2020年から2021年にかけての鳥インフルエンザで、国内では9,660,819羽の家禽が殺処分された。殺処分は安楽殺ではなく、熱死や窒息死、生体をコンテナに過剰に詰め込む、死にきれていない個体を密閉容器に入れるなどの虐殺的扱いだということをコチラ(1 2)の記事で言及した。
熱死や窒息死に至らしめる結果を引き起こす換気扇を止めるという手順については、「換気扇を止める」という指示が農林水産省から出ていることから、農林水産省に改善要望した(コチラをご覧ください)。
この記事では、アニマルライツセンターが実地調査し、今季の鳥インフルエンザ殺処分で問題ある行為(下記動画)が明らかになった、ある都道府県への改善願いと、それへの対応についてお知らせする。
動画は今季、鳥インフルエンザが発生したアヒル農場における殺処分の様子。
生体を二酸化炭素を注入するコンテナに過剰に上から上へ詰め込む、死にきれていない個体を埋焼却用の密閉容器に入れるなどの行為が見られる。
この県に聞いたところ、成鶏の殺処分では、二酸化炭素を注入する70~90リットルの蓋つきポリバケツを使用し、採卵鶏の場合15羽、ブロイラー(肉用鶏)の場合7-10羽が入れるということで、これでは鶏の場合でも、過剰な収容なのではないかとの懸念が生じた。
また、成鶏については、ポリバケツへの収容羽数や殺処分の手順が、同県の「高病原性鳥インフルエンザ発生時対応マニュアル」に記載されているが、これ以外の種類の家禽(アヒルなど)、種鶏などについては記載がない。これについて同県は「種鶏、あひるに具体的な基準はありませんが、それぞれの標準的な重量にあわせ、充分な二酸化炭素量を充填できるよう、採卵鶏(成鶏)に準じて」いるとのことだった。
また、死亡の確認については、「高病原性鳥インフルエンザに関する防疫作業マニュアル(農林水産省 平成23年12月)」に「殺処分家きんの死亡確認は、苦痛を軽減させる観点からも重要です。バケツの中の家きんが完全に動かなくなるまで待ち、死亡を確認しましょう。」と書かれていることに従っているということだった。しかし実際には、それに反する行為が行われてしまっている。
*赤字部分が回答
2021年5月1日
こちらの動画は、2021年1月21日に、貴県のアヒル農場において、鳥インフルエンザ発生による殺処分が行われている様子が撮影されたものです。https://youtu.be/D8WPYroqzpM
この殺処分の問題点:
1
大きめのアヒルは一つのコンテナに約70羽、小さめのアヒルは一つのコンテナに約130羽収容されていました。
最後のほうに収容されたアヒルが、コンテナのヘリから飛び出しそうになっていたことから、アヒルはコンテナの中に山盛りに詰め込まれていることと推測されます。
しかし日本も加盟するOIE(世界動物保健機関)の陸生動物衛生規約 第7.6章 「疾病管理を目的とする動物の殺処分」には「コンテナ又は装置は、過密にならないものとし、お互いの上に登ることによる動物の窒息を防止する措置が必要である。」と記載されています。2
コンテナにアヒルを収容してガス注入後、すぐに作業者らが全員このコンテナの付近から離れるということがありました。作業者がコンテナの中をあけて中を確認しに来たのは、ガス注入から13分後、その間誰もコンテナ付近にはおらず、だれも中の様子を確認していませんでした。しかし、傍にいれば、コンテナの近くに立つことで、奇声及び痙攣的羽ばたき音を確認してガスの追加の必要の有無の判断もできるはずです。3
動画にも収められていますが、ガス注入後、コンテナからペール缶に移動する作業中、一羽のアヒルに動きが見られました。しかしそのアヒルも密閉容器に移動させていました。またガスを注入したコンテナから密閉容器へアヒルを移動させる際に、2羽のアヒルがまだ生きていました(一羽は動画にも収めています)このアヒルは再びコンテナに戻されましたが、次にアヒルを詰め込む際に他のアヒルの下敷きになり窒息に至った可能性があります。以上のことから、下記の通り要望いたします。
要望1
貴県の高病原性鳥インフルエンザ 発生時対応マニュアルに現在記載されている、ガスを注入する容器への家禽の収容羽数について、「ただし、家禽がお互いの上に登ってしまう場合は、窒息死を防ぐために羽数を減らすこと」などの但し書きを付け加えてください。⇒マニュアルの変更の際に、記載するよう検討いたします。
要望2
現行のマニュアルにはブロイラーと採卵鶏のみの手順が示されていますが、その他の家禽についても手順を記載してください。⇒想定できる家禽について記載するよう検討いたします。
要望3
2021年1月21日のアヒル農場殺処分に携わった作業者全員に、上記3つの問題点をお伝えいただくとともに、令和3年1月21日に通知された「農場における産業動物の適切な方法による殺処分の実施について」を示し、不適切な殺処分は刑事告発対象にもなることを知らせ、同じことが起こらないように当該作業者らに指導してください。⇒活動従事者説明会等で周知します。
要望4
今後、伝染病発生時に家禽の殺処分を行うときは、殺処分開始前に、自衛隊を含めたすべての作業者に、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の農場内における殺処分に関する指針」を配布してください。⇒資料の全員への配布は困難であるため、活動内容の説明とともに周知するよう努めてまいります。
要望5
伝染病発生時に家禽の殺処分を行うときには、発生農場にアニマルウェルフェアを監視する職員をおき、問題ある行為があればその場で是正できるような体制を整えてください。⇒アニマルウェルフェアを念頭に置いた、指導、監視体制を整備するよう検討してまいります。
同県からの回答に対し、マニュアルの変更はどのタイミングでおこなわれるのかと聞いたところ、今現在手を付けているところで、今年に冬までには変更予定であるとのことだった。
また要望5について、アニマルウェルフェアの監視職員を置くことはできないのかと確認したところ、人手がなく専従を置くことは難しいとのこと。代わりに殺処分現場におけるサブリーダーを教育することによってアニマルウェルフェアを監視できるように考えている、との回答であった。