2021年4月27日、環境委員会では地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(温対法)が議論にかけられており、この中で串田誠一議員(神奈川)は国内で発生する温室効果ガスだけではなく、吸収についても対策を明文化することと、日本の消費による海外での発生分や吸収の破壊についても取り組まなくてはならないと問題提起した。
これはカーボンニュートラルを目指す上で重要な視点、かつ、行政が出す数字から抜け落ちてしまっている視点だ。国の目標にしたカーボンニュートラルの目標は、生産活動にともなう排出量を実質ゼロにするという生産ベースのCO2排出量についてだが、これはどこかの国で作ったものを輸入した場合、その生産に関わるCO2は生産国が排出したことになり、消費した国の排出量には換算されない。
発表される排出量だけを見ると、日本のような輸入が多い国に有利で、生産輸出が多いブラジルなどの国が不利に働く。
交通機関などの算出には向いているかもしれないが、グローバル化した現代では、国ごとの排出量の数字はあまり実態を反映しているとは言いにくい。
必要なのは消費ベースで考えていくことであり、それがいわゆるカーボンフットプリントだ。環境省はカーボンフットプリントだけでなく、ウォーターフットプリントなども含め以前から啓発に努めているが、この考え方はカーボンニュートラルからは抜けているのだ。
農林水産省によると、畜産動物の餌の輸入割合(令和1年度)は「牧草等の粗飼料の輸入割合が23%、とうもろこしなどの濃厚飼料の輸入割合は88%となっている」である。串田議員はこの輸入割合の高さを指摘し、飼料生産による森林破壊が飼料生産国のCO2排出をもたらし吸収源を阻害しており、日本での畜産はグラスフェッドの放牧を増やし、輸入の濃厚飼料に頼ったから地産地消の自然な農法に変えなくてはならないと訴えた。その上で、前述した国内の生産活動によるCO2排出だけを問題にするのではなく、国外のCO2排出量についても考えなくてはならないのではないかと問いかけた。
小泉環境大臣はこれに応え、
そこは、畜産に限る問題でもないですよね。例えばパームオイルのこともそうですし、最近ではチョコレートに使われるカカオ、こういった話もあります。今日は篠原先生から花の輸入の話もありましたし、私も環境省で今取り組んでいる一つがファッション業界の持続可能なあり方という中では、我々が着ているこの服は98%が輸入ですから、こういった事も含めて、本当にライフスタイル全般の部分をいかに持続可能な形に転換をしていくか、この一つが先生が今言った畜産、そして放牧、こういったあり方だと思います。
そういった観点もしっかり踏まえた上で、農水省、今、みどりの食料戦略システムも新たに打ち立てられている中で脱炭素に資する連携を環境省と農水省でしっかりとすすめていければと考えております。
と述べた。
串田議員はまた、アニマルウェルフェアを担保すると生産効率は下がり、質があがる。そこを補うのが大豆等植物タンパクを用いたベジミートなどのフードテックを活性化して、その効率が下がった分を生産効率が高い植物性タンパク質で補うのはどうかと提案した。
フードテックは農林水産省がすすめるプロジェクトでもあるが、これを農水省は「世界人口の増加による食市場の拡大や食分野における生産性向上の必要性、さらには環境負荷の低減に対する意識の高まり等を背景として、近年世界的に投資が拡大しているもの」と説明している。
この提案に対して小泉大臣は、気候変動対策への理解を深めること、46%という高い目標を設定し、その危機感を共有したことで、環境配慮型の食事を選ぶ人は増えるだろう。実際に、ふたば未来学園では学校の食事がベジマンデーを導入し、小学生からヴィーガンをもっと取り組んでほしいという手紙が環境大臣に届く時代になっていると述べた。
動物への配慮と環境への配慮がつながっていることを環境委員会で明確にした串田議員と小泉大臣に感謝したい。
こんにちは!いつもたくさんの情報を提供してくださりありがとうございます。
一つ気になる点があり、コメントさせていただきます。
“農林水産省によると、畜産動物の餌の輸入割合(令和1年度)は「牧草等の粗飼料の輸入割合が23%、とうもろこしなどの濃厚飼料の輸入割合は88%となっている」”
と、書いてありますが、農林水産省は畜産動物の飼料の輸入量は75%で、その75%の中の内訳が上記の数字だと言っていました。飼料全体の輸入量の数字がわかっていないと、間違った解釈をさせる方もいらっしゃるかと思いまして、補足させていただきましたm(_ _)m
不適切なコメントでしたら削除しちゃってください!