも入っておりまして、この結果がことしの七月二十七日にホームページ上で公表されたことを受けて、農林水産省のホームページでも公表されております。農林水産省のホームページでは、アニマルウエルフェアの評価そのものが三という数字であったということはわかりますが、それ以上のことが細かくはわかりません。
このアニマルウエルフェアについて三であった評価に対して、OIEは六点を勧告として出しており、そのうちの四点は、動物福祉、畜産動物に対するアニマルウエルフェアというものでありました。
少し長いんですけれども、割愛しながら読み上げたいと思います。
勧告の一、OIEの動物福祉コードの勧告を見直し、特にまだない畜産動物輸送及び屠畜について、適切に国の法律、基準又は政策文書に正式に取り込むこと。
勧告の二、動物福祉、特に畜産動物の福祉について、環境省、農水省、厚生労働省とのさらなる正式協力を発展させ、法律、政策及び履行に結びつけるための調整に着手すること。
勧告三、公的な報告や苦情が動物福祉事業の監視や調査により正式に利用されるためにはどのようにすればいいのかを検討し、コンパニオンアニマルと畜産動物の両方において、福祉法をコミュニティーが遵守できるようにすること。
勧告四、国の法律や基準に基づく畜産動物福祉の管理体制を構築すること、これは、農場における家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、畜産市場における獣医師の契約など、地方行政による実施を含むことというふうにあります。
これら四つの勧告に対して私の所感を述べますと、まず、この勧告一に関しましては、輸送ですね、アニマルウエルフェアの考え方に対応した飼養管理指針を農水省は調整中であるということでございますけれども、屠畜については抜け落ちている状況です。
さらに、勧告の二、まさにそのとおりであると思いますが、三省では今現在会議が行われているということは承知をさせていただいておりますけれども、この勧告は正式な形を望んでいる、さらに改善の実効性というものを求めているところであります。
さらに、勧告の三、福祉法、つまり、日本では動物愛護管理法を遵守できるような仕組みが必要であるということが求められております。
さらに、勧告四、これもまさにそのとおりだなというふうに思いますが、家畜保健衛生所や食肉検査衛生所、獣医師など、地方行政によるアニマルウエルフェアの管理体制及び法律の基準が求められております。
以上、これらの全てが非常に的を得た勧告であるというふうに私は思っておりますが、また、日本に課せられた重要な課題であるというふうにも思っております。畜産動物のアニマルウエルフェアに係る今回の勧告を、大臣、どのように受けとめられておりますでしょうか。アニマルウエルフェアへの御認識も含めて伺いたいと思います。
そしてさらに、今後、国内でどのように取り組んでいくのか、また、それらの実効性をどのように上げていくのか、農水省、政府参考人で結構でございます、見解を伺いたいと思います。
○吉川国務大臣 まず、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
アニマルウエルフェアにつきましては、家畜を快適な環境下で飼育することにより、家畜のストレスや疾病を減らしまして、結果として生産性の向上や安全な畜産物の生産につながることから、我が国の畜産において重要な課題であると考えているところでございます。
我が国に対する国際獣疫事務局による獣医組織能力評価、今委員からさまざまな形で御指摘をいただきました、本年七月にその結果が公表されたところでもございます。
その中で、アニマルウエルフェアにつきましても評価、助言をいただいたところでもございまして、今後とも、いただいた助言も参考にしながら、生産者の理解を得ながら、アニマルウエルフェアを推進してまいりたいと存じております。
○濱村大臣政務官 取組につきましても御質問いただきましたので、御答弁させていただきます。
先ほど委員御指摘のとおり、OIEからの助言は四点にわたってされているわけでございますけれども、農水省といたしましては、この助言を受けまして、家畜輸送等については、現在、畜産技術協会において指針の検討が行われているところでございまして、指針が策定されれば、その普及にしっかりと取り組んでまいりたいと思っているところでございます。
また、関係省庁の協力等につきましては、まず、引き続き、三省での定期的な打合せを実施するとともに、虐待等、動物愛護法の違反事例がございますれば、地方組織も含め、情報を共有し、連携して対応をしていくこととしております。
