ワクチンがある豚熱でなぜ豚を外に出すことが禁止されなくてはならないのか。
ウイルス感染のリスクは屋外飼育でも屋内飼育でも同じなのに、なぜ屋内だけに統一するのか。
科学的根拠もなく、屋外飼育を制限するのか。
アニマルウェルフェアが高い飼育の価値を全く認めない農林水産省の姿勢、いかがなものか。
自然から隔離された養豚が行き着く先は脆弱で持続不可能な産業、それでいいのか。
広々した放牧よりも、過密な飼育が動物の健康に良いなんてことがあるのか。
当事者に一切知らせずに作られた「放牧中止」、コロナ禍に乗じてあまりに卑怯ではないか。
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農林水産省が突如発表した飼養衛生管理基準案に含まれた「放牧中止、屋外飼育中止」に多くの議論が起きている。
私達は6月9日に生産者、学者、動物保護団体連携での記者会見に挑んだ。そこででた記者の反応は、「そんなことになっているとは知らなかった」というものだった。
記者会見の内容は、動物保護団体、消費者を代表して会見にでてくださった動物環境・福祉協会Evaの記事を見ていただきたい。
アニマルライツセンターはEvaと、消費者団体、エシカル消費に尽力する企業と団体と学者、そして動物保護団体の連名で放牧制限の撤回を求める要望書を提出した。
農林水産大臣 江藤 拓 殿
放牧制限の撤回を求める要望書
この度改正が検討されている「飼養衛生管理基準(牛、水牛、鹿、めん羊、山羊)」、「飼養衛生管理基準(豚、いのしし)」の改正案について、次の2点を求めます。
・「畜舎外での病原体による汚染防止」の項目の、「大臣指定地域においては、放牧場、パドック等における舎外飼養を中止」を削除すること
・「放牧制限の準備」の項目を削除すること
フェンスと電柵による二重の防護柵の設置等の野生動物との接触防止が講じられ、さらに豚熱についてはワクチンの接種も行われている中、放牧を制限するような項目を追加することに科学的な裏付けはみあたりません。舎飼と放牧では特に放牧のほうが感染リスクが高いという証拠も見当たりません。アジア、ヨーロッパで感染を広げているアフリカ豚熱(ASF)についても、過去の感染を見ると舎内飼育であることで感染を防ぐことができているとは考えられません。
アニマルウェルフェアの5つの自由を全て提供できる飼育である放牧飼育は、消費者からの需要が徐々に高まっています。放牧だから購入するとする高い意識を持つ消費者は、放牧でなければ購入しないこととイコールでもあります。
制限と消毒と抗生物質に頼る畜産は、脆弱で持続不可能なものです。動物が運動をし、太陽の光を浴び、泥浴びをし、健康を保つ畜産を妨げる放牧を制限する規定を削除していただくよう、お願いいたします。
2020年6月8日
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva
認定NPO法人アニマルライツセンター
株式会社オルタナ
一般社団法人エシカル協会
福島県消費者団体連絡協議会
東京都市大学名誉教授 中原秀樹
日本女子大学教授 細川幸一
NPO法人動物実験の廃止を求める会
イルカ・クジラアクションネットワーク
アニマルウェルフェア推進ネットワーク
The Humane League Japan
日本農業新聞は連日このトピックスを取り上げている
https://www.agrinews.co.jp/p51068.html(追記)
https://www.agrinews.co.jp/p51017.html
https://www.agrinews.co.jp/p51016.html
https://www.agrinews.co.jp/p51000.html
オルタナにはアニマルライツセンターから寄稿させてもらった
http://alternas.jp/study/news/80911 ・ https://news.yahoo.co.jp/articles/6f5efcbe8a9254b975900ddebf62ca73405c97db?page=1
現代ビジネス、東洋経済、ELEMINIST
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73145
https://toyokeizai.net/articles/-/355973
https://eleminist.com/article/196
6月9日の記者会見直後、立憲民主党堀越啓仁議員から江藤農水大臣に対して、放牧制限の撤回を求める質問がなされた。
5月中下旬からこれまでに、様々なセクターの人々が危機感を表明している。今後更にその議論、異論は大きくなるだろう。同時に、日本のアニマルウェルフェアへの関心の高まりが加速し、工場畜産から離れる人が増えることを願う。
動物には大地を歩かせてはならない、
太陽の光の下に動物をおいてはならない、
閉じ込めて密集させよ、
病気は閉じ込めと消毒と抗生物質とワクチンで防げ、
そんな畜産は、持続可能ではない。本来動物は動物自身で自分の健康を保つ方法を知っていた。いや、今でも知っている。泥浴びで寄生虫を落とし、体温を適温にし、探索することで適度に運動し、太陽の光を浴びて心と体の栄養を補充する。自然の中で生きられない動物を食べ続ける不自然さになぜ気が付かないのだろうか。その不自然な規制の歪は、新型コロナウイルスのような形でいつか私達に帰ってくるだろう。
2020/6/12 追記:放牧中止が撤回されました。
https://www.hopeforanimals.org/pig/good-news-save-houboku/