9月27日、米国カリフォルニア州はタコ養殖を禁止する法律(Assembly Bill No. 3162)を成立させた。ワシントン州 (H.B. 1153)についで2州目の禁止となり、さらにハワイ州でも同様の法案が審議中だ。ワシントン州でははやくも2024年6月6日から施行されている。
カルフォルニア州の条例はより厳しいものだ。養殖を禁止するだけでなく「養殖によって得られたタコのあらゆる種を、事業主や経営者が販売、所有、輸送することを禁止」したのだ。これはケージ飼育された鶏が生んだ卵を流通禁止にするなど前例が多数あり、米国でごく一般的な条例の形だ。
流通の禁止は動物にとってとても重要だ。とくにカリフォルニアのような一大消費地において流通を禁止することは、他の州や他国の動物にも多大な影響を及ぼし、タコ養殖をしても売れないという状況を作り出すことができる。需要がなければ生産者は作らない。
タコ養殖はまさに今各地で議論を巻き起こしている。その理由はなにか、見てみよう。
タコは複雑な認知能力、運動能力、知能を持った動物だ。学習能力に長けていて新しい能力を習得するだけでなく能力を高めることもできるし、複雑な迷路を通り抜け脱出することが得意であり、彼らは道具を使うことさえできる。水槽に入れていれば蓋を自分で開けて出ていったり、骨がない分とにかく柔軟で隙間をすり抜けることができ、多数ある足で同時に様々なタスクをこなしたりもする。
このような動物を不自然な養殖の囲いの中に閉じ込めることは非人道的であり、そのニーズを満たすことは不可能だ。
基本的にタコは単独で行動する。もちろん繁殖時や一部の例外はあれど、単独で生活している。餌や巣穴を巡って、他のタコを襲ったり争うこともある。
そのような動物を集約的で多数の同種が詰め込まれた場所で飼育することは非人道的だ。
タコは肉食だ。そのため、他の養殖動物より多くの餌資源を必要とする。大量の野生魚を餌として必要とするため、餌の供給自体が持続不可能だ。海洋資源の枯渇が問題視され乱獲はだめだとされる中で、タコ養殖に挑むこと自体、サステナビリティやらSDGSやらと真逆の行動を取っていると言える。
これらの他に、もちろん他の養殖が抱える、海洋汚染、薬剤耐性菌、遺伝的多様性の喪失などの問題も同じくある。世界は今後より受け入れなくなっていくだろう。日本はタコ養殖にトライする企業があるが、アニマルウェルフェアの観点からも、環境保護や海洋資源の保護、社会の持続可能性の観点からも、タコ養殖にこれ以上の時間や研究、資金をかけるべきではない。