『ブロイラーの50日 メイの見た世界』は2020年8月にアニマルライツセンターが公式サイト上に公開した、50日間にわたる、国産鶏肉になるブロイラー飼育の刻銘な記録です。
それをもとに3分間のショートムービーを制作し、外部の映画祭等にこれから出品します。
イベントはまだ先の予定ですが、日本ではクリスマスシーズンに、フライドチキンを大量に購入して食べる慣習を持つ人がいるので、その鶏肉が生きていたときの苦悩を知っていただくため、イベントに先立ち公開することにしました。今回家庭で視聴する方もぜひ、機会があれば、上映会場の大きなスクリーンでも鑑賞していただきたいと思います。
鶏一羽一羽には、私たちと同じように個性があり感受性があります。
かれらは私たちと同じように苦しみます。でも現状、肉用に飼育されるブロイラーたちはモノのように扱われ、過酷な一生を過ごし、最後に殺されています。
かれらの一生をまずは知ってください。
そしてこの苦しみに終止符をうつために、私たち一人一人にできることを考えてみてもらえたら、と思います。
ブロイラーの飼育状態がわかることのメリットは、あまりよいとはいえない環境で育った鶏肉を食べて、大丈夫なのか。つまり食べる人間の側の健康にとって良いことなのか、という事を改めて考える意味があると思う。
という事はあるんだが、それを、まるでブロイラーの側から描いて、いかに彼らが非人道的なかわいそうな環境で育ったかを映画にしても、それは単なる演出に過ぎない。捕鯨禁止運動でも、牛の飼育の問題でも、いつもまるで擬人化されたような、かわいそうな命あるものの死を演出する人たちがいるが、それは本末転倒である。なぜなら、それを蝕する人たち(鯨を食べ、ブロイラーを食べ、牛を食べてきた人たち)にとって、それは重要な食料で有り、食文化でも有り、その部分の根本的に変える気がないなら、語っても意味がない内容だからだ。人間は共食いこそしないが(普通は)他の生物の命をいただいていきなければならない。そもそも、ブロイラーに関しては、その存在自体食べるためだけの生き物だ。だから、ブロイラーをかわいそうだと思うなら、まず、ブロイラーを開発したところに立ち返って考えるべきだし、鶏肉を食べる事によって栄養を確保している、人間そのものの生き方を変えなければならない。ブロイラーを否定するなら、皆が狩猟民族さながらに、野生の鳥を捕まえて食べなければならないが、そうすると、自然界の鳥が枯渇するだろう。それこそ自然破壊だ。
食べるために効率よく家畜として育つブロイラーを開発した事を否定するなら、食べない洗濯をするしかない。生き物で、食物でもあるものはありとあらゆるものがあり、ブロイラーだけ助けて、豚は助けないのでは公平性に欠けるので、つまりは人間は肉を食べられなくなる。
ブロイラーに限らず、例えば、「アヒル」という生き物は、アヒルであればどんな種類であれ、食べるために生まれてきているので、そもそも長く生きることすら出来ない。生きる手立てを失って生まれてきている。それが人類が選んできた道で有り、それをひっくり返すなら、よくよく先を見て考えてほしい。目の前のⅠ羽のブロイラーを哀れんでも、根本的な解決にはほど遠い。
アニマルウェルフェアの意味が、劣悪な環境で育つ家畜は、それを食する人間にも害をなすという意味の活動であればわかるが、そもそも家畜を、生きるための環境に置くのが正しいという考えは、そもそも間違っている。
ほんの50日しか生きられないブロイラーだが、それは殺されるから生きられないのではない。50日を過ぎて、60日、80日と過ぎたら、そのブロイラーは自力では生きられない。そもそも長く生きるように身体が出来ていない。ブロイラーはどの環境で生きてもブロイラーで有り、普通の鳥としての機能を持たない。50日より長く生きないようになっている。食べるために改良された鳥だからだ。
アニマルウェルフェアは、いったい何に対して、どこへ行こうとしているのか。まず人類にとって何を言わんとするのか、もう一度考えてほしい。
人間が一方的に背負わせた苦しみ。人間が創り出した地獄を知る事なく食べる人達は幸せなのだろうか。
アニマルウェルウェアは、人間の健康利益と、食べられる生物の幸福、その両方を追求する考え方です。
成長ホルモン剤や抗生物質漬けで、さらには劣悪な環境の中心身ともに病的な鳥の肉が、野生を逞しく生きる鳥の肉より健康に悪い可能性が高いことは、仮にエビデンスが十分でないにせよ、予測出来ることですよね。
食べられる生き物の生活環境を整えて可能な限り野生生物の生活に近づけてこそ、健康リスクが無く栄養価の高い良質な肉を生産できるのでは。
それにより価格が上がるのは当然ですが、あなたは健康リスクが高く栄養価の低い破格の肉と、その対極にある肉、どちらを選びますか。