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輸送の検証 -豚の輸送改善と次に続く誰かのために-

アニマルライツセンターが豚を保護することはもう無いかもしれない。しかし、畜産業者ではない誰かが、豚たちを屠殺から救い出してくれるかもしれない。また、輸送の改善は畜産業全てにとって必要なことだ。そのために、私達が犯した失敗を検証しておく必要がある。養豚場内~トラックへの乗車・輸送時・トラックからの降車~サンクチュアリ到着時をそれぞれ確認したい。

養豚場内~トラックへの乗車

方法:養豚場オーナーが飼育檻から輸送用の檻に入れ、フォークリフトでトラックにつけ降ろす

愛媛サンクチュアリへ

19日、愛媛からの到着が1時間以上遅れ、ぎりぎり明るいうちに終わらせる予定だったが真っ暗になってしまった。養豚場側は積込みのために人を頼んでおり、彼は少し怒りながら次の予定を調整しており、やや緊迫しながらの作業開始となった。この日、彼の100%の協力が得られなかったことは一つの要因だったと言える。

1頭目のこげちゃちゃまるは養豚場側がすでに檻にいれて待機していたためトラックに乗せるのみであり、特筆すべきことはない。トラックにはオガコが山のように積まれており、トラックの中ではリラックスしオガコを食べるなどしていた。スペースもちょうどよく、ここに来れば安心と思えた。

2頭目の茶々丸を養豚場の飼育檻から出し、輸送用檻に入れるところで、豚が動けなくなった。
このときすでにあたりは真っ暗であり、フォークリフトのライトのみがあたりを照らす光であったため、豚にとって暗さとライトの強いコントラストは恐怖を掻き立てるものだった。
豚舎と輸送用檻の間に排水溝があり、段差がある状態で豚が動かない大きな要因であった。
豚舎を出たところに溝、さらに出口の目の前でなく右側に輸送檻の扉が待機したため、豚は方向転換も余儀なくされた。
輸送檻が豚の体に対して小さかったことも豚が歩みを止めた原因だ。
ARCから2名、愛媛から1名が養豚場内に立ち入り様子を見守る予定であったが、実際には犬の保護団体の方も3名が加わり、さらに豚が動かない状態を補佐するために最終的に車で待機していたARC1名と愛媛1名が加わり、合計7名が檻にいれるのを手伝うことになった。知らない人が多数いることによる恐怖が大きかったと考えられる。
押したり誘導したりするだけでは動かなくなった豚を動かすために、養豚場側はスタンガンを使った。心身ともに、大きな負担となったことは間違いがない。茶々丸が動かないとなったとき、翌日に持ち越すことも頭をよぎるが、そのような計画変更ができる関係値ではなかったことも大きい。

ARC 動物の未来サンクチュアリへ

20日、前日の失敗を反省し、慣れている養豚場側にハンドリングを任せ、アニマルライツセンターは1名のみがサポートのため付き添った。涼しいうちに運ぼうと、輸送業者の助言通り朝6時に集合した。

風太はあまりためらわずに歩きバナナも食べた。
そらは目があった瞬間に歩き出し、さほど時間がかからなかった。

しかし、なんと3頭目(友)が逃げ出した。なんとしても檻の中に戻りたい豚の底力を見ることになるのだが、行ったり来たり、数時間立ち往生した。より経験が豊富な輸送業者も加勢し、男性5人で押しても引いても友は動かなかった。
フォークリフトが溝にハマるなどの別のハプニングも加わり、相当の時間が費やされた。
そして、驚いたのは、輸送用檻のサイドを養豚場オーナーがおもむろに開けたことだ。開口部が大きいサイドが開くのであれば、前日の積み込みは、よりスムーズだったはずだ・・・。
ここで、重要なことに気がつく。養豚場側はまったく慣れていないことに・・・。これまでたくさんの豚を屠殺場に連れて行ってにも関わらず、この豚たちが長く養豚場にいすぎて執着を見せすぎていたからなのか、殺される豚と生かさなくてはならない豚で扱いを変えているからなのか、とにかく養豚場側に任せてはいけないことを思い知った。
友は根比べのような状態でなんとかトラックに乗せた。

4頭目5頭目となるひかりと大地は、別のトラックに前日にオーナーが乗せており、誘導は容易だった。養豚場側も学習しており、痛みや恐怖を与えないで誘導することを覚えていた。落ち着かせることで豚たちは自分の足でしっかり歩いた。

最後6頭目の咲。
前日にオーナーがひかりと大地を檻から出したときにすでに咲は弱っていたという。1頭で取り残された状態だが、オーナーは連れていなかなくてもいいと言った。
しかし、私達はいくつかの要因で、死を覚悟して連れて行くことを選択した。

1:この養豚場には獣医は来ない

2:掃除をしてあったと言われたが実際にはされておらず不潔な場所にたった一頭で取り残すことになる

3:餌がすでに見当たらなかった

4:連れて行くことが、治療と幸せになる希望の道だった置いていった場合、養豚場で咲は死に、オーナー曰く、穴をほって埋めることになる(違法)だろう。

5:連れて行ったさきにこそ、希望があった

結果からすると、輸送のストレスで死なせてしまったが、その後スタッフで何度話し合っても、連れてこなければよかったという結論にはならない。
アニマルウェルフェアの度合いを測るとしたら、置いてきたほうが良かったという判断だが、生きる唯一の希望がそこにあったなかで置いていくという判断ができなかった。
積み込みは、毛布を使い、距離もなくしてもらい、サイドの広い開口部からいれてもらったが、すでにほぼ立ち上がれない状態の咲にとっては、厳しかった。
彼女とずっと目が合っていて、がんばれ、無理だよ、を無言で繰り返していた。
水に飢えていて、水に引き寄せられ少しづつ前に進んだ。
オーナーがスタンガンを使い、私達はやめるよう伝えた。茶々丸とのときにそう伝えておければ、、、という後悔が強い。
トラックに乗せた時点で、自分で体勢をうまくとれない状態だった。輸送業者がこれでは死んでしまうからと体勢を整えてくれた。だが、彼らからも、おそらくダメだろうと伝えられた。

