3年前にコチラで世界の食肉加工売上高トップ10のアニマルウェルフェアの情報開示・取り組み状況についてお知らせしていましたが、情報更新したものを、掲載します。
近年、世界の畜産企業は、その社会的責任の観点から、動物福祉についての情報開示をすることが求められるようになっており、畜産企業も情報開示することがスタンダードとなってきています。今回3年ぶりにトップ10の開示状況を調べましたが、ますます情報開示は強化されており、動物福祉への取り組みは具体的なものになっていると思いました。これはただの印象ではありません。毎年、大手企業の畜産動物福祉を評価しているBBFAWの2019年のレポートによると「2012年の評価以降、80%の企業がワンランク以上レベルアップしている」そうです。
消費者の意識の高まりもあると思いますが、BBFAWやFAIRRが企業の動物福祉評価をおこなっていることも要因ではないかと思います。企業はこれらの評価を気にしており、良い評価を受けた企業は、自社サイトにBBFAWからの評価を掲載したりしています。良い評価であれば、企業価値が上がるからです。
下の表には、各社のWebサイトで見られる情報開示の内容を掲載していますが、開示内容が多すぎるため(WH Groupについては情報が少なめでしたが)、目に付いたものをごく一部抜粋しただけです。それでも、どれ一つとっても日本の食肉加工企業のサイトでは、誰も見たことが無いようなものばかりだと思います。大変うらやましく思います。
企業名・BBFAWの2019年動物福祉評価 | 妊娠ストールについて | 畜産動物福祉全体 |
1位 6段階中「3」 | グループ会社の養豚生産部門セアラは、2015年に妊娠ストールから群れ飼育へ切り替えることを発表。サプライチェーン含めて2025年までに群れ飼育へ切り替えると約束。 seara Food Safety Commitments Collective gestation
もう一つの養豚部門であるJBS USAは、必ずしも群れ飼育ではないが、ストールでも転回できるタイプとなっている。「米国が所有する雌豚の100%は、コロラド州上院法案08-201に基づくオープンペンシステムに収容されています。-雌豚が立ち上がり、横になり、囲いの側面に触れることなく向きを変えることができるような方法で保管されます。」 | ・動物種ごとに特化したチームがある。 Sustentabilidade GESTÃO DE BEM-ESTAR ANIMAL ・動物種ごとの動物福祉 牛: 鶏(ブロイラー): 豚: 豚・鶏(ブロイラー)共通: 鶏(採卵鶏): Sustentabilidade>bem-estar-animalの項目の中で (グループ会社のJBS USAのサイトでも、動物種ごとにどのような動物福祉プログラムを取り入れているか、牛と豚の生産施設・屠殺場についてはそれぞれの動物福祉の評価数値などが公開されている。animal care humane handling Our Commitment) ・年次報告で、SDGsの一つの取り組みとして動物福祉を提示、動物福祉への取り組み状況(2019年のJBSブラジルによる動物福祉への投資は総額7,400万レアル。)、BBFAWの評価も掲載。 |
2位 6段階中「3」 | 自社保有の養豚場は10%以下だが、2018年12月時点で、母豚の53%がオープンペンで飼育されており、「この割合は今後も増加すると予想している。」と自社サイトに記載している。 独立農家を含めると、21%がオープンペン。 *ただしタイソンフーズはどのシステムが最もバランスが取れているのか模索を続けると言っている。 A Network Dedicated to Animal Welfare
| ・動物福祉事務局があり、動物福祉のスペシャリストを含む動物福祉諮問パネル、動物福祉トレーニングがある。 To be the world leader in animal welfare through compassionate care based in sound science. ・2019年の成果(家禽取り扱いについて1,000人以上のチームメンバーを訓練など)、その年の福祉の評価指数(ブロイラーの足のスコア含む)を公開している。 ・モニタリング制度 第三者団体による農場監査がある。 ・輸送~屠殺 動物の輸送を8時間以下にすることを目標としている。屠殺場到着後できるだけ早く屠殺するが、24時間を超える場合は、給水・給餌する。 ・動物種ごとの動物福祉 ブロイラー: 牛: 豚: |
3位 萬洲国際 WHグループ(中国) *世界最大の豚肉会社 6段階中「4」 | これまで約束していたとおり、完全子会社であるスミスフィールドでは2017年末に群れ飼育への切替が完了。これには、ポーランド、ルーマニア、およびメキシコの合弁事業が含まれる。予定より5年早く達成することとなった。 切替への投資総額は3億6,000万ドル。 米国のすべての契約養豚生産者にも2022年末までにグループ飼育への移行を勧めている。 | ・世界動物衛生機関(OIE)の動物福祉基準に従う ・すべての従業員が動物福祉トレーニングを受けており、動物福祉の要件が会社のマニュアルに追加された。 ・輸送時間、速度、運転方法などについて、輸送業者との詳細な契約を締結する ・一部の農場では、外科処置をともなう子豚の去勢の代わりにFDA承認の獣医処方製品を使用している。これまでのところ良い結果であり、今後もこの方法を評価していく。 |
