日本国内で、5つの自由を満たすことができる基準を備えたアニマルウェルフェアの認証といえば、有機畜産のJAS認証しかありませんでした。そんな中で2021年10月、山梨県があらたに「やまなしアニマルウェルフェア認証基準」を発表しました。
この認証基準は、取り組みの努力を評価するエフォート認証と、実際の成果を評価するアチーブメント認証の2段階に分かれています。
エフォート認証はJGAPなどと同じく、畜産技術協会が策定しているアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に含まれる動物を飼育する上ではごくごく当たり前の項目が基準になっています。例えば、観察、給餌給水、温度や湿度などの環境面、衛生面が規定されています。山梨県はこのエフォート認証を、門戸を下げ、より多くの生産者にこの認証に参加してもらえることを目的にしているとしています。
消費者が商品を選ぶ際に重要なのは、アチーブメント認証のほうです。このアチーブメント認証は達成度合いに応じて3段階に分けられます。
レベルが最も高いもの(仮にここでは「星3つ」と表現します)を選べば、私達が日ごろから求める世界基準のアニマルウェルフェアに適合するものになります。たとえば、星3つであれば、放牧飼育で動物たちは外に出て太陽の光を浴び、風を感じることができます。
残念ながら星1つの場合は、そこまで高いアニマルウェルフェアにならない可能性が高いと言えます。しかしそれでこの認証制度にがっかりすることは有りません。多くの他の認証でもレベル分けというのは存在するもので、星3つであることが重要だと認識しておけばいいだけなのです。実際、山梨県が「全国に先駆けてAWを実践している県内農家」として紹介する(星3つに相当するであろう)農場は、みんな放牧飼育で、とてもよいアニマルウェルフェアを達成している農場です。
ぶうふぅうぅ農園(豚)、黒富士農場(採卵鶏)、甲州地どり生産組合(肉用鶏)、(公財)キープ協会(乳牛)です。
オルタナにもコメントを寄せさせていただきましたが、この取り組みは日本のアニマルウェルフェアの今後にとって朗報です。世界スタンダードなアニマルウェルフェアが目指す姿になっています。その未来を、自治体が描いたことが、とても重要な一歩なのです。
ごまかしではないアニマルウェルフェアを、他の自治体も目指してもらいたいと期待します。
Twitterには「麻酔なしの去勢を行っていてもこの認証は取れてしまう」との指摘もありましたが、★3つのグレードを自治体が定めたことの意義を、ご存知ないようでした。
メディアの報道もごく少数でしたし、今後も消費者の行動が大切になってきそうですね。