日本の養豚の成績はよくない。
母豚1頭あたりの繁殖能力は、海外から大きく離されている。
品種が異なるのではと言われるが、殆どの品種はもともとイギリスかデンマークから来ている。多少日本で品種改変されたものもあるが、種は問題ではないだろう。もともと出産数が少ない豚の種類(デュロック)などは日本でも飼育している農家は多くはないのだ。
気候は確かにそれぞれの国や地域で異なるが、それはどこでも同じハンデだ。
もう一つ全く異なる点があるとすれば、それは拘束飼育をするかしないか、アニマルウェルフェアに配慮しているかしていないか、という点である。
繁殖能力 | 日 本 | 米国 | オランダ | デンマーク |
年間分娩回数 (回) (a) | 2.3 | 2.4 | 2.4 | 2.3 |
1回当たり育成頭数 (頭) (b) | 9.9 | 10.7 | 12.3 | 13.6 |
年間離乳頭数(頭) (a)×(b) | 22.8 | 25.6 | 29.5 | 31.4 |
日本養豚協会の養豚農業実態調査報告書*2によると、母豚の頭数を増やした理由の24.7%が「1頭当たりの収益性が低下したので収入を守るために増頭した」となっている。
母豚の飼育数を増やすことで、出荷数=収益を増やそうとするのは、悪循環であることは誰でもわかるはずだ。
一人が管理しなくてはならない頭数が増えることは、一頭あたりにかける観察、処置、掃除の時間が減る。アニマルウェルフェアは低下するのだ。たくさんの動物を少数の人間が管理するというシステムで福祉的に動物を飼育することはとても難しい。動物自身の本来の行動を理解し、その習性、免疫、知能、健康管理能力、社会性を利用しない限りは、不可能だ。アニマルウェルフェアは動物を適正に管理する方法だ。それは、どの動物の死体を利用するということではなく、その動物の本来の能力を引き出すということだ。
妊娠ストールの廃止は、分娩率の向上につながるということがすでに明らかになっている。EUの農家は法的に妊娠ストールが禁止された2013年の段階ですでに「雌ブタが歩き回って活動していれば、彼らは自分自身の健康を保つことができ、健康な雌豚はより良い品質の子豚につながる」*3ということに気がついていた。考えてみればあたりまえのことであるが、日本の農家はまだそれに気がつくには至っていないようだ。
農家が、行政が、企業が重視するのが経済性、生産性だ。アニマルライツセンターはその立場にはないし、消費者も少し違うだろう。より動物に優しい飼育をしてほしいと思っている。しかし、それが一致するのであれば、切り替えない理由が見つけられない。
今すぐにでも拘束飼育をやめるという方向に舵を切るべきだ。
課題となっている知識や技術の習得を今すぐに補うべきだ。
ふわっとした、具体性のない日本流アニマルウェルフェアから、本来の科学的で役に立つアニマルウェルフェアに今すぐ切り替えるべきだ。
※1 農林水産省 http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/tikusan/bukai/attach/pdf/171204-30.pdf
※2 一般社団法人日本養豚協会 http://www.jppa.biz/pdf/2017_pdf/20170622_01.pdf
※3 http://www.pigprogress.net/Home/General/2013/12/Healthy-sows-lead-to-better-piglets-1365128W/