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4227兆円分の投資機関ネットワークFAIRR 日本の畜産企業を「高リスク」と評価

FAIRR(FARM ANIMAL INVESTMENT RISK & RETURN)は、畜産の抱えるリスクを啓発し、投資意志決定のプロセスに畜産のリスクを組み込むよう、投資家に促すグローバルネットワークだ。このネットワークに参加する投資家の運用資産残高総額の増加幅が半端ではない。

2018年1月に425兆円(3.8兆ドル)、2019年1月に1271兆円(約11.6兆ドル)、2019年12月には2197兆円(20.1兆ドル)、2021年6月時点で4227兆円(38兆ドル)とすごい勢いでネットワークが拡がり、この時点で250を超える投資機関*にサポートされている。(日本からは、野村アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、りそなアセットマネジメントが参加)

*JOB Climate Economist

FAIRRが発信する畜産のリスクに関する情報は、次のようなものだ。

  • 鳥インフルエンザなどのバイオセキュリティーリスク
  • 畜産業に起因する森林破壊などの環境汚染やGHGなどの気候変動リスク
  • 抗生物質の薬剤耐性菌のリスク
  • アニマルウェルフェア
  • 畜産業の多くが補助金に頼った経営をしていることによる驚異
  • 植物性タンパク質への投資の重要性

FAIRRは、畜産のネガティブな側面の認知を促進するだけではない。ターゲット企業を名指しして「抗生物質の薬剤耐性菌」「ブラジルのセラード地域の森林破壊」「持続可能なタンパク質への切り替え」など特定の課題に対する声明を出すなど、積極的な働きかけをおこなっている。

ちなみに、FAIRR創設者でありCEOのジェレミー・コラーは自身を動物の権利活動家と呼び*、動物の権利や、工場畜産の恐怖について、長年問題提起してきた。彼が賢いのは、それらの解決方法として「動物がかわいそう」というメッセージではなく、人々に工場畜産を「人間の世界的な持続可能性の問題」として提起したことにあるだろう**。

* How ESG is Stirring up the Food Sectorblank ByJeremy Coller, FAIRR5 mins read9th April 2021
** How to nail tax cheats and fund the UN sustainability goals

畜産企業のリスク分析

FAIRRはさらに世界の畜産企業のリスク分析も行っている。そしてその結果を投資家たちに公開し、投資リスクのある企業かどうかの情報も提供する。FAIRRはリスク分析をするにあたり、ESGとSDGsを組み合わせて9つの独自の評価指標を策定している。

  1. 地球温暖化ガス
  2. 森林破壊と生物多様性喪失
  3. 水不足と水資源利用
  4. 廃棄物と水質汚染
  5. 抗生物質
  6. 労働状況
  7. アニマルウェルフェア
  8. 食品安全
  9. 持続可能なタンパク質

表はFAIRR PUBLIC REPORT Coller FAIRR Protein Producer Index 2019より引用

FAIRRによる日本の畜産企業のリスク評価

2019年

この指標に基づき、FAIRRは2019年の世界の大手畜産企業60社のリスク評価を公開した。日本からは日本ハム、プリマハム、日本水産が対象となっている。いずれも高リスクな畜産企業との評価になっている。

2018年

2018年の評価も日本ハム、プリマハム、日本水産が対象だ。2018年版では指標ごとの評価が公開されているので見てみると、3社ともアニマルウェルフェアについては高リスクな会社であると評価されていることがわかる。


(参照 https://assets.fairr.org/wp-content/uploads/sites/2/2018/11/12101508/Coller-FAIRR-Protein-Producer-Index_Asia_summary_EN.pdf)*指標「持続可能なタンパク質」についてはスコアリングが行われていない。

高リスクと評価されたのはアニマルウェルフェアだけではない。3社はほとんどの項目で高リスクと評価されており、全体評価でも低いものとなっている。


ESG投資の総額は近年増加し続けている。FAIRRが急成長している=畜産分野のESG投資が増えているということだ。最近の投資家の動向をみると、飼料栽培や放牧による森林破壊に関連する事業から撤退する傾向、そして植物性タンパク質への投資が目立つ。アニマルウェルフェア畜産への投資の増加も見られる。

いまのままでは日本の畜産企業は投資リスクが高く、投資家にとって魅力ある企業だとは言えないだろう。
だが希望はある。2020年7月16日付の日本経済新聞*のインタビューに、FAIRR代表は次のように言っている。「これまで米マクドナルドやウェンディーズなど大手食品企業に対して、複数の投資家と共同でエンゲージメントを行うなど成果もでてきている。プロテイン・プロデューサー・インデックスで高リスクとされる日本企業もあり、こうした企業に対する対話に意欲的な投資家もいる。」

だが日本企業は外部からの働きかけを待つだけではだめだろう。自ら動くこともしなければならない時期はすでに来ているはずだ。自分さえ儲かればいいという考えは過去のものだ。世界をより良くしていこうというのが今の世界の流れで、それに沿うことは企業の利益にもつながるはずだ。

*NGOが深掘りするESG 人権から畜産リスクまで 担当者に聞く(下)日本経済新聞

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5 コメント

  1. 白戸則道 2018/09/17

    ✖半端ないのだ。
    〇半端ではないのだ。

    真面目な主張ならまともな日本語を使いましょう、説得力が激減です。

    返信
    1. ご指摘ありがとうございます。

      返信

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