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2020年 改善されない鶏の屠殺場の「夜間放置」 養鶏会社の対応

2020年 改善されない鶏の屠殺場の「夜間放置」 養鶏会社の対応

(2021年2月4日更新 2020年10月~12月に質問を出した養鶏企業からの回答を追記)

アニマルライツセンターは2018年から採卵鶏の長期保管の問題に取り組んできた。採卵鶏はブロイラー(肉用鶏)とは違い、食鳥処理場(鶏の屠殺場)に搬入されてから屠殺されるまで、夜間にわたる長期の保管が行われているからだ。

水も餌もなく、不衛生で、頭をもたげることもできない狭いケージの中での長時間にわたる保管は、アニマルウェルフェア上の大きな問題がある。この問題は国会でも取り上げられ、2018年3月26日、省庁から改善を促す通知が出された。
だがその後もアニマルライツセンターの調査では状況が改善されていないことが確認されたため、再度国会でこの問題について取り上げてもらったところ、2018年8月、厚生労働省により実態調査が行われる運びとなった。
その調査結果が2018年11月に公表され、それによると食鳥処理場で、約半分が12時間以上保管されていることが分かった。この保管時間に輸送時間は含まれていないので実際にカゴに収容されている時間はこれよりさらに長い。本調査では輸送時間含めて最大で4日間もカゴに収容されているケースも明らかになった。

保管時間ロット数
3時間以内87
3時間超6時間以内13
6時間超12時間以内12
12時間超24時間以内71
24時間超48時間以内25
48時間超72時間以内3
72時間超2
不明5
合計218

この調査を受けて2018年11月15日に周知の事務連絡、及び2019年3月にも再度改善を求める通知が出された。

だがそれで状況は改善されただろうか?

状況は改善されたか

アニマルライツセンタは2019年3月に通知が出されてからも、単発的に食鳥処理場の調査を行った。その結果、1施設をのぞいて夜間放置(前日搬入翌日屠殺)があったという状況だった。

A施設:2019年11月14日 夜間放置有

B施設:2019年11月14日 夜間放置有

C施設:2019年8月21日、2019年12月26日 夜間放置有

D施設:2019年8月21日 2019年12月26日 夜間放置有

E施設:2019年12月26日 夜間放置有

F施設:2019年12月26日 夜間放置なし

2020年調査

単発の視察では状況がつかみづらいため、2020年に入ってからは手分けして3施設の保管状況を調査することにした。結果は次のとおりだった。
*赤色は休日*時間は17時前後。休業日は昼過ぎ。

G施設

曜日保管の有無
202039
2020310
2020311
2020312
2020313
2020314×
2020315
2020316
2020317
2020318
2020319×
2020320金(祝)
2020321
2020322
2020323
2020324
2020325

結果をみると、翌日が営業日であれば、どの日も夜間にわたる保管ありという状況になっている。さらに3月21日は翌日が休業であるにもかかわらず搬入されており、鶏は翌々日までカゴの中で屠殺を待たなければならない状況だった。

H施設

曜日保管の有無
202038
202039
2020310
2020311
2020312
2020313×
2020314×
2020315
2020316
2020317
2020318
2020319×
2020320金(祝)×
2020321×
2020322
2020323
2020324

H施設も、翌日が営業日であれば、どの日も夜間にわたる保管ありという状況になっている。

I施設

曜日保管の有無
2020312
2020313×
2020314×
2020315
2020316
2020317
2020318
2020319
2020320金(祝)
2020321×
2020322×
2020323
2020324
2020325
2020326

I施設は、3月22日を除き、翌日営業日であれば、どの日も夜間にわたる保管ありと言う状況だった。

これらの結果を見る限り、食鳥処理場で長期保管を起こさせない配慮はみられない。採卵鶏処理場はブロイラー処理場に比べて圧倒的に少ないという物理的な要因(ブロイラー屠殺場110施設に対して、採卵鶏屠殺場は31施設)はあるだろう。だがブロイラーでは長期保管の問題は発生していない。ブロイラーの屠殺数が年間6億羽に対して採卵鶏が1億羽と言うことを考えると、もう少し改善はできるはずだと思う。

養鶏企業は、長期保管にどう対応しているのか

大手7社の対応

厚生労働省がおこなった実態調査をみると、長期保管が発生する大きな要因として「養鶏場側の協力が得にくい」ということが挙げられてる。食鳥処理場側は養鶏場側に鶏を出してもらう立場のため、養鶏場側に意見を言いにくいという実態もある。さらに、採卵鶏屠殺場が31施設しかなく長距離運転を強いられ(片道6時間かかることも珍しくない)、農場の大規模化が進んで一度の出荷羽数が数万と言う実態を考えると、確かに食鳥処理場だけの努力では長期保管を避けることは難しいだろう。

