アニマルウェルフェアや畜産動物を食べるべきかどうかなど、マスメディアも含め報道が増えてきている。動物を守りたいという立場からの消費者の発信も増えている。
そんなときに、結構多い間違いがあるのでまとめてみた。
メディアもよく間違えちゃいます。平飼い卵の紹介をしたいのに、ブロイラー(肉用鶏)の写真を使ってしまったり、肉用鶏の紹介のために採卵鶏の写真を使ってしまったり。
卵用に品種改変されてきた鶏の品種と、肉用に品種改変されてきた鶏の品種は結構明確に違います。卵用の鶏は本来は年間10~20個程度しか卵を産まないにもかかわらず、それを300個産むように改変されてきた鶏です。肉用の鶏はむね肉ともも肉をとにかくでかくぶよぶよと太らせた鶏でとても大きいのです。同じ名前の品種でも肉用だと50日で3kg、更に時間が立つと7kg、9kgと増大していきます。
卵用に一般的に利用される鶏
わかります?
え、わからない?主な違いは以下のとおりです。
採卵鶏の飼育方法について、よくわからないという声も多いようです。
バタリーケージ=床面も網で、卵が前に転がるように少し斜めになったケージが連なっているもの。これが5段6段になっているものもある。1段でもバタリーケージで残酷さは同じ。
エンリッチドケージ(ケージ飼育)=ケージがやや広くなり、とまり木、巣のエリア、爪とぎエリアがあるもの。多少マシだが鶏たちはやはりボロボロで消費者からは拒絶されるケージ飼育の1種。
平飼いは、鶏舎内又は屋外において、鶏が床面又は地面を自由に運動できる飼育システムのことを言います。この定義は鶏卵の競争規約により規定されており明確な定義です。平飼いの中には、みなさんがイメージしやすい鶏舎内で土の上を歩ける状態の平飼い、足元が網になって糞が落ちる仕組みになっている平飼い、とまり木や巣箱や自動除糞システムが一体になっているエイビアリーシステムという平飼い、放牧などが含まれます。
一般的な平飼い=屋内で地面を鶏が自由に動き回る状態
エイビアリーシステム=立体型平飼いと表現するとわかりやすい。地面を歩くことができ、システム的になっている立体部分には糞を自動で回収したり、自動で給餌給水をしたり、とまり木、巣のエリアなどが備わっている。同じ面積でも多くの羽数を飼育でき、自動化されているため労働力がケージ飼育と変わらない。
放牧、放し飼い=平飼いの中でも屋外に出ることができるようになっている養鶏場のことです。放牧、放し飼いが鶏にとって最も良い養鶏方法です。
肉用鶏の場合は、基本的にほぼ99%の養鶏場が、地面の上で鶏を平飼いしています。50日で出荷し全てふん尿も毎回洗い流す作業をするため、そのほうが効率的だからです。ほんの一部、ケージ飼育をしている肉用の養鶏場がありますがそのような養鶏場は時代をまったく勘違いして生きているとしか思えない、ありえない養鶏場です。
しかし、かなり多くの肉用の養鶏場や企業が、「平飼いです」とサイトに書いていたりします。これはブルーウォッシュで消費者を欺く行為と言えます。しかし、養鶏場は確信犯的に謳っている可能性がありますが、企業は消費者と同じでよくわからずに(養鶏場にだまされて?)平飼いだと言っている可能性もあります。
肉用鶏、この写真が最も一般的な方法です、た、たしかに地面を歩くことができる平飼いではあります。同時に密飼いですね。
「茶色い卵のほうが何となく高級そう」、「茶色い卵が平飼いかしら」、という人がいます。「餌が違うから殻の色が変わる」という人もいます。
どちらも誤りです。
殻の色の違いは、品種の違いです。ボリスブラウンという茶色い鶏からは茶色い殻の卵が産まれます。ジュリアライトという白い鶏からは白っぽい殻の卵が産まれます。アローカナというチリ出身の鶏からは青い卵が産まれます。黄斑プリマスロックという黒と白のまだらな鶏からは茶色い卵が産まれます。ソニアという白に茶色が混ざったような色の鶏からは白っぽいピンクっぽい色の卵が産まれます。
飼育の仕方、餌、無関係です!
