各国の年金基金はその積立金を投資に回しているが、アマゾン熱帯雨林の破壊に関与する企業にまで投資するのは、国民への裏切りのように思う。
オランダについで日本の年金基金が年金基金の中で2番めに多く、アマゾン熱帯雨林の破壊に投資しているという調査が2021年2月に報じられていた。
アマゾンの熱帯雨林破壊に関与していることが明らかになっていて、かつ、日本の年金基金(年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF))が投資しているのは、ブラジルの巨大食肉企業(世界第1位の食肉企業)JBS S.A.である。2021年3月時点の投資額は3,949,949,506円。実に40億円が投じられている。
国連の今年発表されたレポート*1では、「パリ協定の目標を達成するためには、特に高所得国において、世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占める巨大な食肉・酪農産業への支援を転換する必要がある」とし、畜産への支援の転換を求めています。日本は高所得国に含まれている。
アマゾン熱帯雨林とその周辺に広がる生態系群は、気候変動の重要な鍵になる地域であり、とくにアマゾン熱帯雨林がティッピングポイントを超えた場合には、ドミノのように他地域にも影響が広がるという研究結果が出されている*2。
IPCC報告書の著者 Paulo ArtaxoNeto氏は「熱帯の森林破壊を減らすよりも,、安く、簡単で、速く、CO2排出量を削減する方法は他にはない 」と述べ、対策を迫っている*3。
熱帯雨林の破壊はたった7つの要因に絞られている。牛、アブラヤシ、大豆、ココア、ゴム、コーヒー、プランテーション木質繊維だ*4。その中で、「牛」が突出している。さらにこの「牛」は土地を使い捨てにし、劣化した土地は集約的畜産で使われる飼料の生産のためのプランテーションに変わる。この飼料生産の土地利用方法は、放牧地としての利用よりも環境への影響が大きい。
このようなものに、日本の年金の積立金が使われている。
9/22にアニマルライツセンターから年金積立金管理運用独立行政法人GPIFに以下の要望と質問を送付した。
要望:
動物性タンパク質、特に集約的畜産に関わる企業への投資を再考し、植物性たんぱく質や他の持続可能なビジネスへの投資に転換してください。
質問:
出資の際に、集約的畜産の様々な持続可能性に関わるリスクについて考慮されていますか?
GPIFはESG投資についても言及し実行もしているようである。しかし、良いものに投資するだけでなく、悪いものから撤退する決断がなければ、社会システムが変わるためにかかる時間は非常に長くなるのではないだろうか。
私達は投資の専門家ではないため、そこから得られる利益などはよくわからない。しかし、地球環境を破壊し、持続可能性から遠ざかり、苦しむ動物を増やすために、年金が使われ、しかもその企業を大きく支えてしまっているというのは問題があるだろう。多くの投資先がある中で、なにもそこに突出した額を投資しなくてもいいのではないか。
*1 Food and Agriculture Organization of the United Nations. UN report calls for repurposing of $470 billion of agricultural support that distorts prices and steer us away from environment and social goals. September 14, 2021. Accessed September 22, 2021. http://www.fao.org/news/story/en/item/1438889/icode/
*2 Interacting tipping elements increase risk of climate domino effects under global warming, Nico Wunderling et.al https://esd.copernicus.org/articles/12/601/2021/
*3 https://earthinnovation.org/2021/08/ipcc-report-author-no-faster-way-to-reduce-emissions-than-stopping-deforestation/
*4 https://www.globalforestwatch.org/blog/commodities/global-deforestation-agricultural-commodities/