アニマルライツセンターではこれまで、屠殺場での牛や豚の扱いが改善されるように取り組んできました。
2016年に改善を要望していたD屠殺場は改善したのか?
2020年改善されない屠殺場の「福祉」
屠殺場の回答-横たわることもできない短い紐、飲水もできず夜通し繋留
夜中、屠殺場で豚に何が起きているのか
と畜場へ、動物の扱いの改善要望
【署名】屠殺場での残酷な行為を廃止してください
動かない厚生労働省 – と殺場で水が飲めない動物たち
「屠殺場の動物福祉」は、日本が加盟するOIE(国際獣疫事務局)も「動物の屠殺」という動物福祉基準を策定しているほど普遍的な考えで、日本が海外に「牛肉」や「鶏肉」を輸出するときには屠殺の動物福祉要件が設けられている*ほど国際的な同意が得られている考えでもあります。
一方で、日本の状況はどうでしょうか?日本も批准したOIEの「動物の屠殺」が作られたのが2005年、それから16年が経過しましたが、「屠殺場の動物福祉」が日本で浸透しているかというと、私たちにはそうは思えません。
*ただし国内消費では動物福祉要件なし
次の動画は、2020年8月から2021年7月にかけて撮影した、日本の屠殺場の新しい調査映像です。
この映像に出てくる屠殺場は2つで、うち一つは、2016年にも改善を要望したC屠殺場で、もう一つは初めて調査した屠殺場です。
電気スタンガンの多用により豚は怯えて固まって動けなくなり、それによりさらに作業者は電気スタンガンを使用しています。スタンガンの多用で、トラックの二階から転がり落ちる豚もいました。移動先が詰まっていて動くことができないのにスタンガンを押し当てられ、前の豚の背中に乗り上げる場面も見られました。歩行困難な豚は何度も蹴られ、スタンガンをあてられ、衰弱してうずくまっている豚はスタンガンをあてられて移動を強制させられました。トラックと屠殺場係留所の「段差」に足が挟まってしまった豚も繰り返し蹴られました。日本では珍しく豚の係留所に飲水設備がありましたが*、飲水ニップルまで移動することもできないような過密収容で、頻繁に闘争が起こっていました。過密収容された動画の豚たちが屠殺されるのは翌日です。
*日本の屠殺場の豚の係留所の86.4%が飲水設備を設置していない。
屠殺場での動物の移動について、日本も加盟するOIE(国際獣疫事務局)は、動物福祉基準(第7.5章 動物の屠殺)の中で次のように求めています。
- と殺される動物に、他の動物の上を乗り越えて歩くことを強制しないこと。
- 動く場所がほとんど、もしくはまったくない動物は、動きを強要する追い立て道具やその他の補助道具や肉体的暴力を受けないこと。電気式追い立て道具や刺し棒は、非常時のみ使用し、動物を移動するため日常的に使用しないこと。その使用は、動物の移動を補助する必要があり、動物の移動先に空間があるときのみ限定的に使われること。追い立て道具やその他の補助道具は、その動物が応答せず移動しない時には、繰り返し使用しないこと。そのような時は、何か物理的もしくはその他の障害が、動物の移動を妨げていないかどうか調査すること。
- そのような装置の使用は、豚と大反芻動物の体の後部への充電式駆り立て器具の使用に限定され、目、口、耳、生殖部分や、腹部等の敏感な場所には使用しないこと。そのような道具は、何歳の馬、羊、山羊に対しても、また仔牛、仔豚に対しても、使用しないこと。
iii) 有益で、許容される追い立て道具には、パネル、旗、プラスチックパドル、フラッパー(皮又は粗布の付属した短いストラップのある長いステッキ)、プラスチック袋及び金属製のラトル(*ガラガラ鳴らすもの)がある。これらは、不当なストレス無しで動物の移動を指示する方法として使用すること。(第7.5.2条 動物の移動及び取り扱い より引用 )
また畜産技術協会が作成し、農林水産省が普及に努めている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の輸送に関する指針」 も上述したものと同じことを求めています。
OIEの動物福祉基準(第7.5章 動物の屠殺)及び「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の輸送に関する指針」には、暴力によらない移動手法が記載されています。スタンガンの多用や蹴り、鞭打ちなどの行為は業務上やむを得ない行為ではありません。その暴力的な行為を中止しても業務を遂げることができます。
屠殺場や農場で、どうやって豚を穏やかに移動させるのか?
穏やかな移動方法(PDF)
屠殺場での収容については、日本も加盟するOIE(国際獣疫事務局)は、動物福祉基準(第7.5章 動物の屠殺)の中で次のように求めています。
- 収容所は、収容する予定の動物数に対し、十分な収容量を持っていること。飲水は、動物がいつでも摂取でき、その提供方法は、収容される動物に適切なものにすること。
- 収容ペンは、可能な限り多くの動物が、起立し壁にもたれて横たわることができるようにデザインすること。
- もともとの動物の集団は、可能な限り一緒に飼育し、それぞれの動物には、立ち上がり、横臥し、方向転換するための十分なスペースを与えること。お互いに敵対関係にある動物たちは、引き離されるものとする。
(第7.5.3条 収容所の設計及び建築及び、第7.5.4条 収容所における動物の保護管理 より引用 )
公開した調査動画にあるような行為は、業務上必須の行為ではありません。これらの行為は動物愛護管理法に抵触するだけでなく、同法第44条第二項の動物虐待罪に当たる可能性もあります。
私たちは2021年8月4日、動画の二つの屠殺場のある自治体の動物愛護部署に、改善指導をお願いしました。要望に対する対応はコチラをご覧ください。
2020年6月1日から施行された改正動物愛護管理法では、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と畜産地方公共団体の部局と畜産との連携の強化が盛り込まれたところでもあります(第四十一条の四)。動物愛護管理法の対象は犬猫だけではありません。畜産利用される牛や豚や鶏に対しても虐待は許されないことを、畜産動物を取り扱う人々に知っていただきたいと思います。
前に進む場所がないのに電気スタンガンを繰り返しあてられ、前の豚の背中に乗り上げる豚。怯えてトラックから降りられずにいると、尻尾を強く捩じられる牛。短いひもにつながれて翌日の屠殺までの長い時間を過ごさなければならなかった牛。係留所に飲水設備がなく、翌日の屠殺まで渇きに耐えなければならない牛と豚。翌日の屠殺まで過密な収容に耐えなければならない豚。
すべて、これまで私たちが見てきた屠殺場の動物たちです。彼らは自分自身ではどうすることもできません。