家具製品などで有名なイケアが、日本で初の包括的なアニマルウェルフェアの見解を発表していたことが明らかになりました。
イケアは家具の他にもイケアレストランの運営や食品の販売も行っており、動物性の原材料を使用しています。イケアはCSR活動に力を入れている企業ですが、アニマルウェルフェアの見解も日本を含む全世界のイケアを対象にしており、内容も充実したものとなっています。
動物への配慮を求める声が高まっていることをうけ、世界中でアニマルウェルフェアの政策を発表する企業が増え続けています。しかし、アニマルウェルフェアの政策を持っているグローバル企業であっても、日本向けの原材料調達には政策が適応されないというケースが多いのが現状です。また、日本でも卵のケージフリーの政策を発表するなどアニマルウェルフェアの取り組みをする企業はいくつか出てきていますが、IKEAのように内容が多岐にわたる見解を持つ企業はありませんでした。
IKEAが包括的な内容のアニマルウェルフェアへの取り組みを表明したことによって、今後日本でも企業のアニマルウェルフェアへの取り組みの重要性がより認識され、アニマルウェルフェア向上の運動がより一層進んでいくことでしょう。
IKEAのアニマルウェルフェアの見解はこちらからご覧いただけます。(英語)https://www.ikea.com/gb/en/doc/general-document/ikea-read-more-about-ikeas-view-on-animal-welfare__1364641255476.pdf
IKEAは多岐にわたるアニマルウェルフェアに関する目標を設定していますが、後半で説明する「ベター・プログラム」を通して、これらの目標を2025年までに達成することを目指しています。目標は、具体的には以下の通りです。
・ケージや妊娠ストールの段階的廃止*1
・日常的な肉体の改変の段階的廃止*2
・抗生物質の日常的な使用の段階的廃止*3
・成長促進剤の使用の段階的廃止
・クローン動物の使用の禁止
・強制給餌*4の禁止
・ライブピッキング*5の禁止
・ミュールシング*6の禁止
【補足説明(アニマルライツセンター)】
*1 採卵鶏のケージ飼育(日本では92%の採卵養鶏場がケージ飼育)や、母豚を身動きができない折に拘束して飼育すること(日本では86%の養豚場が妊娠ストール飼育)などの段階的廃止
*2 採卵鶏のくちばしの切断(デビーク)や、牛の角や、豚の尻尾の切断、歯の切断などの、日常的に動物の体を改変する行為の段階的廃止
*3 抗生物質を日常的に予防目的で使用することの段階的廃止
*4 動物の意思とは関わらず強制的に餌を食べさせること。フォアグラの生産過程で用いられている。
*5 ダウンなどに使用する羽毛のため、生きたまま水鳥から羽をむしり取ること。
*6 品種改変により皮膚面積が増えたことによる羊の臀部・陰部への蛆虫の寄生を防ぐため、子羊の臀部(陰部と表現されることもある)の皮膚と肉を切り取ること。
これらの目標に加えて、イケアは以下のケージフリーの政策を発表しています。時期は発表されていませんが、すでにイケアのグローバルサプライチェーンで使用している卵の80パーセントがケージフリーもしくは放牧の卵となっています。
・液卵も含めた100パーセントの卵をケージフリーもしくは放牧の農場から調達する。ケージフリー、放牧の基準はEUの決まりに則る。
さらに、イケアの見解の中で大きな目玉となっているのが「ベター・プログラム」です。ベター・プログラムはサプライチェーンで取り扱う生物種ごとに最低限のアニマルウェルフェアの基準を定めるもので、2025年までに調達する卵、鶏肉、豚肉、牛肉、乳製品、サーモンをベター・プログラムに適応したものにすることを目標にしています。
最初に発表されたベター・プログラムは鶏肉に関するもので、この基準はイケアジャパン株式会社のホームページでも公開されています。(日本語)
https://www.ikea.com/ms/ja_JP/this-is-ikea/additional_information/better-chicken/index.html
「ベター・チキン・プログラム」では、ブロイラーのアニマルウェルフェアに関して詳しく定めています。例えば、飼育密度を1平方メートルあたり30キログラムとすることや、照明の調節によって自然な昼夜の日照パターンを再現すること、止まり木や、つつきまわれる環境を与えることなどが定められています。
また、豚に関する基準は2018年末に、サーモン、牛に関する基準は2019年に発表される予定です。輸送と屠殺に関する基準も試験的に実施され始めており、今後も検討されていく予定です。
さらに、IKEAはアニマルウェルフェアの取り組みの一環として、植物由来の食材と環境への影響が少ない肉の使用を増やしていき、それによって間接的にサプライチェーンで取り扱う動物の数を減らしていくとしています。これはより少ない量の、アニマルウェルフェアのレベルがより高い動物性の食材を使用するということをねらいとしています。実際にIKEAではヴィーガンのミートボールなど、ベジタリアン・ヴィーガンの製品を取り扱っています。