2022年1月3日、USDA(米国農務省)は屠畜場での動物の扱いに関する記録を、公開請求をする必要なく、同省のウェブサイトに一般公開することに同意した1。
これは、動物保護団体 AWI と Farm Sanctuary が2018年に USDA に対して起こした訴訟の結果であり、画期的な発展だ。
アメリカでは情報公開法(FOIA)により、「人道的な虐殺法」(Humane Methods of Slaughter Act)や「家禽製品検査法」(Poultry Products Inspection Act)などの法律の執行に関する記録は公開する義務がある。
しかし、それを積極的に公開していないとし、AWI と Farm Sanctuary はUSDAを訴えていた。
これらの記録には屠殺前の不適切な気絶処理(スタニング)や出荷用コンテナでの動物の放置など、アメリカ全国の屠畜場での非人道的な動物の扱いが記載されている。
「人道的な虐殺法」は1958年に制定されたもので、家禽以外の家畜動物を屠殺する前に気絶処理しなければいけないという法律だ2。スタニングは動物を吊り下げたり投げたりする前に行われることが義務付けられている。1978年には、輸入される肉に関しても同等の水準が求められ、国内でも法律に沿わない動物の扱いが観察された場合はUSDAの監査役はその場で屠殺ラインを止める権限も与えられた。記録には一回の家畜銃の使用で意識を失わなかったことや屠畜場で給水の容器が空になっていたことなどが細かく記載されている。
「家禽製品検査法」 では、家禽製品が損傷や汚染などで粗悪品になるのを防止することがUSDAに求められる3。これに関して、食鳥処理場で鶏が投げられたことや輸送中に暑いなか長時間放置されていたことなどが記録されている。
以前は市民や動物保護団体が情報公開法を適応してこれらの記録を請求しても、受け取るのに何か月や何年もかかることがあり、動物の現状を暴くことを滞らせていた。
今回の判決の結果、USDAのウェブサイトから四半期ごとに最新の監視記録を誰でもダウンロードできることになった。
また、2017年に遡る過去の記録も同省のウェブサイトからダウンロードできる。
例えば2021年4月~9月の期間の記録には400件以上の違反が報告されている。
このように屠畜場での動物の扱いについて最低限の透明性があることによって、動物保護に関する法律が適切に執行されることをUSDAに求めることができる。
例えば現在も、今回公開されたような記録をもとに、AWI と Farm Sanctuary はUSDAに対して食鳥処理での家禽の日常的な虐待について訴訟を起こしている。
日本でもこのように、屠畜場や食鳥処理場でのアニマルウェルフェアに関する監査ができる仕組みを作り、その記録を一般消費者が広く見られるように公開する必要があるだろう。
1. https://awionline.org/press-releases/usda-proactively-post-slaughter-records-settle-lawsuit-awi-farm-sanctuary 2. https://awionline.org/content/humane-methods-slaughter-act 3.https://awionline.org/awi-quarterly/winter-2020/awi-sues-prevent-inhumane-handling-birds-slaughter