植物性代替卵の市場は、代替ミルクや代替肉市場と比べると、シェアはまだ小さいものの、確実に成長している市場の一つで、卵企業の驚異になりつつあります18。
世界の「卵代替食材市場 調査レポート2020-2026」11によると、世界の卵代替原料の市場規模予測は、2021 年から 2026 年の CAGR (年平均成長率)が4.7%、2020年の13億3960万ドルから 2026 年までに17億6450万ドルに達すると予測されています。別の予測では、2026 年までに 21 億米ドルに成長するというものもあります12。
アメリカでの代替卵市場においては、2019年から2020年にかけて約2.7倍に成長しています10。
多くの企業が代替卵市場に参入していますが、主要なプレーヤーには次のような企業があります11 12。
代替卵市場拡大の背景には次のような理由があります。
ケロッグの一部門であるMorningstar Farmsは、年間3億を超える卵白の使用を削減し2021年までに100%植物性へ移行すると発表。同社は「卵生産に関連する廃水、土地利用、炭素排出量の削減のために」と言っています4。
スパゲティで有名なバリラは、2016年から20年にかけて卵の使用を8%削減。これにより温室効果ガスの排出量を削減するともに、35万羽以上の産卵鶏を解放することになりました。さらに同社は卵不使用あるいや卵使用が少ないビスケットシリーズや、100%植物ベースのタンパク質を含むパスタシリーズの販売を開始。バリラは3つのブランドでカーボンオフセットを達成しています17
2021年1月、中国のファストフード ディコスは、2000店舗のうち500店舗で、卵の代わりに「代替卵」の使用を開始。朝食メニューを含む7つのメニューで自動的に代替卵となります8。
2021年、ブラジルの食品メーカー、CeliVitaは2025年までに卵の使用を完全に停止するというコミットメントを発表。同社の製品はブラジルの300店舗で購入することができます16。
2021年6月、マヨネーズで有名なキユーピーが国内初の代替卵商品を発表。同社のニュースリリースには、「健康志向の高まりと地球環境への配慮の観点などから、プラントベースフードへの関心が高まっています」「今後も卵代替食品を中心にプラントベースフードのラインアップを拡充」と書かれています。
2021年6月10日テレビで取り上げられたキューピーの代替卵
続いて、ネクストミートも代替卵の販売を決定
2021年6月30日には、代替肉のネクストミーツも代替卵(植物性鶏卵)「NEXT EGG 1.0」の商品化が決定。動物性不使用で作るタマゴをBtoBで日本先行販売、BtoCにも展開予定
さらに、2021年10月、スイス食品大手ネスレが、植物原料とした卵とエビの代替食品を発売すると発表しています。
ネスレ、植物由来の卵とエビ代替食品発売へ ビーガン市場での展開拡大
2011年に設立されたHampton Creek(現Eat Just社)は、動物工場より持続可能で人道的で安価な食品という考えから設立された、米国の食品技術会社で、もっとも有名な植物性代替卵の先駆者だ。
設立からわずか 4 年間で、多くの大口顧客を引き付けた。その中には、米国とイギリスの学校や病院に年間 40 億食以上の食事を提供する世界的なケータリング会社である Compass Groupやコンビニエンスストアのセブンイレブンが含まれる。14。
同社の2020年レポートには次のような記載がある。
「私たちの使命は大きい。なぜならそれはやらなければならないことだからです。 私たちの地球は気候の非常事態にあり、悪化しています。 世界の人口は 2050 年までに 100 億人近くに達すると予想されており、世界を養うための現在のモデル — 森林を破壊して耕作可能な土地を獲得し、海の魚やシーフードを枯渇させ、動物を小さなケージに閉じ込め、中毒性のあるジャンクフードを押し出す —これは間違っているだけでなく、機能しないものでもあります。 私たちの食糧システムは気候変動を加速させ、気候変動は作物の損失を加速させています。 この悪循環は、私たちが力を合わせれば断ち切ることができるものです」
「消費者は、私たちの食品の多くがどのように作られているか、または企業が食品に詰め込む材料を見たがりません。そのことは私たちが中毒的にもっと購入することにつながっています。私たちの多くは、私たちの食事を可能にしている動物の監禁や危険な屠殺場についてさえ考えないようにしています。」として、食品製造プロセスの透明化が重要だといっている。(同社は自社の植物性食品の製造プロセスを明確に公開している)
※太字はアニマルライツセンターが強調
EatJust-ImpactReport-2020.pdf
2019年、Eat Just社は、ドイツの家禽大手PHW Groupとヨーロッパで販売提携することを発表2。
2020年には、グローバルフードサービスであるSodexoともパートナーシップを結んだ。Sodexoは、Eat Just社の代替卵について「コレステロールフリー、非GMOであり、多くの動物性タンパク質と同じくらい多くのタンパク質が詰め込まれています。卵のように調理して味わいながら、その成分は従来の動物性よりも98%少ない水、83%少ない土地、そして93%少ないCO2e(二酸化炭素換算)を排出します」と述べている3。
2020年10月、Eat Just社はシンガポールにアジア初拠点となる工場を建設。グローバル展開を目指していることが伺える6。さらに2021年5月、年末までに代替卵をヨーロッパ全土で発売する予定だと発表9。同社は中東地域でも肉と卵の両方の代替製品の製造と流通に取り組んでいる。Eat Just in the Middle East: Firm unveils plant-based egg and cultivated meat growth strategy – Exclusive CEO interview
同社の事業は代替卵だけではない。2020年12月、同社はシンガポール食品庁は、Eat Just社の培養鶏肉を承認。12月18日から販売開始7。 これは世界初となる。
ちなみに、Eat Just社の設立者の一人であるJosh Balkは、食肉処理場や工場畜産の覆面調査員として働き、工場畜産反対キャンペーンを展開したあと、HSUS(アメリカの動物保護団体)の副社長で畜産動物保護を担当している人物でもある。
次に、代替卵市場に参入しているその他の企業のいくつかを紹介します。
