独立行政法人 家畜改良センターの岡崎牧場で鶏のバタリーケージ飼育が行われています。同センターのサイトによると、成鶏鶏舎は「単飼ケージ鶏舎17棟」があり、「成鶏舎では、1ケージ当たり1羽の収容」となっているそうです。
同センターのサイトには単飼ケージの写真が掲載されており、巣も砂場も止まり木も何もない、かなり狭いケージであることが分かります。かろうじて方向転換ができるサイズです。
飼養羽数は明確ではありませんが、このような飼育方法に驚いて同センターに問い合わせた市民によると、成鶏羽数は2万羽とのことです。
独立行政法人では、国が所要の予算上の手当を行うことを原則としており、家畜改良センターも運営交付金を受け取っています。2017年度の運営交付金は58億9002万4399円。きわめて公共的な性格を有する機関です。
そのような機関で、各国が法律で禁止あるいは大手企業が自主的に廃止していっているバタリーケージ飼育が行われていることは問題です。
鶏のバタリーケージ飼育は、国際基準である五つの自由にも反する飼育方法です。日本も批准するOIE(世界動物保健機関)の陸生動物衛生規約の第7-1章にも五つの自由に言及しています。
五つの自由のうちのひとつは
「正常な行動パターンを発現する自由」
です。巣も砂場も止まり木もない、羽根を拡げることさえできないバタリーケージでは、鶏は本来の正常な行動を発現することは何一つできません。
私たちは同センターの岡崎牧場に次の質問書を送りました。
2018年8月4日
独立行政法人家畜改良センター岡崎牧場 御中
わたしたちアニマルライツセンターは人と動物との穏やかな共存を目指して様々な提案活動を行う認定NPO法人です。
このたび貴センター岡崎牧場における鶏の飼育方法について懸念する声が複数の市民から寄せられたため、市民を代表して鶏保護の観点から下記のとおり質問いたします。・岡崎牧場のサイトに( http://www.nlbc.go.jp/okazaki/gyoumu/hoyukei/seikei.html )「岡崎牧場の成鶏鶏舎は19棟あります。内訳は、単飼ケージ鶏舎16棟、群飼ケージ鶏舎3棟です」と記載されていますが、成鶏鶏舎の単飼ケージ、群飼ケージごとの鶏の羽数を教えてください。
・単飼ケージ、群飼ケージそれぞれのサイズ(間口、奥行、高さ)を教えてください
・群飼ケージの場合、一つのケージへの収容羽数を教えてください
・単飼ケージ、群飼ケージそれぞれについて、止まり木、砂場(あるいはその代替品)、巣の設置の有無を教えてください
・嘴の切断の有無について教えてください。行っている場合はその方法について教えてください
・鶏の淘汰方法について教えてください
以上です。
鶏のケージ飼育についての市民の関心は日々高まっていると感じられます。当法人の実施した畜産動物に関する認知度調査でも、鶏のケージ飼育についての認知度は他と比較して高いものとなっています。
2018年 畜産動物に関する認知度調査
https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/2018survey/ご多忙中大変恐れ入りますが、書面(郵便またはFAX)あるいは電子メール(宛先 アニマルライツセンター事務局:animalrightscenter@arcj.org)までご連絡いただければ幸甚です。
ご回答の有無、またいただきましたご回答については当法人のウェブサイトで公表させていただくことがございますので、恐縮ですがご了承ください。——
〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町12-3ニュー渋谷コーポラス1009
認定NPO法人アニマルライツセンター事務局
これに対して次の回答をいただきました。
2018年8月24日
アニマルライツセンター事務局 御中
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
8月4日付けの貴法人からのご質問書について、以下のとおり回答申し上げますので、よろしくお願いいたします。
独立行政法人家畜改良センターは、我が国における畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを目的とし、家畜の育種改良、遺伝資源の保存、飼養管理技術の改善に取り組む中、岡崎牧場では採卵鶏の育種改良を進めてきました。
岡崎牧場の鶏の飼養管理業務に携わる職員は、アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に基づき、かつ、日頃から獣医師を始めとする専門家のアドバイスも受けながら、病気の発生予防のみならず、鶏の生理や行動様式を考慮し、問題行動を抑制しつつ、鶏の快適性を高めるための飼養管理に取り組むなど、我が国の衛生基準やアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に即した飼養管理の徹底に取り組んできました。
具体的には、鶏の病気や事故の発生の有無等の健康状態に関する観察と記録、異常鶏の早期発見・治療、毎日新鮮で飲用に適した水の十分な給与、鶏の怪我を未然に防止するための施設の破損箇所の修理等の様々な取組を通じて、適正な飼養管理の徹底を図っているところです。
岡崎牧場としては引き続き、我が国におけるアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理を徹底すべく必要な取組を講じていきますが、そのためには、当場の鶏の飼養管理に携わる職員1人1人が日頃から意識し、実践していくことが重要であると考えています。
(以上)
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独立行政法人 家畜改良センター 岡崎牧場
残念ながらいただいた回答では正確な実態を把握することができませんでした。これに対して再度質問書を送りました。
2018年8月25日
独立行政法人 家畜改良センター 岡崎牧場 御中
お世話になっております。
お忙しい中ご対応ありがとうございます。私どもは、アニマルウェルフェアにおいて重要なのは、鶏の習性や生態を考慮した科学的な数値基準や設備の設置であると考えています。
そのため貴牧場における設備仕様について質問を差し上げました。8/4付の質問に対するご回答をいただけなかったため、貴牧場の全体をつかむことができかねますが、
市民からの通報、貴牧場のサイトに掲載の写真などから、単飼ケージのほうはいわゆるバタリーケージで羽を広げることもできないサイズであることが分かります。貴牧場もご存知の通り、諸外国ではケージ飼育廃止の動きが加速しており、日本でもNHKはじめ様々なメディアがこの問題を取り上げるようになっています。国内でも昨年20万規模のケージフリー鶏舎が建設されるなど、民間においても取り組みが始まっています。
ケージ飼育について、下記のとおり質問いたします。
・貴牧場におかれまして、ケージフリーへ向けた取り組みは何かございますでしょうか?
