2025年を目指して動物愛護法改正が議論されています。
アニマルライツセンターは、動物実験の廃止を求める会とPEACE命の搾取ではなく尊厳をとともに、改正案をまとめました。
2019年改正で求めたことから、特に畜産(産業)動物については大きく変えており、その他実現されなかったことを再度求めるとともに、近年行政の運用の甘さが散見されるため法律が正確に執行されるような改正を求めています。
1.動物福祉とは何かを明確にし、法の目的(第1条) の「国民の間に動物を愛護する気風を招来し」を「国民の間に動物福祉を守る倫理的責任を根付かせ」に変え、動物福祉の担保を追加する
理由:動物愛護法の目的にアニマルウェルフェア(日本語でもカタカナ語でも問題ない)を入れることで、動物自身の状態の改善を目的に加える。
2.「基本原則」(第2条)に「5つの自由」を盛り込む。すなわち、現行法の基本原則に盛り込まれている3つの自由に、残る「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動ができる自由」を追加する
理由:アニマルウェルフェアの5つの自由のうち「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動ができる自由」が含まれていないように読めるため、明確にすることで、動物への心理的な暴力やネグレクトが明確に違法であることを示す。
1.動物取扱業の対象種(第10条)を「すべての脊椎動物」とする【附則】
2.罰則の対象となる愛護動物の対象種(第44条第4項)を「すべての脊椎動物」とする【附則】
理由:少なくとも脊椎動物までは規制の対象動物種にする必要がある。
•台湾、韓国、フィリピンなど周辺諸国も脊椎動物を対象としている。
•哺乳類・爬虫類・鳥類と、両生類や魚類の間に線を引く科学的社会的根拠はない。
3.対象業種(第10条)を生きた脊椎動物を扱うすべての業に拡大する。動物実験施設、実験動物販売業、畜産関係業、生餌業、輸送業者、補助犬取扱施設、動物を使用した動画配信を生業とする者等を含める【附則 】
理由:動物を扱う業であるにも関わらず該当していないことは不平等が発生している。畜産などは同じ規定でなくても構わないが、動物取扱業に含め、動物を扱うすべての業を動物福祉の観点での規制のもとに置くことが必要。
4.繁殖制限(第37条)の対象種を「犬猫」から「すべての脊椎動物」とする
理由:犬猫に限らず、多頭飼育崩壊やそれに近い状態が多発している。
1.産業動物に関する条項を新設し、以下の項目を加えること、及び③,④,⑤に違反した場合は罰則を適用できるようにすること
理由:条文が無いことが国際的にも異常な状態である。
罰則は法令遵守のために必須。罰金やその他何らかの罰則が必要。
①動物福祉の5つの自由を満たす飼育への転換を図ることを義務付ける
理由:5つの自由は元々畜産動物の福祉改善のために提唱され、これらを守ることは国際的な同意事項であり、国内食品大手企業も5つの自由を支持する立場を取っている。
②国際的な水準と最新の動向に配慮するものとする
理由:畜産動物福祉の技術は刻一刻と変化しており、動物、持続可能性、経済のために国際動向を把握し適用する必要がある。
③産業動物の屠畜、殺処分においては、必ず意識喪失させてから次の屠殺に進まなくてはならない
※5年程度の移行期間を設ける
理由:哺乳類の屠畜では事前の意識喪失が行われていることが多いが、鳥類では行われていないケースが有る。国際的に多くの国が義務化しており、現在、意識喪失なしの屠殺は国際的に許容されない。早急に意識喪失を徹底する必要がある。
④飼育密度を適正に保つものとし、最低限、他の動物や壁と接触せずに横臥できる面積を与えること
※新設する場合は即時、現行の農場は2年程度の移行期間を設ける
理由:日本は最低面積の規定がないため他国より過密になる傾向がある。高温多湿な日本において密度が高いことは動物福祉の著しい低下とともに、疾病の発生、菌やウイルスの増殖につながっている。
⑤外科的切除や施術では麻酔および鎮痛薬を使用するものとする
※3年程度の移行期間を設ける
理由:去勢や断尾、除角など痛みを伴う施術では麻酔を行うか、撤廃することが人道的であり、かつ国際的な流れになっている。
2.国際獣疫事務局(WOAH、旧OIE)の基準に準じて「産業動物の飼養及び保管に関する基準」を改定し、遵守義務とする 【決議・基本指針】