Cargill社は、穀物メジャーで、畜産動物の飼料から食品加工まで様々な事業を展開する巨大なコングロマリッドですが、代替卵だけでなく、代替肉、代替乳と植物性代替品を近年拡大しています1。同社は卵の代替として、C☆EmTex, Emulpur deoiled lecithin, Lecigran deoiled lecithin, Lecimulthin deoiled lecithin, C☆CreamTex, C☆StabiTex, SimPure 99500, Prolia Soy Flour, Gelogen, Vitex, Egg Beatersなどの原料を提供しています13。
同社は「持続可能な卵の供給への取り組み」として、「私たちは要求に応じて動物性原料 (乳製品や卵など) を植物ベースの代替品に置き換えます。 これをサポートするために、すでにさまざまなソリューションを開発しています。たとえば、液卵の代替品である Sunset Glaze が含まれます。 2019 年には、約 2 億 5,000 万個の卵に相当する量を販売しました。これは、年間 1,000,000 羽の鶏の生産に匹敵します」 Responsible sourcing
同社は全卵代替品としてBLUE100(大豆ベース)を販売しています。同社によるとこのBLUE100は、
インドでは二人のヴィーガンが立ち上げたスタートアップのEvo Foodsが、植物性代替卵を製造。「コレステロール、抗生物質、動物虐待のないインド初の100%植物由来の液体卵を開発した」「従来からの卵の味、食感、タンパク質含有量を効果的に模倣している。」と報じられています5。※太字はアニマルライツセンターが強調
2021年6月には、3Dプリンター肉を開発するイスラエル企業SavorEatが、代替卵に特化した新しいスタートアップEgg’n’up立ち上げを発表。Egg’n’upはSavorEatの独自技術であるセルロース繊維を原料に代替卵を開発しており、年内に最初の商品を販売する予定10。
卵黄・卵白に分かれた植物ベースの全卵を開発するシンガポールのFloat Foods。2021年にシードラウンドで220万シンガポールドル(約1億8000万円)を調達した。同社は今年3月にもシンガポールの政府系投資会社テマセクから助成金を受けている。卵黄・卵白に分かれた植物ベースの全卵を開発するFloat Foodsが約1億8000万円を調達 2021/6/9
黄身と白身が分かれたタイプの代替卵に取り組む企業も増えている。YO-Eggもその一つ。特許出願中の独自の成分を使用して、黄身と白身に分かれた100%植物性の代替卵を開発している イスラエルのYO-Eggが黄身と白身に分かれた代替卵を開発 FOOVO
紹介した企業はほんの一部です。いま、代替卵に大手企業が次々と参入し、スタートアップが続々と出てきている状況にあります。持続可能な社会へ向けて世界が動いている今、この動きはますます加速するだろうと考えられます。
植物性代替食品のプラットフォームであるEat Beyondのポートフォリオ企業のNabati Foods。同社はカナダ、米国、オーストラリアで新しい植物ベースの液体卵製品であるNabati Plant Eggzの特許を取得。ヨーロッパと中国で申請中です
New plant-based liquid egg patented
↓日本人の約7割が知らない、卵の生産プロセス↓
1 Cargill scales up European plant-based portfolio with pea protein addition
2 Feb 13, 2019 JUST Egg partners with PHW Group for distribution
3 JUST & Sodexo Partner on a Breakfast Solution for a Better Tomorrow February 06, 2020
4 MorningStar Farms® Announces 100 Percent Plant Based Commitment, Introduces Vegan Cheezeburger
5 2人のインド人ヴィーガンが立ち上げた、植物由来代替卵スタートアップEvo Foods Tech in Asia 2020.08.14
6 Eat Just partners with Proterra to launch a new subsidiary in Asia
7 Singapore issues first regulatory approval for lab-grown meat to Eat Just PUBLISHED TUE, DEC 1 2020
8 01-08-21WORLD CHANGING IDEAS This Chinese fast-food chain is swapping almost all its eggs for plant-based alternatives
9 May 14, 2021 Plans to launch vegan eggs in Europe this year
10 3Dプリンター肉のSavorEatが代替卵に特化したスタートアップEgg’n’upを設立 2021/6
11 Egg Replacement Ingredients Market Size, Share 2021|Major Key Players Analysis by Global Industry Trends, In-depth Research Covers COVID-19 Impact on Growth Insights and Future Forecast to 2026 Published: June 8, 2021
12 Global Egg Replacement Ingredients Market is Expected to Reach 2.1 Billion by 2026 : Fior Markets January 21, 2020
13Global Egg Replacement Ingredients Market 2019-2023 | Evolving Opportunities with Archer Daniels Midland & Cargill | Technavio
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