BBFAW(ビジネス ベンチマーク オン ファーム アニマルウェルフェア)は、畜産動物の福祉を向上させることを目的としたベンチマークだ。
BBFAWの「動物福祉に関する国際投資宣言」には、2022年4月の時点で、410兆円を運用する機関投資家35社が署名している*。宣言文書には、次のようなことが記載されている。
BBFAWはまた、毎年食品企業のアニマルウェルフェアを評価し、公表している。
評価項目は多岐にわたるが、一部をあげると、次のようなものがある。(詳細はBBFAWのレポートを参照いただきたい)
2017年からは日本企業も評価対象に入って来たので、どのように評価されたのか見ていきたい。
評価が始まって10年目を迎えたという2021年、この10年での変化は大きかった。134社(89%)が畜産動物福祉を経営課題として認識し(2012年は68社、71%)、122社(81%)が畜産動物福祉の正式なポリシーを持ち(2012年は46%)、119社(79%)が畜産動物福祉に関する正式な目的・目標を発表(2012年は26%)している。
日本企業を見てみると昨年5のランクに上がっていた明治ホールディングスは再び6に転落、イオンホールディングス、セブン&アイホールディングス、日本ハム、マルハニチロがすべて「動物福祉をビジネス上の問題として認識しているという証拠は限られる」とされた。いずれにせよ5,6の評価はあまり実際の動物への影響が出ていないレベルだとされており、5,6にとどまり続けることは畜産動物福祉を日本企業が下げることに貢献してしまっているということだ。ただし、昨年11月に日本ハムはアニマルウェルフェアの具体的な目標をたてたため、来年発表される評価に期待したいところだ。
とはいえ、懸念は多い。というのも、例えば4にランクされている企業を見ると、第三者認証も入りすべての畜種、地域、製品についての網羅した方針を持っている。日本企業5社の中でそのレベルに到達できている企業はない。また81%の企業がもつ拘束飼育(ケージ飼育、ストール飼育、つなぎ飼育など)についての方針が日本企業ではかけていることがほとんどであり、厳しい状況と言える。
2019年同様、世界の150の大手食品企業が評価された。評価された日本企業も2019年と同じ、イオンホールディングス、セブン&アイホールディングス、日本ハム、マルハニチロ、明治ホールディングスの5社だ。
結果は次の通り。
https://www.bbfaw.com/benchmark/
1 | 動物福祉についてリーダーシップをとっている | |
2 | 動物福祉を事業戦略の不可欠な部分としている | |
3 | 動物福祉への確立された取り組みがあるが、それが効果的に実施されるための多くの課題がある | |
4 | 動物福祉の方針と取り組みの実施を進めている | |
5 | 動物福祉をビジネス上の問題として認識しているが、この問題を効果的に管理している証拠は限られる | 明治ホールディングス |
6 | 動物福祉をビジネス上の問題として認識しているという証拠は限られる | イオンホールディングス、 セブン&アイホールディングス、 日本ハム、マルハニチロ |
上に行くほど評価が高くなる。
今年初めて明治ホールディングスが1段階レベルアップした。ただしレベルアップしたとはいえ、5は「動物福祉をビジネス上の問題として認識しているが、この問題を効果的に管理している証拠は限られる」という非常に低く、実効性があるのかも不明なレベルである。実際同社のサイトを見ても、これでアニマルウェルフェアが保証されるようには見えない。
同社は、2019年10月に発表した生乳調達ガイドラインの中で、次のような一文を掲載した。
私たちは、アニマルウェルフェアの指針である「5 つの自由」に配慮した飼養管理は、倫理面はもとより、酪農乳業産業の発展に資する手法であると考え、関係者との協力のもと業界一体となった取り組みを行います。すなわち、飼養環境への配慮、健康な乳牛の育成、衛生的な作業および作業空間作りなどに努めます。
これだけだ。
具体的に何をするのかは不明だし、さらに言えばこのガイドラインは「乳」のみに限定されている。(明治では牛乳ほど多くはないが、卵・肉も扱っている)
とはいえ、万年最下位だった5社のうち、1社だけでもアニマルウェルフェアをビジネスの課題の一つとして認識したことを明確したことは一歩前進である。他の4社も最下位を早く脱出してほしい。
2018年同様、世界の150の大手食品企業が評価された。評価された日本企業も2018年と同じ、イオンホールディングス、セブン&アイホールディングス、日本ハム、マルハニチロ、明治ホールディングスの5社だ。
https://www.bbfaw.com/benchmark/
残念ながら、昨年に続き5社ともに6段階(6tier)評価で一番下の6という結果だった。
鶏のバタリーケージ、豚の妊娠ストール、牛の繋ぎ飼い、ブロイラーの過密飼育、過酷な品種改良、産まれてすぐのオス殺処分、屠殺場で動物が飲水できない、気絶処理無しで鶏を屠殺、生きたまま茹でるなど日本の畜産は山積みで、諸外国で禁止になっている飼育方法がいまだ主流だ。さらにそれを改善していこうというような具体的な国策がない状態であることを考えれば、当然の結果と言えるかもしれない。
だが企業の取り組みは少しずつ進みつつある。
ケージフリーの卵を販売するスーパーは2015年の22%から2019年には51%に増加した。
2020年にイオンはプライベートブランドのケージフリー卵の販売を開始し、2022年までに全国に展開していくことを約束した。同年にホライズンファームズは日本で初めて、母豚をストールに閉じ込めないと決定した。
日本の企業のこれからに期待したい。
2018年は150の食品会社が評価され、日本企業はうち5社。昨年の2社(イオンホールディングス、セブン&アイホールディングス)に、日本ハム、マルハニチロ、明治ホールディングスが加わった。
https://www.bbfaw.com/benchmark/
残念ながら、昨年に続きイオングループもセブン&アイグループも6段階評価で一番下の6にランクイン。あらたに追加された日本ハム、マルハニチロ、明治ホールディングスも6という結果だった。
評価対象となった企業は110。これまでBBFAWの評価に日本企業は含まれてこなかったが、2017年の評価で初めてイオングループ、セブン&アイホールディングスが含まれた。
残念ながら両社とも、一番下の6にランクインした。
これは仕方がないことではある。両社ともアニマルウェルフェアについてのポリシーはない状態だし、アニマルウェルフェア製品の取扱いもほとんどない。そして具体的な取り組みも特には見られないからだ。
https://www.bbfaw.com/benchmark/
小売店は、消費者に対する訴求力もあれば、生産者に対する影響力も大きい。日本はまだアニマルウェルフェアが絶対的に割合が少なく、量が足りていないことは明らかだ。しかし、その状況に甘え、供給が確保できない可能性があるからとアニマルウェルフェアへの取り組みを先延ばしにし、リーダーシップを全く発揮できない日本企業は、はたして世界で通用するのだろうか。
日本のスーパーマーケット上位2社であるイオングループと、セブン&アイグループが、これからアニマルウェルフェアをどのように取り組んでいくのか、注目したい。