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鶏の非人道的な淘汰(殺処分)-告発受理

アニマルライツセンターは2021年4月23日、養鶏場の法人(1)とそこで働く従業員二名(2)及び(3)を被告発人として、処罰を求める告発状を、宮崎地方検察庁に提出しました。

告発の趣旨
被告発人の下記の告発事実に記載の所為は、動物愛護及び管理に関する法律(以下、「動物愛護管理法」という)第44条第1項(動物傷害罪)、又は同法同条第2項(動物虐待罪 )、及び第48条の二(両罰規定)を構成すると思料されるので、刑事上の処罰を求める。

告発事実
 1 被告発人(2)は、〇〇にある養鶏場において、2019年2月7日午前9時45分ごろから10時ごろの間に、鶏舎から出した淘汰対象の生きた鶏2羽を、鶏舎から出した鶏の死体と一緒に一輪運搬車に入れ、その上からさらに鶏の死体を積み重ねた。(証拠資料の動画3を参照)
被告発人(2)は、以て鶏2羽を殺害し、または衰弱させた(動物愛護管理法第44条第1項(動物殺害罪)、同法同条第2項(動物虐待罪))。また被告発人(2)は、被告発人(1)の使用人その他の従業者である(動物愛護管理法第48条の二(両罰規定))。

 2 被告発人(3)は、〇〇にある養鶏場において、2019年2月7日午前9時45分ごろから10時ごろの間に、鶏舎から出した淘汰対象の生きた鶏2羽を、鶏舎から出した鶏の死体と一緒に一輪運搬車に入れ、その上からさらに鶏の死体を積み重ねた。(証拠資料の動画3を参照)
被告発人(3)は、以て鶏2羽を殺害し、または衰弱させた(動物愛護管理法第44条第1項(動物殺害罪)、同法同条第2項(動物虐待罪))。また被告発人(3)は、被告発人(1)の使用人その他の従業者である。(動物愛護管理法第48条の二(両罰規定))。

鶏が積み上げられた一輪運搬車は、同養鶏場の敷地内にある、死体集積場所(死体回収業者が死体を回収する場所)に運ばれた。(参考資料2の動画を参照)。
養鶏場では、基本的に毎日、死体回収業者が鶏の死体を回収に来る。死体回収業者は複数の畜産施設を回って死体を回収し、最後に死体処理工場へ死体を運ぶ。死体処理工場では、死体は加熱処理を経て肥料などにされる。

また、告発人は、同日2019年2月7日、午前11時15分ごろに、同農場の死体集積場所に置かれた一輪運搬車の中に、足を動かす生きた鶏がいることを確認した(一輪運搬車に生きた鶏を入れた実行者は不明)(参考資料3の動画を参照)。

 養鶏場では、毎日鶏舎の鶏の死体の回収、および生産性の見込めない鶏を淘汰するという作業がある。そしてその淘汰方法として、動物愛護管理法第四十条は 「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。」としている。また、同法第四十条第2項に基づく「動物の殺処分方法に関する指針」には「殺処分動物の殺処分方法 殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。」と書いてある。また、「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」(令和2年3月 16 日農林水産省生産局畜産部畜産振興課長通知)においても、「家畜の殺処分を農場内で実施しなければならない場合には、直ちに死亡させるか、直ちに意識喪失状態に至るようにするなど、できる限り苦痛の少ない方法により殺処分を行う。」と書いてある。

 しかし乍ら、被告発人(2)及び(3)が生きたままで一輪運搬車に入れた鶏は、一輪運搬車の中で死体に押しつぶされて衰弱し、あるいは死体処理工場に着くまでに窒息死、あるいは、死体処理工場での処理過程で死に至らしめられることになり、これらの条文に反する。

※本文記載の「証拠資料の動画」「参考資料の動画」は、この記事に添付しておりませんが、それらの動画の一部は下記の動画に含まれています。

https://youtu.be/rOGLTADMo9g

人道的な殺処分とは?

現在日本で可能な殺処分方法は頸椎脱臼しかありません。

諸外国であれば頭部に打撃を加えて意識喪失に至らしめる器具がありますが、国内で販売されていません。
鶏の殺処分といえば鳥インフルエンザなどで実施される二酸化炭素ガス殺をイメージする人もいるかもしれませんが、バケツに鶏を入れて二酸化炭素を注入して殺すという簡便な方法さえ、ガス代がかかるという理由で、実施している農場は(少なくとも知っている限りでは)皆無です。
そもそも、二酸化炭素ガス単体での殺処分は鶏に嫌悪感を与えて苦しめることが科学的に明らかになっており、人道的な方法とはいえません。アルゴンなどの不活化ガスを使用すればそういったリスクを除外できますが、いずれにせよガスを用いて鶏をできるだけ苦しませないように殺すためには、濃度、比率などを適切に管理できるガスメーター付で、鶏の様子が観察できる窓のついた専門のチャンバーが必要です。しかしそのようなポータブルの鶏殺処分機は日本では流通していない状況です。

鶏の安楽殺は本来ならば吸入式の過麻酔ですが、薬剤が残ること(農場で淘汰された鶏はレンダリング工場で再利用されます)、コスト面から、経済利用される鶏への適用はほぼ望めないと考えられます。

残るのは頸椎脱臼。これは人件費以外にお金のかからないやり方です。正しい方法で行われ、なおかつ運が良ければ鶏は即時に意識を失うことができます。ただし、運と書いたとおり、公開された研究によれば、頚椎脱臼された鳥のうち、効果的に行うことができたのは10%だけという不安定なものです。それでもこのようなやり方しか残されていないというのが、鶏たちの現状です。

コチラで正しい頸椎脱臼のやり方を見てもらうとわかりますが、頸椎脱臼をするには片手で鶏の体をつかんで保定し、もう片手で頭部をつかみ、皮膚の下のすべての組織(食道、気管、筋肉、頸動脈)を切断するつもりで、首を思い切り伸ばす動作と同時に、頭を反らすような動作を行うことが必要です。そして当たり前のことですが、確実に殺せたかを確認する必要があります。

告発した農場では、鶏舎から出した淘汰対象のまだ動いている鶏の上に死体を重ね、死体集積場の一輪車の上でも足をばたつかせている鶏がいました。これは目視で確認できた範囲の話です。
一羽一羽の確認は行っていないため、積み重なった鶏の下のほうに、ほかにも生きた鶏がいた可能性もあります。一輪車の右に積み重ねられたカゴの中にも生きた鶏がいたかもしれません。淘汰対象となるような鶏は衰弱しており、動く元気がなくなっていることが多いですし、乱暴な扱いに怯えた鶏は、これ以上ひどい目に合わないことを願うようにじっとしているからです。

告発受理

告発状は2021年6月12日に正式受理されました。

これから起訴になるのか不起訴になるのかの判断は、検察にゆだねられることになります。少しでも畜産動物の扱いが改善につながる判断を下してくれることを願います。

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