OIE(世界動物保健機関)で策定中の採卵鶏の動物福祉規約、3回目の案が出され、それに対して各国が意見をだし、2020年5月に採択される予定だ。2019年12月末~1月にかけて日本もOIE連絡協議会という委員会を開いた後、コメントをOIEに提出した。
各委員の意見はこちらから知ってもらうことが出来るが、政府のコメントがこれら委員の意見をまるっとなかったことにしたような、アニマルウェルフェアを否定するような意見を出した。
日本政府が出したコメントを簡単に説明すると、
となっている。さらにこれらの理由の中には、砂浴びや鶏が移動することがないケージのほうが鶏がバタバタしないから空気がマシで人の労働には優れているとする論文までつけた。まるで平飼いが労働には適していないかのように・・・。この論文には高機能のマスクをすることにより影響はほぼないと書かれているし、アニマルウェルフェアには関係がないが、OIEがどう判断するのか私達にはわからない。とまり木など適切に設置できる技術がない日本の養鶏業に配慮して、低くする可能性は大いにあるだろう。
どう読んでも、何度読んでも、アニマルウェルフェアそのものとアニマルウェルフェアを推進する意義も理解していないことと、バタリーケージを推進したい意図が隠しきれていない。
この超ネガティブなコメントから受ける印象は、「日本の養鶏は遅れているんだな」「世界が要求するレベルに、農家が追いつくことができないんだな」という印象だ。前回2回めの案が示された際に出した日本コメントも、「日本が反対したからレベルが下がった」というような評判が立った。おそらく今回もそうなるのだろう。
私達は日本のアニマルウェルフェアの遅れを世界に訴え、アニマルウェルフェアのレベルを引き上げようと活動をしているが、そんなことをしなくても日本政府がそれを自らやってくれている。日本の卵は世界レベル、または世界が求めるレベルには届かないと勝手に宣言してくれるのだ。
欧米は日本からの食品や日本産のものを購入する機会は車以外あまりないだろうが、アジアはそうではない。卵は一部の国にしか輸出されていないが、日本企業は多く進出している。日本が自分たちの国より動物の扱いが劣っていると気がついたとき、イオンなどの大手スーパーも影響を受ける可能性はある。日本産、日本ブランドが少しづつ傷ついていく。
鶏卵業界はそれでいいのだろうか。グローバルにビジネスを展開したい企業はそれでいいのだろうか。
そしてなにより、日本政府って、何を考えてこんなコメント出しちゃったんだろう・・・?という疑問がずっと消えない。