食鳥処理場という名の屠殺場で、鶏たちが究極の虐待を受けている。放血不良と業界では呼ばれているが、屠殺に失敗して鶏を生きたまま62度の熱湯に入れて殺す割合が、日本は減っていかない。むしろ増えている。肉用鶏と成鶏(採卵鶏を殺すときの呼び名)を合わせると、放血不良の数は508,406羽となり2009年ぶりに50万羽を超えた*1。
»問題の詳細は以前書いた記事で確認してほしい。
日本の食鳥処理場の多くで、放血不良となった鶏に起きたことは、
1:シャックルに引っ掛けられて逆さ吊りにされ、
2:隣の鶏が首を切られるのを見た直後に自分が首を切られ、
3:カットが甘く血は滴るけど死ぬほどではなく(つまり首を斬るのに失敗し)、
4:直後に超痛い電気ショッカーをあてられ、
5:下手するともう一度切られ、
6:62度の熱湯に頭からつけられ、
7:全身が熱傷(つまり火傷状態)になり、同時に溺れ、
8:死ぬ、
という工程だ。
その上で、その鶏の死体は真っ赤になっているため、食鳥処理されず、すべて廃棄される。
自分が、又はあなたのお子さんが同じ目にあったとしたら、あなたのパートナーが同じ目にあったとしたら、あなたは平常心を保てるのか、想像してほしい。
統計データから、都道府県が成績が悪く、どこの都道府県が最も動物たちを苦しめているのか、知ることが出来る。まず、放血不良になる確率が高い都道府県、つまり失敗率が高く質の悪い食鳥処理場を抱える都道府県を見ていこう。(肉用鶏のみのデータであり、採卵鶏の食鳥処理場データは別の記事でアップしている)
2018年、静岡県の肉用鶏の食鳥処理場は、5,884,556羽を屠殺し、そのうち26,780羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.4551%である。
(現在静岡県には肉用鶏の食鳥処理場が3軒(米久おいしい鶏(株)静岡事務所と静岡若どり、(株)シガポートリー浜松支店)あるが、内訳は不明である)
2018年、岐阜県の肉用鶏の食鳥処理場は、3,973,978羽を屠殺し、そのうち11,190羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.2816%である。
(現在岐阜県には肉用鶏の食鳥処理場が3件(岐阜アグリフーズ株式会社、タッキーフーズ株式会社南濃工場、農事組合法人東濃ミートセンター)あるが、内訳は不明である。)
2018年、福島県の肉用鶏の食鳥処理場は、4,740,100羽を屠殺し、そのうち8,596羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.1813%である。
(現在福島県には肉用鶏の食鳥処理場が2軒(伊達物産株式会社副霊山工場、福島エーアンドエーブロイラー株式会社本社工場)あるが、内訳は不明である)
2018年、山口県の肉用鶏の食鳥処理場は、6,930,057羽を屠殺し、そのうち10,942羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.1579%である。
(現在山口県には肉用鶏の食鳥処理場が2軒(農事組合法人山口食鳥センター、深川養鶏農業協同組合)あるが、内訳は不明である)
2018年、三重県の肉用鶏の食鳥処理場は、1,137,179羽を屠殺し、そのうち1,764羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.1551%である。
(現在三重県には肉用鶏の食鳥処理場が2軒(三重チキン㈱、瀬古食品(有))あるが、内訳は不明である)
2018年、福島県の肉用鶏の食鳥処理場は、1,376,885羽を屠殺し、そのうち1,759羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.1278%である。
(現在福島県には肉用鶏の食鳥処理場が2軒(株式会社あらい、農事組合法人福栄組合)あるが、内訳は不明である)
ここに掲載した都道府県は、2017年以前もずっと放血不良の割合が高いことを付け加えたい。
2018年、宮崎県の肉用鶏の食鳥処理場は、136,754,196羽を屠殺し、そのうち76,136羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.0557%である。