再々恐れ入りますが、書面(郵便またはFAX)あるいは電子メール(宛先 アニマルライツセンター事務局:animalrightscenter@arcj.org)にてご返信いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
ご回答の有無、またいただきましたご回答については当法人のウェブサイトで公表させていただくことがございますので、予めご了承ください。
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〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町12-3ニュー渋谷コーポラス1009
認定NPO法人アニマルライツセンター事務局
以下、同センターからの回答
2018年8月29日
アニマルライツセンター事務局 御中
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
8月25日付けの貴法人からのご質問書について、以下のとおり回答申し上げますので、よろしくお願いいたします。
『当場は育種改良を行っているため、1羽ごとの産卵率等の能力を把握する必要があることから、個体管理ができないケージフリーでの飼養は当場には不適当と考えますが、引き続き、アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に基づき、かつ、日頃から獣医師を始めとする専門家のアドバイスも受けながら、病気の発生予防のみならず、鶏の生理や行動様式を考慮し、問題行動を抑制しつつ、鶏の快適性を高めるための飼養管理に取り組むなど、我が国の衛生基準やアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に即した飼養管理の徹底に取り組んで参ります。』
(以上)
個体管理に拘束飼育は必然ではありません。私たちは、同センターにケージ飼育の廃止を申し入れしました。
2018年9月1日
独立行政法人 家畜改良センター 岡崎牧場 御中
お世話になっております。
お忙しい中、何度もご対応ありがとうございます。>当場は育種改良を行っているため、1羽ごとの産卵率等の能力を把握する必要があることから、個体管理ができないケージフリーでの飼養は当場には不適当と考えます
とのことですが、育種改良には必ずもケージ飼育である必要はないものと考えますがいかがでしょうか?
またケージ飼育である場合でも、貴牧場のようなバタリーケージである必要はあるのでしょうか?レイヤーの育種改良大手、ドイツのローマン社もケージ飼育にこだわっていないようです。
https://www.ltz.de/en/research/index.phpドイツはそもそもバタリーケージが禁止のため、バタリーケージでの育種はおこなっていないはずです。(ドイツは2025年にはケージ飼育そのものが禁止になります)
ケージでなくとも個体管理は可能なはずです。
それ以前に、どのような理由であっても、動物への虐待を正当化することはできません。
産業用の鶏も「動物の愛護及び管理に関する法律」の対象動物ですが、同法二条には次の記載があります。
二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
2 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。貴牧場において「その動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保」が行われていると言えるでしょうか。
以上のことから貴牧場に次のとおり要望いたします。
・貴牧場における鶏のケージ飼育の廃止
以上、当法人の要望につきまして、
再々恐れ入りますが、書面(郵便またはFAX)あるいは電子メール(宛先
アニマルライツセンター事務局:animalrightscenter@arcj.org)にて9月11日(火)までにご返信いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。ご回答の有無、またいただきましたご回答については当法人のウェブサイトで公表させていただくことがございますので、予めご了承ください。
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〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町12-3ニュー渋谷コーポラス1009
認定NPO法人アニマルライツセンター事務局
これについて、現時点(2018年9月19日)で回答をいただけていない状況です。
家畜改良センター岡崎牧場は「アニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理に関する検討会」(採卵鶏分科会)の委員としても加わっており、「養鶏におけるアニマルウェルフェア(AW)の海外動向」について講演会も行っています。ケージ飼育の問題について決して無関心ではないはずです。
ぜひ皆様からもケージ飼育を廃止していただけるよう、声を届けてください。
家畜改良センター岡崎牧場
http://www.nlbc.go.jp/okazaki/
(「お問い合わせ」からメールもできます)