下記写真はバタリーケージの中で死んだ鶏に引っかかっていた卵(出荷されます)。ボリスブラウンであるため茶色い卵です。
開放鶏舎だからいい飼育ではないか・・・ということをいう企業があります。それは違います。
開放鶏舎と並んで比較されるのは、ウィンドレス鶏舎やセミウィンドレス鶏舎で、外の光が入るか入らないかということを表しているに過ぎません。
開放鶏舎のほうが良いこともあります。それはサルモネラ菌の発生率が低いことです。外の空気が行き渡りやすいためであろうと思われます。またウィンドレス鶏舎の薄暗さがないため鶏ははっきりとものを見ることが出来、その分ストレスは低いかもしれません。また、ウィンドレス鶏舎の中はゴーッという換気扇の音とカチャカチャという金網に爪が当たる音が響き続ける異常な空間であり、そのような異音がすくないこともマシであると言えるでしょう。ウィンドレス鶏舎は生き物を飼育するシステムではありません。
ただし、ウィンドレス鶏舎のほうが外気の温度を遮断しやすく、夏の猛暑時には開放鶏舎のしかも逃げ場のないケージの鶏はバタバタと死んでいきます。
さらに開放鶏舎では多くの場合、下記のような1羽とか2羽ごとケージを区切ることによりほとんど動けなくする”拘束バタリーケージ”を使っています。最低です。
開放鶏舎でよく言われることですが、「1羽あたりの面積を広げています」という企業があります。もちろん広げないよりはマシです。しかし、1羽2羽で区切られているケージにおいて5cm幅が広くなってもやっぱり残酷な飼育に変わりはありません。重ねて主張しますが、それでも、広げないよりマシです。
鶏は隠れて卵を生みたいという強い欲求を持っています。捕食者に襲われることを避けるという生存本能からくる欲求です。そのため、平飼い養鶏場、放牧養鶏場には複数の巣箱が設置されています。鶏たちは産卵したくなってきたら自分で巣箱に行って卵を生むのです。その巣箱が少し傾斜になっていて、転がって溜まった卵を人が回収する農家もありますし、または普通に卵を巣箱から回収する農家もあります。
誤って巣箱以外で産んでしまった卵を殻付き卵として出荷している農家は聞いたことがありません。産んだ日がわかっている卵であれば、加工用につかうという農家は聞いたことがあります。
ですが、ケージ農家や、農水省関係者からすら、「平飼いだと卵をどうやって回収するの?」「卵が地面につく平飼いは不潔じゃないの?」と聞かれる始末・・・。
巣箱には本当は上から隠れる垂れ幕をつけてあげるとよく、足元から覗くと巣箱に他の鶏がいるかどうか見れるくらいが良いとされています。順番に巣箱をチェックしていって、できるだけお気に入りで、かつ空いている巣箱を選んで卵を生みます。
なお、足元が網でできているバタリーケージの中で鶏は安全とは思っておらず隠れて卵を生みたいという欲求は満たされておらず、ストレスと不安いっぱいの中で卵を産まされています。
鶏が敷き詰まってしかも大して動けない状態の鶏の健康状態を観察することは不可能です。一方、平飼いでは鶏が動き回るため、動かない鶏、動きがおかしい鶏を発見することは容易です。
そもそもバタリーケージでは、従業員が毎日見回りをしてやっていることは、鶏が死んでいないか、足や頭などがケージに挟まって動けなくなり餓死してしまいそうな鶏がいないかを見回り、死んでいる、またはほぼ死にそうな鶏を回収して回ることです。ウィンドレス鶏舎だったら薄暗くて見えにくいため、従業員は懐中電灯を持って照らしながら見て回っているといった始末です。アニマルウェルフェアに寄与できる健康管理や観察はケージ内ではとてもできません。
さて、いかがだったでしょうか。間違いは正せたでしょうか。
その他にも、よくある間違い⑧:「鳥インフルエンザ予防のためにウィンドレス鶏舎」は嘘、とか、よくある間違い⑨:「若どり」っていってもみんな赤ちゃんにわとりだから、とか、よくある間違い⑩:「日本産の肉は高いから安全・・・」っていうの根拠ないです、などなどいろいろな間違いを正したい気持ちがありますが、まずは代表的な7つを掲載しました。