今後、こうした助言も参考にしつつ、生産者の理解を得ながら、アニマルウエルフェアの推進をしてまいりたいと思っているところでございます。
以上です。
○堀越委員 ありがとうございます。大臣の方から、本当に答えていただきたい点についてお話をいただきました。
アニマルウエルフェアというのは、いわゆる動物を大事にしようという理念的なところと捉えがちなんですが、実はそうではなくて、科学的根拠に基づいた、生産性を向上する、そういったところに大きく影響してくるものでありまして、これはもう世界での基準になってきている。そこに関して言えば、日本は非常におくれをとっているところがありますので、ぜひ、大臣、心強い御答弁をいただきましたので、前進できるように進めていただければというふうに思っております。
このアニマルウエルフェア、これからの日本に非常に大きな問題となってくるのが、東京オリンピックに向けて、世界の目もかなり厳しくなってきているところでありまして、実は、東京オリパラ選手村で扱う食材について、オリンピック選手、アスリートの側から、ぜひ、食べるものを調達するときに飼育環境を重視するアニマルウエルフェアに準じた食材に徹底してくださいという申入れが都知事の方に入っております。
主にメダリストの皆さんで、九人から構成される要望書というものが提出されましたが、選手の食べるものが競技の結果に直結する、ストレスを与える方法で飼育されたグレードの低い栄養のものではそれなりの結果しか出ないと強調されており、そして、その上で、ケージフリー、例えば平飼いであるとか放し飼いの鶏が生んだ卵や、妊娠中にストール、非常に狭い中で妊娠を強制されてそこで管理をされる、そういった豚肉などを使わないよう訴えているんですね。
日本のこれからの農業、水産業の戦略でもある例えば輸出を考えていくということについても、アニマルウエルフェアというものの飼育基準というのが世界ではワールドスタンダードになっておりますから、日本もそれに引き上げていかないと、輸出すらできなくなってしまうということになりかねませんので、現状でいえば、扱える食材というのはほぼ北海道の広い大地で育てられた食材になってしまうという現状もあります。
日本全体で農業、畜産業をしっかり底上げしていくためには、アニマルウエルフェア、非常に重要な観点であるということをお伝えさせていただきたいというふうに思います。
また、さらに、勧告の三にあるコンパニオンアニマルという言葉、これはなかなか耳なれない言葉じゃないかなと思いますが、これは従来のペットという言葉と同じ意味です。でも、これをやはり海外ではもう既にペットとは呼ばなくなってきている。つまりは、人と長い歴史をともに暮らしてきた身近な動物、家族、伴侶、友達と同様に動物というものを位置づけている、それがこのコンパニオンアニマルという言葉に裏づけられているのだというふうに私は思っておりますので、日本に対しても、アニマルウエルフェア、動物福祉というものをしっかりとフォローさせていく、これが非常に重要だというふうに思っております。
そして、それにかかわる、次に鶏ちゃんのことについて質問をさせていただきたいと思います。
齋藤前大臣が戻られましたが、これも以前、農林水産分科会で本当に心強い答弁をいただきまして、前進をさせていっていただいたところもあります。採卵鶏の廃鶏を、食鳥処理場で、待っている間長時間放置されている問題について質問をさせていただきます。
ことしの三月二十六日、食鳥処理場への鶏の計画的な出荷についてとして農水省が通知を出され、改善に向けて、厚労、環境など関係省庁が連携し動き始めたことは、以前も環境委員会で申し上げましたが、大変歓迎していることは変わりございませんし、重ねて、時の大臣であります齋藤前大臣には改めて感謝を申し上げたいと思います。
しかし、ことしの二十一日に、私自身の目でちょっと確認させていただきたいということで、関東の食鳥処理場、とあるところを実際に見てまいりました。昼間の午後二時であったにもかかわらず、既に鶏が運び込まれておりまして、身動きが全くできない狭いケージの中で、水も与えられないまま屠畜されるのを待っている。そして、夏場には、そういう状況が続くと、卵が上から降ってきて卵まみれになって、下には卵があふれて、そしてウジが湧く、衛生上も非常によろしくない、そういう状況にもなってしまいます。
