昨年アニマルライツセンターが保護し、途中で里親さんのもとに移住した大ちゃんを紹介します。大ちゃんはブロイラーです。もうひとり、少しだけお姉さんの福ちゃんと一緒に保護されました。二人合わせて大福です。
ブロイラーのメイの50日キャンペーンを見てくださった方はおわかりの通り、大福たちも異常な体格をしています。大福を見た誰もが、鶏だとは気がつかないほどです。
二人は血液検査をしました。ふたりとも数値は全て異常値、肝臓、筋肉の障害で数値が上がるGOT、筋肉の障害で上がるCPK、中性脂肪、腎不全などの疑いのあるカルシウム、血糖値、胆管の障害で上がるγ-GTPが異常に高い数値になり、一方で腸や肝臓腎臓疾患や腹水や胸水貯留などで下がるアルブミン、肝不全や飢餓状態で下がる尿素窒素が異常に低い状態でした。どこをどう治療できるのかもわかりません。とにかくカロリー制限をすることだけ。
日齢が上のふくちゃんは、より体重が重たく、7kgを超えていました。足は次第にガニ股になりつつあり、あるきにくそうに歩きます。大ちゃんはそうではありませんでしたが、成長しきった後ではやはり足が弱くなり歩いたり登ったりすることはつらそうです。
福ちゃんは好奇心旺盛で、初めての場所でも探索に余念がありません。大ちゃんに最初に寄り添っていったのも福ちゃんの方で、彼女が心を開いたからこそ、親友になったのだと感じます。社交的で人とのコミュニケーションも大好きで、抱っこも好きでした。
一方大ちゃんは扉があいていても、決して知らない場所に自分からはいこうとしません。まだ幼くて自我が発達しきっていないこともありましたが、怖いというよりも、とにかく用心深い行動をしており、よく考えてから行動するタイプです。
たとえ体格は異常でも鶏です。夕方暗くなれば家に戻り、寝床に入ります。家に来て1週間ほどして、砂浴びを大ちゃんがはじめ、それを真似して福ちゃんも砂浴びをはじめました。残念ながらとまり木は体がおもすぎて止まることができませんが、まだ若い大ちゃんは家に来た頃は自分の身長の高さは飛び上がることができました。
二人は寄り添い、体が大きすぎて届かないお尻についた汚れは、お互いに取り合っていました。大ちゃんが大好きな福ちゃん、福ちゃんに押されながらも福ちゃんに対して思いやりを見せる大ちゃん、二人の別れはすぐにやって来ました。
ブロイラーは、屠殺されなくても数週間後に死亡してしまうほど、不健康な体に作り変えられています。心臓発作などの突然死することが多いのですが、福ちゃんもこの犠牲になりました。ある朝、福ちゃんは朝ごはんを食べるためにベッドから降りてきたところで、倒れていました。まだ息はありましたが、数分の間に息を引き取りました。
一人になってしまった大ちゃんは、寂しそうでした。社会性の高い鶏にとって、一人ぼっちであることは辛いことですし、一緒に暮らし家族だと感じていた親友がいなくなると鶏も私達人間と同じように落ち込むのです。そして私達が見てきた鶏の多くは、次の親友をなかなか作ることをしません。私達人間も、誰かが死んでしまっても同じ関係になれる人はいません、代わりはいないのです。それと同じように、鶏も同じ関係になれる鶏は二度と表れないのです。
次の家族を作ってもらうために、以前バタリーケージから保護された鶏の歩ちゃんを迎えてくださった里親さんにお願いをして、大ちゃんは移住しました。福ちゃんのように寄り添いはしないけれど、良きパートナーになっています。
今はもうそのお家で2度めの夏を越しました。夏はブロイラーにとって生き残れるかどうかの試練。お腹が常に高温の熱を帯びてしまいます。冷房に当たりながらなんとか生き延びています。
里親さんに寄り添い、猫と先住鶏と寄り添い、幸せに暮らしています。でも、一体あと何年生きられるのか、、、私達はいつも不安です。
撮影:アニマルライツセンター、トップ写真撮影:Itsuka Yakumo