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海外の「乳牛つなぎ飼い」規制-日本でよくある乳牛の繋ぎ飼い、ヨーロッパでは廃止への流れ

海外の「乳牛つなぎ飼い」規制-日本でよくある乳牛の繋ぎ飼い、ヨーロッパでは廃止への流れ

皆さんが消費する牛乳をつくっている酪農場の大半では、牛が施設内でほぼ常に縄やチェインなどに繋がれて左右向後の身動きができないでいると知っていますか?
日本の73%もの酪農場がつなぎ飼いを主な飼育方法としています。

日本で繋ぎ飼いされている乳牛 (ARCJ)
糞尿まみれの床からも離れられない牛たち(ARCJ)

もしあなたが毎日このように繋がれっぱなしで糞尿の上で生きていかなくてはならなかったら、どうでしょう?
日本はヨーロッパなどと違い、乳牛のつなぎ飼いに関して規制が全くありません。

ヨーロッパの規制と現状

デンマークでは1980年代には85%の牛がつなぎ飼いされていましたが、2020年までに禁止されます (*1,2)。

スウェーデンでは乳牛も肉牛も毎年4月から10月の間に120日間は24時間放牧させなくてはいけないという法律があります (*3)。

スイスでは2008年以降、つなぎ飼いの牛は2週間以上続けて屋内にいてはならず、夏には最低60日間、冬には30日間外に出さなくてはいけないという動物福祉条例があります (*4)。
さらにスイスの行政はRAUSというプログラムで乳牛1頭につき約21,000円の助成金を提供し、牛が一年に234日間以上は外で過ごす事を求めています。2014年の時点でスイスの88%もの酪農場がRAUSに参加していました。(*5)

オーストリアでも乳牛のつなぎ飼いの場合、年間90日は放牧させないといけないという規定があります (*6)。

英国では国の規約により、繋がれた牛は最低一日一回は繋ぎから解放されなくてはならないとされています (*7)。つなぎ飼いは減りつつあり、現在ではほんの0.3%ほどの乳牛しか繋がれていないと想定されています (*1)。

スイスでの乳牛の放牧 (swissmilk.ch)

法規制ではありませんが、オランダでは酪農部門を、次世代につなぐものとするために、政府、乳業、酪農家、その他研究機関などのあらゆる関係者が一体となって、持続可能性へのさまざまな取り組みを実施しており、「持続可能な酪農乳業チェーン」を取組目標としています。目標は2020年までに達成することを掲げており、アニマルウェルフェアと並び「放牧の維持」も目標となっています。そしてその目標は「2012年の放牧を維持:81.2%」となっています。オランダでは放牧を促す団体による大規模なキャンペーンが2017年にあり放牧が拡がったそうです。(*9)またオランダはEU で最も家畜密度が高いと言われていますが、80%以上の酪農家が年間120 日かつ1 日6 時間以上の放牧をさせる目標をほぼ達成しており、他国でも改善が進んでいるといいます(*10)。

EUではつなぎ飼いから下の写真の様なフリーバーンに施設を変換する為に、農村開発資金が設けけられています。
オーストリアのある州では2001年から2006年の5年間の間に13%の酪農場(3772件中480件)がこの資金を使ってフリーバーンに変えられました。ある酪農場では改良をしてから牛乳の生産量が40%増加し、牛乳の質も大幅に向上したと報告しました。(*8)

ヨーロッパでのフリーバーン (eurodairy.eu)

日本でも、動く自由を著しく制限する虐待的なつなぎ飼いが廃止されるように、このような酪農場の習慣を認めるのをやめましょう。

酪農家はフリーバーンやフリーストール、できるかぎり放牧への早急な移行をしてください。
そして消費者のみなさんは、消費・購買行動により、牛への虐待的飼育をなくせるよう力を貸してください。

牛乳を考え直そう

*1 https://www.theguardian.com/environment/2018/dec/08/its-medieval-why-some-cows-are-still-living-most-of-their-lives-tied-up
*2 https://www.eurogroupforanimals.org/wp-content/uploads/Report-on-welfare-of-EU-dairy-cows-2015-final-1.pdf

*3 Swedish Board of Agriculture, 2017
*4 https://www.mdpi.com/2077-0472/9/1/3/pdf
*5 Agroscope. Zentrale Auswertung von Buchhaltungsdaten Grundlagenbericht 2003–2014; Agroscope: Ettenhausen, Switzerland, 2004–2015.
*6 http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/overview_reports/act_getPDF.cfm?PDF_ID=1139
*7 https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/69368/pb7949-cattle-code-030407.pdf
*8 ec.europa.eu/food/audits-analysis/act_getPDF.cfm?PDF_ID=13008
*9 エーリック海外情報 畜産の情報  2020年1月号 オランダ酪農乳業の現状と持続可能性(サステナビリティ)への取組み~EU最大の乳製品輸出国の動向~
*10 「日本におけるアニマルウェルフェア牛乳の展開と可能性 -共同購入グループのアンケート調査結果も含めた考察-」
フードシステム研究第27 巻4号 2021. 3日本獣医生命科学大学 植木 美希・桑原 考史 東京都産業労働局農林水産部 山田 直登

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