理由:国際獣疫事務局(WOAH)の基準はベーシックなものが規定されており、これらは遵守義務とする必要がある。農林水産省のアニマルウェルフェアに関する飼養管理指針と連携し、屠畜についても具体的な基準を定める必要がある。
3.産業動物関連施設を動物取扱業に加えること
理由:農水省・厚労省との連携による届出などで動物愛護部局が関連施設を把握し指導を可能にする必要がある。
1.「動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等」(第41条)第1項における動物実験の代替や実験動物数の削減を義務とする【附則】
理由:動物実験の3Rの原則の遵守は国際的な共通認識であり、できる限り動物実験を避けることは苦痛の軽減と同様に求められている。代替と削減は、苦痛の軽減と同様に義務化される必要がある。
2.代替法があるものについては、それを利用することを義務付ける
理由:すでに利用可能な代替手段があるにも関わらず動物実験を選択することが未だにある。これらは明確に不必要な苦痛である。
3.代替法の開発・普及を国の責務とする【附則】
理由:3Rの原則を遵守した研究を推し進めていくには、そして、世界と競い合うには代替法の開発・普及は大変重要であり、国として十分な人手と予算をかけて全力を挙げて取り組むべきことである。よって、代替法の開発と普及を国の責務とするべきである。
4.実験動物関連施設を動物取扱業に加えること
理由:実験動物の飼養保管等基準に代替・削減についても盛り込み、登録施設に対し遵守を義務とする。
1.動物の輸送に関する条項を新設し、以下の項目を加えること
理由:条文が無いことが異常な状態。輸送は最も動物に負担がかかる行為であり規制が必要。
①動物の輸送時間は最小限に抑える
②苦痛や不快さの軽減に務める給水は動物が渇きを覚える
③時間以上絶ってはならず、輸送が12時間以上に及ぶ場合は給餌する
④動物の生理、生態等に適した温度、明るさ、換気、湿度、床材、空間を保たなくてはならない
理由:輸送は動物に大きな負担を強い、死亡することも多い。そのため、輸送時間を最小限に留め、できる限り負担が少ない状態を保たなければならない。
現状は宅配便などで死ぬことを前提に輸送が行われており法律違反である可能性が高いが、輸送の規定が明確ではないため改善を拒絶している。なお、一部業者は生きた動物を輸送しないとしている。
2.その他WOAH動物福祉規約7.2海上輸送、7.3陸路輸送、7.4空路輸送に準じ基準を策定し遵守義務とする
理由:①~④以外の詳細の規定はWOAH動物福祉規約に沿って規定し、遵守を義務化する必要がある。
3.輸送時の基準の遵守を動物取扱者の責務に含める
理由:動物取扱業者はその責任の所在を明確にする必要がある。
第40条を以下のように改正する (動物を殺す場合の方法)
第40条 動物を殺さなければならない場合には、できる限り速やかに、かつ苦痛のない方法によってその動物の意識を失わせた上でしなければならない。
理由:意識の喪失を事前に行うことは、国際的にも人道的にも社会通念上も必須。
2.1の改正により、自治体による殺処分において哺乳類の炭酸ガス単体による殺処分は実質禁止にする【国会答弁】
理由:参議院の環境委員会において「動物に対して苦痛を与えるような形での殺処分は今度の改正によって今後はないものというふうに考えている」との答弁があった。
鶏の屠殺は炭酸ガスとアルゴンなどの混合とガスの段階的充填による、より人道的な方法がある一方で、哺乳類の炭酸ガス単体による殺処分は安楽ではないため廃止する必要がある。
1.暴力行為や酷使等について、衰弱や死亡に至ることを前提とせず、その行為そのものを禁じる(第44条第2項)
理由:現在の第2項だと衰弱や死亡をしていないと罰則が適用されないケースがある。これらの書き方を改善し、虐待行為そのものが罰則に当たるようにする必要がある。
2.罰則の条文に、虐待の定義として下記の①~⑮を明記し、虐待の判断をしやすくする
①不必要な苦痛を与える
②身体的な苦痛を与える
③酷使したり、加重労働させる
④拘束する、狭いスペースに入れる、あるいは繋ぎ、適切な運動をさせない
⑤苦痛を与える輸送をする
⑥生命や健康に危険が及ぶ状態で車内に動物を放置する
⑦不適切な明るさのもとにおく
⑧過密状態で飼養する