今回、私が見せていただいたところでもやはり午後二時で既に運び込まれている。恐らく翌の八時から九時ぐらいまではその状況で放置をされる。時間でいうと大体十八時間ぐらいはそういった形で放置をされる、そういう現場がまだまだ当然あります。
動物保護団体の調査によりますと、七月十九日から九州の食鳥処理場では二件、八月二十八日からまた二件、十月十八日から十九日にかけて関西の食鳥処理場で二件、午後過ぎには翌日に屠畜される鶏が運び込まれて長時間放置をされているという状況は相変わらずやはり現存しております。この四回の調査で四回とも前日から放置をされているということが確認されておりまして、やはり改善は現在の状況でも進んでいないと言わざるを得ない状況であると思います。
せっかく今までになかった通知を出されたということでございますので、半年たちました、この現場にその声は届いていないのが現状でございます。
そこで、農水省に伺いたいんですが、まず、私が指摘した現場の実態を把握、認識されているかどうか、そしてまた、そのことを踏まえて今後改善に向けてどのような取組をされていくのか、また、いつまでに解決するなど、具体的なお答えがあればぜひ答弁をお願いいたします。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘いただきましたとおり、食鳥処理場で夜間を中心に成鶏が長時間放置される、こういう状況を防止、改善したいということで、農林水産省では、平成三十年の三月に、関係団体等に対しまして成鶏の計画的な出荷を促す旨の通知を発出するとともに、食鳥処理場を所管しております厚生労働省に対しても周知を依頼しているところでございます。
農林省の方では、同通知の趣旨を周知徹底するために、関係団体に対しまして広報誌により通知の内容を紹介するよう働きかける、また、生産者団体なり成鶏処理事業者団体との間での意見交換を通じて、計画的な出荷の必要性についての共通認識を醸成する、こういう取組を進めてきてございます。
また、食鳥処理場での実際の食鳥の保管状況について、厚生労働省が調査いたしました。この中で、通知を受けまして、養鶏業者との間で出荷計画を調整して改善した食鳥処理業者がある一方で、一部の食鳥処理業者においては、養鶏業者との間で計画的な出荷の調整が困難であるというふうな状況もあるというふうに認識をしてございます。
現在、このような調整が困難とおっしゃっている処理業者の状況の詳細について、厚生労働省の方で確認中でございます。その実態に応じまして、厚生労働省また関係団体とも連携いたしまして通知の趣旨のさらなる徹底を図っていきたい、そういうふうに考えてございます。
○堀越委員 ありがとうございます。
この通達が出されたことについて、私ももちろんそうですが、動物福祉を広めたいと頑張っておられる団体の皆さんは本当に喜んでいたんです、今までそんなことはなかったと。ですので、これが徹底されることを我々も非常に願っておりますし、また、屠畜作業をされておられる方々の労務の負担軽減にもつながることだと思いますので、ぜひまた、情報の徹底、そして現状出されている通知の徹底の方をまたよろしくお願い申し上げます。
そして、次に、畜産動物関係でいえば優遇されている方かなというふうに私は考えておりますが、牛に関してでございます。
大切にされている方だと思いますが、しかし、平成二十八年度の農業災害補償制度家畜共済統計表によると、牛の関節炎や股関節脱臼などの運動器病による乳牛の死廃事故は二四・三四%、頭数に直すと二万一千八百六十六頭にも及んでいます。この数字には胎児というものは含んでおりません。恐らく、胎児を含めますともっと大きい数字になるのではないかなというふうに思っております。
これを改善するためには、やはり、つなぎ飼いの廃止、そして、搾乳牛にあっても一定時間放牧させる必要というのがアニマルウエルフェアで科学的に示されているところであります。牛というのは体重が七百キロありますので、その牛を運動もさせずに本来の十倍近い牛乳を搾るというのは非常に無理があります。
私は、作業療法士というリハビリテーションの現場で十二年間働いてきました。関節の構造をやはり私たちは非常に重視しているわけですが、その観点から、皆さんに運動してくださいというふうに言うんです。歩くのが大事ですと言うんです。歩くことによって血液が循環し、関節を栄養することができる。だからこそ、運動してくださいということを我々は常に言うんですが、健康状態を保つために、よりよい乳牛を育てるために、やはり、運動というのは動物においても非常に重要であります。これが、北海道なんかはやはりそういったところが少ないわけです。吉川大臣の御当地でありますけれども、そういったところは非常に少ないんですが。