4位CP Foods(タイ) 6段階中「4」 | 妊娠ストールから群れ飼育へ移行することを公表 | ・Webサイトに「動物の福祉が動物の精神的および肉体的幸福の両方を伴い、食品の安全性に貢献する重要な要素であることを十分に認識しています」と明記。 Our Management Approach to Sustainability ・持続可能性な成長のための原則の一つに、動物福祉をあげて、(Our Guiding Policy, Principle and Solid Foundation for Sustainable Growth)動物福祉ポリシーを公開している。ポリシーでは五つの自由の原則などを示している。またこのポリシーは自社・子会社・ビジネスパートナーに適用するとしている。 Animal Welfare Policy Charoen Pokphand Foods Public Company Limited and Subsidiaries ・コミットメント 全ての動物は5つの自由原則に従って飼育される ・豚の去勢、歯・尾の削減、中止を試みている(マレーシア、台湾拠点ではすでに、歯の切断は100%中止)。 ・タイのすべてのブロイラーファームと海外事業所に家禽福祉担当官(PWO)を設置している ・繁殖用のメスの海老の目の切除(世界中の養殖エビ事業で一般的な慣行)はおこなっていない。 ・動物福祉の原則に従って高い動物福祉基準で飼育されていることを評価できるプログラムがある ・動物福祉評価のためにブロイラーの飼育密度30kg/㎡を定義している。 |
5位 6段階中「6」 | なし | なし |
6位 6段階中「2」 | チェーン全体で廃止済 | ・5つの自由が、動物福祉基準の中核を形成し、すべてのサプライヤーの要件。 ・牛の繋ぎは許可されない ・豚は、わら、干し草、木材、おがくずなどの適切な調査および操作活動を可能にするために十分な量の材料に永続的にアクセスできる必要があります。 ・豚の屠殺場では、跛行、夜間にわたる繋留、降ろし時の転倒などが動物福祉指標としてカウントされる ・他各国拠点における、豚の断尾、去勢の割合など細かく公開 Danish Crown Group Animal Welfare Policy 2019July ・豚のサプライヤーが守らなければならない「行動規範」に「農家はテールドッキングの必要性を文書化し、特定されたリスク要因を最小限に抑えるための行動計画を作成できる必要があります。 」 ・屠殺場の動物福祉認証スキームを開発するためのネットワークを確立した ・市場における顧客の興味が価格から、動物福祉のある商品へ移行する努力することを明記(ヨーロッパやデンマークの法律よりはるかに厳しい動物福祉ラベル2017年に開発され、ダニッシュクラウンもこの開発を支持してきた。また自身がこのラベル付き製品の主要なサプライヤーとなっている)。 |
7位 6段階中「3」 | 自社養豚場の妊娠ストールは群れ飼育へ移行済
| ・重要な問題への取り組みの一つにアニマルウェルフェアを掲載。 ・動物の虐待や放置による動物の虐待に対してゼロトレランスポリシーを採用 ・動物福祉の手順を改善するために第三者監査人を雇っていいる。さらに、従業員には機密のホットラインがあり、問題を匿名で報告できる。 ・動物種ごとの動物福祉 豚: ブロイラー(肉用鶏): 採卵鶏: OUR APPROACH TO ISSUES THAT MATTER Animal Care ・2018年CRレポートに、目標と進捗状況を記載 目標:サプライチェーン全体で動物福祉と取り扱いの最高水準を維持します。 ・子会社Jennie-O(七面鳥)は、農場、孵化場、屠殺場において、トルコ全国連合の動物福祉ガイドラインに従っており、550件の内部監査を実施している。 |
8位 6段階中「3」 | 2026年までの廃止を目標 進捗状況も報告: | ・5つの自由に基づく指標を使用して、継続的な改善に取り組んでいる。 ・動物福祉を満たす持続可能な生産的慣行の開発に向けて、大学、研究機関/企業、NGOに投資している ・農場や食肉処理場での動物の福祉を担当する、訓練された専門家がいる。 ・OIE(世界動物保健機構)およびEUによって人道的として認められている屠殺方法を使用 ・2014年以降、NGOの世界動物保護(WAP)と提携 compromissos de bem-estar animal BRF ・世界中で生産する製品の約15%が、抗生物質フリー認証、動物福祉認証を取得している。 ・動物福祉の実践は、OIE(世界動物保健機構)のガイドラインに基づく。ただし、いくつかについてはそれ以上の基準を設けている。農場での最低限の動物福祉基準としてはヨーロッパの基準を使用。 ・動物種ごとの動物福祉 豚: 家禽: 試験的にガススタニングを導入 採卵鶏: ・2020年には、3つの家禽屠殺場が動物福祉の第三者認証を受ける予定 ・2019年に、10のトレーニングコースを開催し、311人の動物福祉担当者が参加 ・43.3%の七面鳥は、自然な行動を表現できるおもちゃを備えた豊かな環境にアクセスできる |
9位 6段階中「4」 | 何もない (牛が主で、養豚部門はないが、加工は行っている) | ・5つの自由の保証に努める ・サプライチェーンで動物福祉を実践するための、ガイダンスを提供している。 ・毎年、輸送からと畜まで、動物の取り扱いと処理を担当するすべての担当者がトレーニングを受ける。(2019年には合計1,154.5時間の359回のトレーニングセッションが行われた) ・屠殺場での動物福祉(スタニング失敗率、動物の発声率、電気スタンガンの使用率など)の評価が行われる。毎週行われた評価数値の年平均値を公開している。 SUSTAINABILITY>ANIMAL WELFARE>PRINCIPLES ・2019年に環境、動物福祉、天然資源の保護に関連する持続可能性委員会を設立。 ・専門チームが動物福祉の指標、意思決定、トレーニングプログラムを継続的に監視。 ・独立した機関により動物福祉認証されたユニット数が公開されている(昨年と比較したもの)。 |
10位 評価対象外 | なし | なし |
何も公開されないというのは、監禁されている動物たちにとって大変危険です。外部から閉ざされているかれらの福祉を保証するものが何もないということだからです。
日本の食肉加工会社にも、ぜひ情報開示していただけたらと思います。
*売上高ランキングは日本ハムサイトの「ニッポンハムグループの事実」を参考にさせていただきました。