2018年にバタリーケージで淘汰(殺害)されるところをレスキューされた2羽の鶏、希(のぞみ)と歩(あゆみ)を、動物病院で診察してもらいました。
ひどかったのは希の状態でした。保護されてから時間が経っていますが回復が遅く、鬱々とし、引きこもりがちです。
希ちゃんのレントゲンには、根本から足が折れ、折れた骨がいびつにつながってしまっている様子がわかります。
すでに骨が再生してつながっていしまっているため、治療をする場合は、骨を再度折る必要がありました。このままにしても片足で立ち、歩く可能性はあります。アニマルライツセンターと里親さんで話し合い、また骨を折り、少なからず痛みを与えるより、他の立てなかった鶏たちが数カ月後に経って歩いてきた実績を重視してこのまま様子をみることにしました。
この骨折をしたときの痛みを、どうか想像してみてください。
身動きが取れないケージの中、ケージの隙間に挟まり足を根本から折れ、治療もされず、痛みにただたえるだけ、そして立てなくなったことが人間に気が付かれれば殺されるのです。
出回っているケージシステムは、それぞれ高価で1棟の養鶏場を立てるために数億~十数億円が必要です。そんなに高価であっても、それは鶏の安全を担保するものでは決してありません。ただ人間が楽をして、掃除をできるだけ少なくし、それでいて卵を大量に回収することだけを目的に設計されています。脚や首がさまざまな隙間に挟まり、動けなくなっています。そのまま餓死することもあります。掃除をしないことが前提であるため不潔でホコリと糞がたまり、人から見えない場所に鶏を吸血するダニが巣を作ります。
ケージの中では、アニマルウェルフェアはおろか、鶏たちの安全は全く担保されません。
低カルシウム血症の痕跡は歩にも希にもありました。
彼女たちは自分のカルシウムと栄養素を毎日毎日大きな卵に吸い取られるように、品種改変されてきました。だからこそ骨折もしやすいのです。
まだカルシウム不足の状態であるにもかかわらず、2羽とも卵を生み始めてしまっています。栄養を制限するようにとアドバイスをいただきましたが、それでも産んでしまうのです。
歩は立ち上がり、今はもう歩けるようになりました。外に出て自分の行きたい場所に行けるようになっています。
希も保護された当初はうずくまり続けるだけでしたが、這ってエサまでたどり着くようになっています。
寒い今の時期は、小屋に安全な温水ヒーターを常時をいれてくれており、歩はその直ぐ側を陣取って眠っています。
2羽とも、かさかさで白みがかったとさかは赤々としてきています。
あとは希が自由に自分の足で歩けるようになることを、みなさんも応援してください。
そして、1億7千万羽の鶏が国内でこんな苦しみを今も味わっています、どうか、卵と卵が入った加工製品から、距離をおいてください。
卵なしで生活するのは全く難しいことではないのですから・・・
(自力で5m×5mの囲いの端っこまでたどりついた歩:2019年1月1日)
(お膝に抱かれるのがすきな希)