アニマルライツセンターは2016年から毎年一回、畜産動物の飼育実態がどれほど認知されているのか、民間会社を利用して調査を行っています。
2023年度も3月15日に実施、今回の調査結果ではアニマルウェルフェアの認知度の向上が明確に見られました。
質問項目は次の10項目です。
【調査名】畜産動物(肉・卵・乳)に関するアンケート
【調査主体】NPO法人アニマルライツセンター
【調査期間】2023/3/15
【有効回答数】2,889
【調査設計】 手法:インターネット調査(ネットモニター)
【調査地域】全国
(数値は%)
豚の飼育状況については、認知度は上昇はしているものの、依然として認知度が低い結果になっています。しかし、実情としては豚のアニマルウェルフェアは他の動物のアニマルウェルフェアよりは進捗が見られる状況です。多少の認知度上昇でも誠実に対応しようとしている生産者、食品企業があるということは、より認知度を高めることでより高い効果が見られる可能性があるとも言えます。
調査開始当初から他の課題よりも認知度が高かった採卵鶏のバタリーケージでの飼育状況ですが、今年は「知っている」と答えた人が17.8%、「聞いたことがある」と答えた人が16.5%であり、合わせて34.3%の認知度になりました。採卵鶏のケージ飼育の問題は、アニマルウェルフェアの課題の中で最も重視されているものであり、メディアでの報道も最も多くされています。これらの結果として認知度の向上が見られたものと思われます。
初回調査(2017年度)と比較して「知っている」と回答した人が4.3%上昇したのが、肉用鶏(ブロイラー)の品種改良による弊害についての設問でした。国内でのブロイラー飼育のアニマルウェルフェアが改善しない中ではありますが、市民の意識の向上が見られていることには今後の変化への期待が持てます。
2022年度は調査全体を通して明確に認知度の向上が見られました。SNS、WEBメディアに加え、マスメディアでも比較的多く取り上げられるようになっていることが影響しているものと思われます。中でも、「アニマルウェルフェア」、あるいは「動物福祉」という言葉の認知度は「知っている」が9.2%と前年から2.9%上昇しています。「聞いたことがあると答える人」も0.7%上昇し13%となりました。
平飼い卵が売られていることを「知っている」人は16.6%と前年比3.4%上昇していますが、実際の購買行動の上昇ともリンクしているようです。
下記グラフは「アニマルウェルフェア」、あるいは「動物福祉」という言葉を知っていますか?についての年代ごとの集計です。
15歳未満を今回データ収集していますが、サンプル数が極端に少ないため参考程度に見るようにしてください。15歳未満をサンプル数が少ないと知った上で集計に加えたのは教育での浸透を見たかったためですが、少ないながらに出た数値から分析すれば、教育の中でアニマルウェルフェアは含まれていないという現状が伺えます。とは言え、来たことがある人数はどの年代より多く、耳にするようにはなっているようです。
15~19歳での認知率が最も高いのは、教育の中に含まれていないとすれば、SNSやYoutubeでの情報に触れていることが要因として上げられます。
40代より上の年代では認知率が下がる傾向にあることもわかります。この年代の特徴は情報の収集がマスメディアが中心でことであるため、マスメディアでのアニマルウェルフェアの情報がいまだ少ないことを指していると思われます。
一方で逆の傾向を示している設問が2つありました。それが採卵鶏と平飼いについての設問でした。すでに購買行動にアニマルウェルフェアが関与し始めているのが採卵鶏の課題です。そして年代が上の方のほうが認知率が高いとは言え、15~19歳での認知率も高く、今後の購買行動も変化していくものと予測できます。
下記は採卵鶏がバタリーケージで飼育されていることを知っているか聞いた設問です。特に50代以降で認知度が高いことがわかります。
下記は平飼い卵がスーパーマーケット等に売っていることを知っているかを聞いた設問です。この結果は実際の買い物をする年代での傾向を表していると思われます。