⑨精神的苦痛を与える、ストレスを与え続ける
⑩習性や生態に反した飼養管理を行う
⑪習性に適した給餌、給水を怠る
⑫傷病の治療や疾病の予防を行わないなど、健康への配慮を怠る
⑬獣医師免許を持たない者が手術等の処置を行うこと
⑭動物を闘わせる
⑮その他、上記以外にも積極的・意図的虐待、ネグレクトや未必の故意と考えられる行為にも適用できるよう範囲を広げる
殴る蹴るといった積極的な暴力以外の虐待で警察が虐待と判断できないケースがあるため、より定義を明確にする必要がある。
イギリスの「動物福祉法2006」に倣い、不必要な苦痛を与えることに罰則をかける。https://onl.sc/Dv3A4qa
1.行政による虐待された動物の緊急一時保護を可能にする
理由:虐待者や悪質な飼い主の元から強制的に動物を引き離すことができない現状では、動物の命が危険にさらされている緊急事態でも救出することができない。そればかりか動物を人質にとられている状態では、行政や警察が虐待者や悪質な飼い主に強い手段を講じることができない。
2.殺傷・虐待・不適切飼養・遺棄した者が二度と飼養できないようにする
理由:犠牲となる動物を増やさないことは勿論のこと、行政や警察、愛護団体の労力を少しでも軽減させるには、一度、動物愛護法で罰せられた者や不適切飼養で行政に命令を下された者は、二度と動物を飼養できないようにする必要がある。
次の①~④によって、移動展示・移動販売を実質禁止する
①登録時及び更新時の立入の義務化【決議】
②イベント主催者名等の登録は不可とし、事業者ごとの登録の義務化
③固定の事業所住所以外の登録の禁止(イベント会場、駐車場、公園等での販売・展示の禁止)
④施設への導入後、取り扱う動物の検疫期間を2週間設ける
⑤要件を満たさなくなった場合(土地建物の権原を失う等)の自動的な登録の抹消
理由:行政ごとに運用があやふやになっており、イベント主催者名での登録で済ませ法の意図を反映していなかったり、イベント時以外事業実体のない貸施設が5年間の登録地点になっているなど、問題が散見される。
移動展示、移動販売の規制強化による禁止が必要。道路、公共の場所、市場等で動物をペットとして販売することを禁じるイギリスの「1951年ペット動物法」に倣う。
虐待に対して、行政が迅速かつ着実に的確に手続を遂行する制度にする
1.虐待の通報を受けた後、できるだけ速やかに、遅くとも1週間以内の立入検査を義務付ける(第24条の義務化)
理由:虐待の通報を受けても、動かない自治体、動きが鈍い自治体があるため、期限内の対応を義務付ける必要がある。
2.環境省のガイドラインを規則等に格上げし、チェックシート形式で点検し、1つでも該当すれば虐待と認定する
理由:虐待現場をみても、「これは虐待ではない」と主張し、放置や適切な対応をとらないケースが発生している。虐待の判断が自治体や職員によって異なることは望ましくない。共通の基準でもって判断できるような制度を導入すべきである。
3.行政が第一種動物取扱業者および第一種動物取扱業者だった者の違反を発見したときは、勧告しなければならないとし、又、その勧告に係る措置をとるべきことを命じなくてはならないとし、義務化する (第23条・第24条の2)
①勧告、命令をする期限を3か月以内から1か月以内に改正 すべての問題点の改善までが1か月。
②すべて改善されていなければ次の措置命令、行政処分、または動物虐待による告発等に進まなくてはならない
理由:指導にとどまる事が多く改善に至らないため、勧告およびその措置命令を行政に対し義務化する。 (指導は法律上明記がない)
複数問題点があり、そのうち1点でも改善が見られると良しとしてしまうケースが発生しているため、すべての問題について改善がなされなければ、手続きを進めることを義務付ける必要がある。
4.命令に違反した場合等の登録取り消し等を「できる」から義務化にし、即時登録取り消し、もしくは3か月以内に営業停止を命じる (第19条の義務化)
理由:着実に劣悪、悪質な業者を減らしていくには、この規定を義務化する必要がある。
5.勧告、命令、取消、営業停止の行政処分時に業者名の公表を義務化する (現行法では勧告違反者の公表はできる(第23条第3項))
理由:業者に対する抑止力になり得る。国土交通省には「ネガティブ情報検索サイト」があり過去の行政処分について市民が知ることができる。