(現在宮崎県には肉用鶏の食鳥処理場が10軒((株)エビス商事、(株)児湯食鳥(3工場)、宮崎くみあいチキンフーズ(株)(3工場)、エビスブロイラーセンター㈱、宮崎サンフーズ(株)、日本ホワイトファーム(株))あるが、内訳は不明である)
2018年、鹿児島県の肉用鶏の食鳥処理場は、145,459,233羽を屠殺し、そのうち38,967羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.0268%である。
(現在鹿児島県には肉用鶏の食鳥処理場が11軒(鹿児島くみあいチキンフーズ株式会社(2工場)、マルイ食品株式会社、赤鶏農業協同組合、株式会社アクシーズ(3工場)、株式会社ウェルファムフーズ、有限会社 永峯食鳥、株式会社ジャパンファーム(2工場))あるが、内訳は不明である)
2018年、静岡県の肉用鶏の食鳥処理場は、5,884,556羽を屠殺し、そのうち26,780羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.4551%である。
(現在静岡県には肉用鶏の食鳥処理場が2軒(米久おいしい鶏(株)静岡事務所と静岡若どり)あるが、内訳は不明である)
2018年、青森県の肉用鶏の食鳥処理場は、55,385,945羽を屠殺し、そのうち26,780羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.0361%である。
(現在青森県には肉用鶏の食鳥処理場が4軒(日本ホワイトファーム㈱、㈱阿部繁孝商店(2工場)、プライフーズ㈱)あるが、内訳は不明である)
2018年、鳥取県の肉用鶏の食鳥処理場は、18,901,928羽を屠殺し、そのうち17,076羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.0903%である。
(現在鳥取県には肉用鶏の食鳥処理場が3軒(米久おいしい鶏、名和食鶏、大山どり)あるが、内訳は不明である)
2018年、岩手県の肉用鶏の食鳥処理場は、111,861,877羽を屠殺し、そのうち14,502羽を生きたまま熱湯に入れた。割合は0.0130%である。
(現在岩手県には肉用鶏の食鳥処理場が11軒(プライフーズ株式会社(2工場)、株式会社十文字チキンカンパニー、岩手農協チキンフーズ株式会社、株式会社アマタケ、住田フーズ株式会社、株式会社阿部繁孝商店、株式会社オヤマ(2工場)、株式会社フレッシュチキン軽米)あるが、内訳は不明である)
屠殺数が多く、割合も通常よりも高い宮崎県での犠牲数は際立つ。また失敗率が高い静岡県は犠牲数も圧倒的に多くなっている。
一方で失敗する確率が著しく低い優秀な食鳥処理場を持っているのが和歌山県と秋田県だった。特に和歌山県は2014年以降ほぼゼロを保ち、それ以前から何らかの方法で改善が加えられたことが伺える。しかし非常に皮肉なことに、和歌山の食鳥処理場は今年倒産した。悪いところが残り、いいところが潰れるというのは悲惨な話だ。こんなところにも消費者の低い意識があらわれているのかもしれない。
今週、あなたはどこ産の鶏肉を食べただろうか。
日本を含め182カ国が参加している国際機関OIE(世界動物保健機関)の動物福祉規約には、「意識がある又は生きた鳥が、熱湯処理タンクに入ることがないよう、あらゆる努力がなされること。」と強く強調されているし、多くの国で意識を失わせることなく首を斬り殺すことは違法な行為だ(宗教屠畜を除く)。
日本産鶏肉全体に疑問を持ってほしい。
さらには、食鳥処理場のずさんさが目につくかもしれないが、失敗の割合が少ない都道府県であっても屠殺数が多くなれば鶏の犠牲数はやはり必然的に増えていっている。消費の多さが鶏たちの苦しみを助長していることに間違いがない。
解決策は2つあり、両方の努力が必要だ。
一つは食鳥処理場がガススタニングに切り替えていくこと(失敗率が格段に低く、今ある方法の中で最も人道的、かつ労働者にもやさしい)。
もう一つは、消費量を減らしていくことだ。鶏肉は50年前の10倍まで消費量が上がっており、これをもとに戻していく必要がある。大量に動物を扱っていればミスがそれだけ多くなるのだから。
あなたにできることがある。行動してください。
*1食肉検査等情報還元調査