2016年7月5日、農林水産省は畜産統計(2016年2月時点)を公表した。
*ブロイラーは1か月半という短期間で出荷されるため、「出荷羽数」をのほうがその年全体の飼養羽数を表すことができる。そのため畜産統計ではブロイラーのみ「飼養羽数」「出荷羽数」の統計がとられている。
農林水産省 畜産統計(平成28年2月1日現在)
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sokuhou/tikusan_16/index.html
*参考までに、EUの豚の飼養頭数は一戸当たり67頭。
(alic2017.8月号「EUの養豚・豚肉産業~多様な産地と経営体~」より)
EU(28カ国)には220万戸(2013年)の養豚経営体がある(表1)。ただし、平均飼養頭数は67頭と、日本の平均1928頭(2016年)と比較すると極めて小さく、一部の国では庭先で数頭飼いするケースが多いなど飼養頭数1~2頭層が全体の66.3%を占め、1000頭以上は3万6060戸と1.6%にすぎない。
2016年の日本の酪農場です。
まだ子供のこの牛は糞尿だらけの牛舎の中に閉じ込められ、ハエにたかられています。ハエに刺されたところが痛いのか体を時折ぶるぶると震わせ、足を使い、体を動かしてハエを追い払おうとしています。
2016年の一戸当たりの乳牛の飼養平均頭数は79頭。現代の工場型畜産では多くの場合乳牛は牛舎に閉じ込められています。それをたった数人で飼養管理しているという状況では、適切な糞尿の除去というごく普通の管理さえ行き届かなくなってしまうことがあるとしても不思議はありません。
「畜産農家は牛を自分の子供のようにかわいがっている」とはよく聞く話です。本当にそんな風に思っている農家もいるでしょう。しかし残念ながらその思いが実際の牛への扱いに反映されていない現実があります。
管理が行き届かないという意味では、牛よりも豚、豚よりも鶏で顕著かもしれません。豚の場合は一戸当たりの飼養平均頭数1930頭。採卵鶏は一戸当たりの平均羽数55200羽 、ブロイラーは57000羽です。豚の場合は従業員一人で数百頭、鶏の場合は従業員一人で数千羽を飼養管理することになります。
牛も豚も鶏も、多くの場合畜舎の中に閉じ込められています。こういった動物たちが快適な生活を送ることができるかどうかはすべて従業員の手にかかっていますが、現実的に考えて従業員一人で数百数千もの動物に適切な配慮をすることは困難です。
畜産動物と言われる動物たちが、広々とした草原でのびのびと自由に生きていると想像するのは楽ですが、実際はほとんどの場合そうではありません。
この子牛が糞尿まみれの中でハエに刺される痛みと闘いながら生きているのは、農家だけの責任ではなく、工場型の畜産を容認している私たち消費者も含めた人間全体の責任でもあります。
工場型畜産に反対の声をあげ、畜産利用される動物たちを救うことができるのは私たち人間だけです。