改善の兆しもなく、むしろ悪化しているのが日本の畜産現場。それが裏付ける統計=2020年度の食鳥処理場の検査結果の統計が半年遅れで公開された*。
2020年度、54万3372羽の肉用鶏と採卵鶏が、生きたまま熱湯処理され、熱傷死した。
どういうことかというと、屠殺の際に首を斬るのに失敗し、失血死できず、次の工程である熱湯処理に生きたまま進んでしまったということだ。これは単なる事故ではなく、防ぐことができる。つまり、鶏たちを人道的に扱おうという気持ちがあまりに小さいということだ。
他国では0件、または改善が急激に進んでいる。にもかかわらず、日本では、鶏を熱傷死させる数がここ数年増えているのだ!
アニマルライツセンターでは2018年からこの問題の改善を求めている。しかし、一向に変わらないどころか、悪化しているのだ。鶏肉にせよ卵にせよ、養鶏業界に改善する能力はないということのようだ。
2015年からの推移は以下の通り。
合計 | 肉用鶏 | 割合 | 採卵鶏 | 割合 | |
2020年度 | 543,372 | 321,636 | 0.044% | 221,736 | 0.260% |
2019年度 | 512,965 | 314,258 | 0.043% | 198,707 | 0.237% |
2018年度 | 508,406 | 296,297 | 0.042% | 212,109 | 0.247% |
2017年度 | 474,665 | 291,845 | 0.042% | 182,820 | 0.228% |
2016年度 | 498,892 | 346,354 | 0.050% | 152,538 | 0.228% |
2015年度 | 415,993 | 279,195 | 0.040% | 136,798 | 0.165% |
一目瞭然で、採卵鶏のほうが熱傷死させている割合が高いことがわかる。毎日卵を生まされ、その卵をすべて奪われ、養鶏業者と小売店や飲食店などに利益をもたらした鶏たちの最後が、これである。
動物虐待は犯罪だし、社会的にあってはならないことだ。動物虐待をする人やさせる人は、社会を暴力的にする。残念ながら、多くの人がその動物虐待に加担している。卵を食べている人、卵を買う人や、卵を売買する企業のことだ。
さて、ではどの県の卵が、どの県の肉が動物虐待をより多く行い、動物たちをよりひどく苦しめているのか。
採卵鶏の屠殺が最も雑で非人道的なのは、北海道だ。これはずっと続いている。相当意識が低いと言える。約100羽に1羽以上、生きたまま熱湯に入れて殺しているのだ。
鹿児島県、群馬県、静岡県、徳島県、沖縄県は2~300羽に1羽を茹で殺している。
肉用鶏を最も非人道的に、雑に殺しているのは、大阪府だ。次が沖縄県だ。
山口県と愛知県もひどい。
高知県、福岡県、広島県、愛知県、福島県、宮城県も割合が高い。
米国はこの生きたまま熱湯に入れられる問題がまだある国だ。しかし、日本とは全く異なり、着実に改善が進んでいる。
米国の生きたまま熱湯に入れられる割合は0.00469%であるが、日本はその14倍、0.0662%だ。その差はどんどん開いていっている。
改善のために、ガススタニングに切り替え、屠殺のフローの見直しがかけられている。日本はそのような動きがない。
OIE(世界動物保健機関)は以下のように明確にこの生きたまま茹で殺すことを禁止している。
第7.5.7条
意識がある又は生きた鳥が、熱湯処理タンクに入ることがないよう、あらゆる努力がなされること。
すべての動物は、両頚動脈の切開、又は両頚動脈が発生する血管の切開(胸部刺殺等)によって放血されること。ただし、使用するスタニング方式によって心停止が引き起こされた場合には、アニマルウェルフェアの観点からは、これらすべての血管の切開は必要とはされない。
作業者は放血の間中、動物を観察し、検査し、動物にアクセスことができるものとする。意識を回復する徴候を示す動物は、再びスタニングすること。
血管切開後は、少なくとも30秒間、又はいかなる場合であっても全脳幹反射が停止するまで、動物に対し熱湯処理又は加工処理を行わないこと。
あたりまえのことだ。なぜここまでするのか、なぜここまでひどいことが日々起きているのに、屠殺場のオーナーも現場の人々も無関心で居られるのか。
私達はなぜなのかという答えを知っている。意識が低く、乱暴で、動物に配慮する気持ちがなく、労働者自身も満たされておらず、すべてのしわ寄せが最も弱い動物に向いているからなのだ。そしてこの現状を、この社会に属する人々が許容しているからなのだ。声を上げない人が彼らの壮絶な苦しみを助長している。
今すぐに改善にとりかかり、また根本的解決としてガススタニングの導入を望む。国はそれを主導しなくてはならないし、経営者は自分のところの屠殺場の動物虐待をなくすための努力をしなくてはならない。現場の人々への教育、トレーニングを含め行うべきだ。そして動物福祉のための監視カメラもつけ、それがない限り、動物を丁寧に扱っているなんて言う詭弁を信じてはならない。
人が生きた動物を複数扱えば、そこには虐待が起きる。人間が直接動物たちに触れないで、システムとしてアニマルウェルフェアを担保する仕組みを望む。
*厚生労働省 食肉検査等情報還元調査