アニマルライツセンターは2020年に入ってからも長期保管が続いているという実態をうけて、大手の養鶏企業7社に、同年5月に長期保管を避けるための取り組みを行っているかどうかを確認した。

A社:長時間保管しなくてもいいような仕組みを確立している

B社:長期保管を避けるために、食鳥処理場側に協力する体制(出荷日調整)ができている。出荷予定日の一週間前までは対応が可能。

C社:長期保管を避けるために、食鳥処理場側に協力する体制ができている。ただしC社は出荷日調整に対応できるのは出荷予定日の3ヵ月前までだとのこと。成鶏更新が発動した場合など、3ヵ月前では長期保管を避けるのは難しいと思われるため、C社にもっと柔軟な対応ができないのか確認中。

JA全農たまご株式会社(多くの生産農家の卵を扱っている):コンプライアンスを遵守しているという回答のみで、長期保管をしない取り組みをしているのか、また、生産農家に長期保管を避けるようお願いしてもらえないかとの問いにはノーコメントであった。

伊藤忠飼料株式会社・株式会社八千代ポートリー・株式会社アキタフーズ:回答をいただけなかった。

少なくとも大手養鶏企業のうち3社は、アニマルウェルフェアの意識を持っていたり、食鳥処理場側へ協力するという考えであった。だが残る4社は明確な回答が得られなかったり、催促しても回答が得られないという状況だった。

その他の養鶏会社の対応

2020年10月~12月、上記の7社以外の、国内の138の採卵養鶏会社へ、長期保管についての質問を送った。回答をいただけたのは14社。

 長期保管の状況について、採卵養鶏場の回答
1食鳥処理場に到着後、鶏がどうなっているか分からない。
2長期保管になっているか確認し、年間計画に問題があれば処理場と対応策を考えていく。
3長期保管ではないと思っている。
4省庁から改善を促す通知が出た後、食鳥処理場での保管時間は全体に短縮されたが、それでもすべての鶏は、食鳥処理場に到着した翌日以降に屠殺されている(当日屠殺はない)。農場から食鳥処理場まで片道六時間かかるため、当日屠殺には間に合わない。
5朝、輸送業者が取りに来て、当日食鳥処理。遅くても翌日には食鳥処理する。
6出荷当日か、翌日の朝に食鳥処理。
7長期保管にはなっていないと思う。
8おそらく問題ないと思う。
9当日輸送業者に出して、当日に処理が食鳥処理が終わっていると食鳥処理場から聞いている。
10長期保管の問題は生じていないと考えている。
11出荷したその日のうちに処理をされるという認識でいるが、他の大手農場などと同じ日になってしまった場合はどうなのか把握できていない。実際のところは分からない。
12出荷したその日に食鳥処理されているものと思っていたが、今回の問い合わせでもしかしたらそうではないかもしれないとも思っている。

13

出荷した当日、3時間以内に食鳥処理が完了していると食鳥処理場に確認している。

14食鳥処理場に任せている。

回答をいただけたのは主に中小の採卵養鶏会社からだったが、4と13の会社のみ明確な回答で、他は、自社農場から鶏が出て行った後のことを明確に把握していないという回答であった。省庁から改善を促す通知が出されたことを知らないという会社もあった。また、残りの124の会社については回答はいただけなかった。

省庁からの改善を促す第1回の通知が出されてから2年が経過しているが、問題意識は薄い。

農林水産省・厚生労働省への要望

2020年7月、アニマルライツセンターは農林水産省と厚生労働省(厚生労働省は食鳥処理場を所管)に面談し、2020年5月の食鳥処理場の調査結果を知らせ、改善を求めた。

消費者の皆さまへのお願い

消費者の皆さまにはお願いがある。まずは卵の消費量を抑えてほしい(卵を平飼いに変えてもこの問題は解決しない)。可能なら食べるのを止めるという選択をしてほしい(止めても栄養学的には問題はない)。
長期保管が続く根本的な原因は鶏の数が多すぎることだ。日本人の一人当たり卵消費量は世界2位。一人当たり年間337個もの卵を消費していている。これをもし、一人週に一個程度に抑えたなら、飼育される鶏の羽数は減り、長期保管される鶏の苦しみが減ることは間違いない。

もう一つは、関係省庁への意見だ。各省庁(厚生労働省、農林水産省、環境省)が改善促す通知を出してから2年以上が経過している。国民として、アニマルウェルフェアを著しく損なう状況がこれ以上続かないよう、改善を促してほしい。

 

環境省
※分野は「7.自然環境・自然公園」です
https://www.env.go.jp/moemail/

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/form/pub/mhlw01/getmail

農林水産省
https://www.contactus.maff.go.jp/voice/sogo.html

二晩にわたって食鳥処理場に保管される鶏。

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