ただ、そうは言っても、やはり全体で見ますと、つなぎ飼いというものをやっている、あるいはタイストールで飼育するという酪農場は、畜産技術協会の調査によりますと七三%に上ります。
これはどういった形で飼育されているかといいますと、鼻輪でつながれて、そして、その下にコンクリートが敷いてある、あるいはタイストールというものが敷いてある。コンクリートの場合にはゴムマットが敷いてあるんですけれども、これは関節に影響するからということでゴムマットを敷いてあります。だけれども、この上に長く居座れば、体じゅうやはり褥瘡ができてしまうという状況があります。当然、関節炎はひどくなり、細胞が壊死してしまう。
これに対して根本的な治療というのは、やはり、酪農家の皆さん大変お忙しいですから、ほとんどなされていないというのが現状でありますし、カウコンフォートを充実されたとしても、つなぎ飼いではアニマルウエルフェアは担保されないというのは科学的にも明らかになっております。
つなぎ飼いというものが、関節炎や股関節脱臼、あるいは乳房炎や胎盤の停滞、あるいは細菌性の感染症や難産の原因になるということが明らかになっているわけでございます。これは、先ほど大臣の方から御答弁いただいた生産性にかかわることであります。
そろそろこの日本においても、やはり科学的根拠に基づいた具体的なアニマルウエルフェアを推進する時期である。先ほどお話をさせていただきました二〇二〇年東京オリパラ、オリンピックもございます。そういった時代に我々日本も入ってきているのだよというふうに考えておりますので、ぜひこの点について御答弁をいただければと思いますが。
現在、農林水産省が推進するアニマルウエルフェアの考え方に対応した畜種毎の飼養管理指針では、アニマルウエルフェアへの対応において最も重視されるべきは、施設の構造や設備の状況ではなく、日々の家畜の観察や記録、家畜の丁寧な取扱い、良質な飼料や水の供給等の適切な飼養管理により家畜が健康であることとありますが、つなぎ飼いあるいはバタリーケージ、拘束飼育などの構造や設備を改善する方向性はいまだにないのでしょうか。
また、つなぎ飼いやバタリーケージ、拘束飼育でも、アニマルウエルフェアがいい状態に保てると考えている場合には、その根拠もお示しいただければと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
OIEの指針では、施設につきまして、水はけがよく快適な休息場所が必要であること、また、牛体の損傷を予防するため鋭利な角及び突起がないことにすること等が求められておりまして、若干先生と認識が違うかもしれませんが、つなぎ飼いそのものがOIEで否定されているというふうには理解してございません。
そういうOIEの考え方も踏まえまして、我が国の飼養管理指針におきましては、つなぎ飼いを行う場合には、「牛が困難なく起立・横臥・身繕いができるように配慮し、正常な姿勢がとれ、頭が自由に動くこと等が必要である。」そういうふうに記載しているところでございます。
このようなOIEの指針また飼養管理指針につきまして、今後とも生産者の理解を得ながら推進してまいりたいというふうに思います。
また、先生から御指摘ございましたつなぎ飼いに対する考え方でございますが、御指摘いただきましたとおり、アニマルウエルフェアの観点から見ますと、行動が制約されますので、運動不足に起因する関節炎だとか睡眠不足、そういうふうになりやすいという面がございます。
他方で、牛の能力とか状態に合わせた個体管理が行いやすい、牛同士の闘争とか競合が少ない、そういう意味では、放し飼い等にあるそういう問題は起こりにくいという観点もございます。
そういう意味からしますと、さまざまな観点があるんだろうというふうに認識をしてございます。
○堀越委員 ありがとうございます。
酪農家の皆さん、今現状、ただでさえ本当に大変な業務をされておりますので、非常にそういったところのバランスをとっていかなければいけない大事な問題ではあると思いますが、OIEからの指摘もありますとおり、アニマルウエルフェアという観点からすると、やはり生産性の面からいっても、コストが大きくなってしまうということに中長期的には直結してしまうという問題でありますので、ぜひ改善の方向で、放し飼いとは言いません、せめてつなぎ飼いに対する是正はお願いしたいところでありますので、よろしくお願い申し上げます。