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アキタが働きかけていた鶏卵生産者経営安定対策事業とは。2018-2019年には鶏1941万羽を殺し国庫から32億の奨励金

アキタが働きかけていた鶏卵生産者経営安定対策事業とは。2018-2019年には鶏1941万羽を殺し国庫から32億の奨励金

大手鶏卵生産会社「アキタフーズ」の元代表が、吉川貴盛元農林水産大臣に対し、「大臣在任中のおととしから去年にかけて3回にわたって合わせて現金500万円を渡した」などと周囲に説明していたそうです。しかしながら吉川元大臣が関係する政治資金収支報告書にはこれが計上されておらず、問題になっています。

アキタフーズ元代表はこれまでに日本養鶏協会の副会長や特別顧問を務めています。報道によると、鶏のアニマルウェルフェアの国際基準や、鶏卵生産者経営安定対策事業について、元代表は吉川元農相に働きかけを行っていたということです。

鶏のアニマルウェルフェアの国際基準と、鶏卵生産者経営安定対策事業に対して何をしようとしていたのかについてはコチラの記事に詳細を書いていますが、ここでは鶏卵生産者経営安定対策事業の二本柱の一つである「成鶏更新・空舎延長事業」でどれだけの鶏が殺され、どれだけの国庫補助金が費やされたのかを書こうと思います。

「成鶏更新・空舎延長事業」字面だけ読むと何のことか分からないと思いますが、「更新」=鶏屠殺です。鶏を屠殺して鶏舎を長く空けると、一羽屠殺当たりの奨励金が支払われる、という事業のことです(奨励金の額はコチラをご覧ください)。卵が過剰供給になり価格が下がった時に、「成鶏更新・空舎延長事業」を発動させて卵の生産を抑え需給調整をしようというのが目的です。

皆さんはこれをどう思うでしょうか?コメの生産調整と同じようなものだと感じますか?コメの生産調整では、飼料作物や麦等への転作に補助金が出ています。野菜も過剰供給になると廃棄されています。でも野菜や米と違うのは、鶏が植物ではなく、私たちと同じ動物だということです。鶏たちは「出荷」される時、大声で鳴き叫び、抵抗します。

「成鶏更新・空舎延長事業」が開始したのは2010年。需給調整で殺された鶏の羽数と奨励金のために国庫から出た補助額を下の表に記載しました。

 需給調整で屠殺された鶏奨励金として使われた国庫補助金
2010年度 約1000万羽不明3
2011年度  発動なし
2012年度 約558万5000羽1約9億8600万円
2013年度 約502万4000羽1約8億8700万円
2014年度 発動なし
2015年度 発動なし
2016年度 発動なし
2017年度 発動なし
2018年度 約985万4000羽110億3937万2833円4
2019年度 約955万9146羽121億6717万2079円4
2020年度約1017万1679羽2未定

1 処理羽数は956万羽 成鶏更新・空舎延長事業 鶏鳴新聞
2 *9月23日に終了した成鶏更新・空舎延長事業の通報書による10月23日までの事業参加見込み羽数 成鶏更新事業参加は約1000万羽超 鶏鳴新聞 
3独立行政法人農畜産業振興機構の事業として行われているため、国庫負担分の割合が不明。
4同事業の実施主体である日本養鶏協会の事業報告 2018年と2019年の国庫補助金の額が二倍近く違うのは2018年度分の事業の一部(2019年2月に発動した成鶏更新・空舎延長事業分)を2019年度事業として決算したため。
参照:農林水産省サイト 予算、決算、財務書類等>行政事業レビュー >事業に係る行政事業レビューシート

 

2018-2019年度には約1,941万羽が殺され、約32億が国庫から奨励金として補助されています。

この「成鶏更新・空舎延長事業」について、日本養鶏協会は2019年8月27日に開催された自由民主党農林食料戦略調査会・農林部会・農政推進協議会合同会議に次のような要望をしています。

鶏卵生産者経営安定対策事業について、鶏卵の需給の安定を図るため、成鶏更新・空舎延長事業に力点を置いた見直しを実施すること

この要望、そしてアキタ側の働きかけ後、成鶏更新・空舎延長事業の内容は拡充され奨励金の額も増額されました。今後、この事業を活用する生産者は増えるだろうと推測されます。

しかし動物を殺して奨励金を渡すことで需給調整をする、そのような政策は正しいことなのでしょうか?殺すのではなく、なぜもともとの鶏の飼育羽数を減らして過剰供給を防ぐという方向になぜ転換できないのでしょうか?
目先の利益にとらわれて根本的な解決をはかろうとしない養鶏業界の責任は大きいですが、責任の一半は消費者にあります。

卵は薄利多売です。鶏をすし詰めにバタリーケージに閉じ込め、大量生産して安い値段でたくさん売る。今の養鶏はそのようなスタイルが主流です。このやり方が過剰供給を引き起こしています。そしてこのようなやり方になった要因の一つは「安ければいい」という消費者です。

鶏は卵を産む時、産むのに良い場所を探し、座ったり立ったりしてちょうどいい位置をなんども調整します。そしてクチバシで周りの草やワラをかき集め巣をつくり、産むまでに1時間以上、時にはもっと長い時間を費やします。産む前はそわそわして落ち着かず、何か言いたげな声で鳴いていますが、産み終わると、やっと一仕事終わったというように安心した顔で餌を食べ始めます。卵はとても貴重なものなのです。それがたった一個15円程度。特売の時はもっと安くなります

バタリーケージに閉じ込められていても、鶏はその中で卵を産むのに良い場所はないかと、一緒に閉じ込められた他の鶏の下に潜り込んだりしながら隠れ場所を探します。安心できる場所で出産したいというのはどの種にも共通の思いです。しかしそのような場所をバタリーケージの中で見つけることは永久にできません。隠れ場所を見つけることも巣を作ることもできないまま、不安で混乱した気持ちを抱えて鶏は卵を産みます。それを毎日繰り返しています。

消費者が「安ければいい」という考えを捨てない限り、大量生産が続けられ、鶏はバタリーケージの中で安心できる場所を見つけることができないまま卵を産み続けます。そして過剰供給になれば「成鶏更新・空舎延長事業」で殺されます。

それでも安い卵がいいという人もいるかもしれません。しかし忘れないでほしいのですが、殺すための「成鶏更新」費用を払っているのは消費者です。卵は安いと言いますが実際には安くないのです。

 

写真/日本の食鳥処理場(鶏の屠殺場)で過剰出荷で屠殺が追い付かず、二日間この状態で放置された鶏たち(撮影は2020年12月5日。屠殺されたのは12月7日)

1 コメント

  1. 年金を払う気がなくなりそうです。
    信じていたのに。
    これからは何もかも疑って、調べてみないといけないと
    心を改にしました。

    返信

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