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「将来肉食べられなくなるから…」企業の植物性タンパク質への取り組みでは地球が救えない理由

世界中で動物性タンパク質を植物性タンパク質や培養肉などに切り替える流れが刻々と強くなっている。この原動力になるのは気候危機とアニマルウェルフェアだ。とくに日本企業は環境のためと、代替肉への取り組みを重要課題の一つに加え、取り組みを進めている。企業の開発意欲は高く「10年、20年後には肉が食べられなくなると言われるから」「タンパク質を供給するミッションがある」など語る企業は多い。まさに世界ではこれからの50年でタンパク質革命が巻き起こるはずだ。

しかし、企業も市民も、肉が食べられなくなるくらいの環境悪化が起きることは想定の範囲内、許容するという姿勢なわけだが、それでいいのだろうか。スーパーの売場でも、飲食店のメニューでも、動物の犠牲の嵐だ。実際にヴィーガンはこの社会には少ない。いつか食べられなくなったときに切り替えようという算段の様相なのだ。

でも、倫理観が改善して肉を食べなくなるのではなく、生産ができなくなって肉が食べられなくなるということは、相当に地球環境が悪化しているということなのだ。

2030年代初頭には地球温暖化が産業革命以前の平均より1.5℃を上回る勢いで進んでいることを示す証拠も見つかっていると発表された*1。気候変動政府間パネル(IPCC)が定めた最悪のシナリオでは、47年後の2070年、耐え難い暑さの地域が地球の陸地面積の19パーセントに広がる可能性があると言っている。たとえCO2排出量を実質ゼロにしたとしても2℃に達するとも予測されている。もちろん不確実性はあるだろうが、2℃を超えた場合、おそらく様々な地域では作物の収穫は難しくなっているだろう。その時代に生きる人々は、干ばつと洪水と熱波をよく経験するのだろうし、その度に人も動物もたくさん死んでいくのだろう。特に動物が。熱帯海域のサンゴ礁は壊滅し、もちろん氷床が溶け海面は上昇、南米のアマゾンはとっくにサバンナになり、自然の回復力は著しく低下した状態で次々と災害を迎えることになるだろう。人々は住める場所に移住を余儀なくされるだろう。

動物性タンパク質を作るためには、大量の飼料が必要だし、動物を飼育しなくてはならない。畜舎は建築基準法適用外となったため災害の多い時代にあっては被害は甚大になるだろう。プラス1.5、プラス2度の世界の中では、あまりにもリスクが高い食べ物ということになるので、当然ながら今みたいには食べられなくなるのだろう。

そう、ただ、食べられなくなるだけで、今企業がのんびり取り組み、市民がいつか食べられなくなるのかぁと言いながら畜産物を食べている状態では、地球は救えない。

先に畜産物の量を減らさなくては、地球は救えない。

食べられなくなる状態を待っていてはダメ出し、新たな技術が開発されるのをも待っていてもダメだし、消費者の意識変化を待っていても手遅れになるだけだ。

良いものを作るのではなく悪いものを減らそう

今、企業はあくまでもオプションとしてプラントベースのメニューを用意しているが、そうではなく、メニューや商品全体から動物性タンパク質を減らし、消費者がどれを選んでも、動物性タンパク質の摂取量が減るようにする必要があるのではないか。気候危機に警鐘を鳴らし、生物多様性の危機を訴え、森林開発に反対をしていても、畜産物を消費している人は未だに多い。一般の人はなおさら、何も気にせず買い物をする。その商品が一緒に買物をしている子どもたちの未来を奪っていることに気がついてすらいない可能性もある。何も気にせずに買い物をしても、環境負荷が低いものになっているという状態にならなければインパクトは出せないだろう。

企業は「良いものを作っても売れない」と嘆くが、良いものを特別に(しかも高価に)作っても意味がないことをそろそろ認めたほうが良いだろう。企業は良いものを作るのではなく、悪いものを削減していく必要があるのだ。だって、現在の量の動物性タンパク質が、動物を苦しめるだけでなく、地球に大きな負担をかけているのだから。

今ある商品全体の原材料を見直し、動物性タンパク質の削減量をコミットし、計画を立てていくべきときが来ている。

*1https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2207183120

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