6.基準違反等に対し、期限内の勧告・命令を怠った場合、環境省による自治体への指示をできるようにする【地方自治法第245条の4~8】
理由:職務怠慢な自治体に対しては、きちんと国が指示をする体制が必要である。(例:建築基準法第17条など)
7.動物愛護管理担当職員の要件を強化する(第37条第3項)
①環境省が動物愛護管理担当職員研修を毎年実施、その受講と試験合格を必須とする
②研修では、複数の自治体における虐待の通報と自治体の対応例を挙げて、虐待の判断や適切対応のトレーニングを行う
③自治体同士で議論して問題点をあぶりだし、改善・向上につなげる
理由:「自治体職員の“動物Gメン”化」が適切・適格かつ有効に実施されるには、厳しい義務付けや規制だけでは不十分で、現場の動物愛護担当職員の能力・質の向上が不可欠である。
1.飼養動物のホワイトリスト制を導入し、飼育してよい動物を指定し、それ以外の動物を飼育不可とする
理由:家畜化されていない野生由来動物の飼育は不適切であり、動物福祉の観点から限定的であるべき。 【生物多様性国家戦略】
2.「動物を譲渡す者は、譲受ける者が適正飼養できることを確認すること」と義務付ける【決議】
3.「動物販売業者の責務」(第8条)の対象を、販売業者だけではなく動物を譲渡する者全般に拡大する
理由:譲受ける者が動物を適正飼養できる住居に住んでいるか、世話や管理ができるか等の確認をせず安易に譲渡をしてしまう自治体、愛護団体、個人もいる。その結果、飼いきれずに遺棄されたり虐待・虐殺されたり多頭劣悪飼育されたりする。また集客目的にハムスターなどの生き物をプレゼントするイベントを行い、まともに習性や飼育方法の説明もせずに客に渡し、遺棄や過剰繁殖に陥ってしまうなどの問題も起きている。抽選は不適切ということを示すために、この規定が必要。後期高齢者に動物を売り渡す、または譲り渡すなどで殺処分につながることもある。譲渡しについては現行法には規定がないため、追加が必要。
1.動物の所有者又は占有者の責務である適正飼養(第7条)を義務付ける。「当該基準によらなければならない」と改める
理由:飼養保管基準には基本的な事項しか記されていないにもかかわらず、違反が後を絶たず解決もできない。指導の徹底と確実な改善のため、遵守を義務化する必要がある。
2.指導及び助言を削除し、勧告及びその勧告に係る措置命令を義務化(第25条)
理由:指導にとどまる事が多く改善に至らないため、勧告およびその措置命令を行政に対し義務化する。
⇒「自治体職員の“動物Gメン”化」をここでも適用させる
3.自治体の収容状況を改善するため、都道府県知事等の収容施設に係る全国一律の技術的基準を定める(冷暖房・収容スペースの広さ・運動等)【決議】
理由:施設によっては子犬・子猫を真冬に暖房のない所に置くなど、劣悪な状況のところもある。これでは住民に適正飼養を指導することはできない。収容事情は一般家庭と異なることから、自治体を対象にした収容基準を定め、収容動物にとって快適な環境にすべきである。ひいては、それが収容動物の健康、そして譲渡数の増加につながる。
1.第10条の次の除外規定を削除する
(「哺乳類、鳥類又は爬は虫類に属するものに限り、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節から第四節までにおいて同じ。」となっており、除外規定が4節までかかってしまっている)
理由:対象動物種・対象業種の拡大には、この除外規定の削除は不可欠である。この除外規定は、「第四節 周辺の生活環境の保全等に係る措置」(第25条)にまでかかっている。それによって、畜産動物や実験動物が不衛生な環境で飼育され周辺の生活環境が損なわれている事態や衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態であっても、行政職員による立ち入りや勧告等が行えない状態。
2.動物の飼育者に対し、対人事故を起こした場合の報告を義務化する
理由:現在は条例で飼育者に対し対人事故の報告を求めているが(多くは犬と特定動物のみ、すべての動物は4都県)、事故の状況や傾向を把握するため、法律で義務化するべき。
3.8週齢規制について日本犬6種の附則を削除
理由:前回改正の課題として残された問題であり、この特例を継続する正当な理由は見当たらないことから、削除すべきである。