道中

愛媛へは夜の涼しい中、走った。休憩の数と時間などは改善できる点は残されているかもしれない。とはいえ、輸送時間の長さにそもそもの問題があったことは間違いがない。
それでも今後訪れる長い暮らし、適切なケア、そして看取りのための面積とケアをする人を考えると6頭と2頭を分けることは必須であり、日本中を探した中で取れる最善の判断をするしかなかった。愛媛サンクチュアリのマイさんには無理を言いつらい思いをさせてしまったが、現在のこげちゃちゃまるの様子を見ても、判断は間違っていなかったと考えている。

ARCのサンクチュアリへは昼間の時間になってしまったが、幸い暑い日ではなかった。オガコも敷かれ、ゆっくり走った。しかし、10分の距離を移動するのとは違う。2時間、豚たちは耐えねばならなかった。

トラックからの降車~サンクチュアリ到着時

※検証が可能なアニマルライツセンターのサンクチュアリのみ。

動物の未来コテージにトラックが到着し、最初に咲の確認をした。まだあたたかったが、今死んだという感じではなかったように思う。
咲はトラックから降りることはできなかった。

トラックからスロープで急坂を降ろすことはできないと考え、トラックのスロープでおろしたところに単管パイプで作った高さ1mほどのステージが用意し、そこからさらに緩やかなスロープを用意し、豚に歩いてもらう方法を取った。周りは板で囲い、前にだけ進める構造になっていた。

この方法はうまくいき、トラックから降りるところは抵抗したものの、自分の足でサンクチュアリの地面におりたった。

ひかりと大地は水を大量に飲んで、外で過ごし、友は水を大量に飲んだあと、自分でコテージの室内に入った。

動物の未来ホームの前の道路は狭いため、3トントラックが侵入できず、近くで軽トラに乗せ換えた。敷地内には軽トラの荷台と同じ高さのステージを用意し、スロープと通路を歩いてもらい、放牧場に入った。幸い急な登り坂があったためスロープは平らに設置されていた。周りを板で囲っており、比較的スムーズだった。

輸送業者はおしりをとんとんと押しながら「自分で歩くんだよ、もう自分が歩くしかないんだよ」と声をかけていた。

このときも風太はバナナにつられて動いてみたりとサバイバルできる神経であることを見せつけていた。もしかしたら、目が見えていなかったからなのかもしれない。

わかったこと=テンプル・グランディンの言う通りだった

新しい人、もの、色、様々な要因が動物にとって恐怖になる。余計なものを排除し、迷いなく前に進み、そっと押す。
段差は絶対にだめ。

そんなことを私達はいつも伝えてきた。それを実体験として、苦い失敗として学び直した。

豚に「幸せになるためにいくんだよ」「殺されないから大丈夫だよ」「がんばれ」なんていう言葉は全く必要がなく、ただ穏やかに、迷いなく前に進むシステムが必要だった。

積み下ろし側は素人ながらそうなっていた。積み込みを、養豚場側に任せきったことが、今回の最大の失敗であった。中規模、大規模の養豚場であれば問題はなかったかもしれないが、小規模な養豚場、特に廃業する養豚場に、うまく誘導する仕組みや知識があると思いこんでしまったことが誤りだった。私達は常々、アニマルウェルフェアに配慮したら人も楽になるのになんでやらないのだろうと畜産農家や屠殺場に疑問を持ち、方法を記載したドキュメントを渡したりしている。檻に乗せ換えてトラックまで持っていっていあげるから、というオーナーの言葉を真に受けてはいけなかったのだ。

そして長時間の動物の輸送は、死を覚悟せざるを得ない。輸送時間は2時間以内に抑えるべきだ。

屠殺場の改善を行ってきたテンプル・グランディンの改善策をどの養豚場も屠殺場も取り入れなければならない。一度やってしまえば、それほど難しくはない。恐怖や脅し、大声や痛みで進ませるのではなく、習性に従って動くような場を提供すれば良いのだ。私達には残念ながら次に実践する機会は訪れないだろう。しかし、養豚場は毎日行っていることだ。改善をしてほしいと強く願う。

なお、この検証は検証でしかなく批判する意図はなく、さらには失敗をごまかす意図もない。私達は全員、養豚業の方も含め、輸送業の方も含め、あの場では誰も豚たちの苦しみを軽視する者はいなかったが、いくつかの後悔する点を残した。養豚場側だったか、輸送業者側だったかがこの豚たちは「屠殺するんじゃないから」(弱らせてはいけないという意図)と言っていた。たとえ、その後殺すのだとわかっていても、動物への配慮は、意識がなくなり絶命するまで行わなくてはならないものだ。

私達はこの検証と経験を、アニマルウェルフェアの向上とアニマルライツの拡大に活かすことを誓う。

咲

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