欧米を中心に、アニマルウェルフェアが一気に進んできています。
この背景には、1960年代から始まった動物への配慮が必要であるという議論と、アニマルウェルフェアの研究、そしてアニマルウェルフェアと食の安全との関連性の研究です。
動物たちが健康であるかどうかが、人が食らうその動物の体=「肉」や「卵」や「乳」が安全な食べ物であるかどうかに直結するというのが、世界の考え方であり、研究で裏付けられてきています。常識的に考えても、どこにも疑問はありません。
それでも、農林水産省所管の公益社団法人畜産技術協会は先日の東京オリンピック・パラリンピックの調達委員会で高発現しました。
「ウェルフェア的にはウインド ウレス鶏舎で飼うこと自体が問題にならない。」
この考え方は誤っており、日本独自の言い分です。現在の畜産システムを変えたくないと考えるために、もしくは、現在の日本の畜産システムのレベルがあまりにも低いために考え出された言い訳であると考えられます。
言葉で言い募ってみても、事実は異なるのですから、せめて言い方を、「日本の畜産システムに置けるアニマルウェルフェアは他国から大幅に遅れをっており、ウィンドレス鶏舎で飼育することを当面やめられません。世界の流れと反していようと、ウィンドレス鶏舎は養鶏業者に大きな利益をもたらすから増やし続けます」などと、アニマルウェルフェアを捻じ曲げるのではなく、現状を正確に伝えるべきではないでしょうか。
ウィンドレス鶏舎の鶏 2016年日本
卵生産に置ける、アニマルウェルフェアに配慮された飼育と、日本のウィンドレス鶏舎での飼育で簡単に比較してみます。双方とも、畜産技術協会作成の「快適性に配慮した飼養管理指針」に沿った飼育は前提事項とします。
アニマルウェルフェアに配慮された放牧飼育 | 日本のウィンドレス鶏舎での飼育 |
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(人が吸っているものと同じ・多くが山奥や農村地域にあるので良い空気です) |
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太陽光を浴びることでセロトニンが作られ心のバランスを整え、ビタミンDも作られることで免疫が上がる |
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ウジは半日で孵化するため、少しでも取り残しやこびりつきがあればハエは発生する |
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同じ環境にいても個々に換羽の時期は異なるため、弱っていたり時期が異なる鳥にとってはストレス。 |
※日本の一箇所の終生飼養の放牧養鶏場除く |
ウィンドレス鶏舎、そしてバタリーケージで鶏を飼育することがアニマルウェルフェア的に問題にならない と感じているのであれば、それは鶏を個々に観察していないからではないでしょうか。
畜産技術協会作の指針には、「成鶏が快適に飼養されているかどうかを確認するためには、鶏の健康状態を常に把握しておくことが重要であり、観察は、少なくとも1日に1回は実施することとする。」と書かれていますが、現在政府からの助成金を得ながら増設していっているウィンドレス鶏舎は、巨大で、1棟に10万羽を超える鶏を詰め込んでいます。数名のスタッフが、毎日1羽1羽、その日の体調を見ることは不可能です。ケージから動物を出しもせずに、死んでいる動物がいないか、異常のある動物がいないかを見て回ることでは、アニマルウェルフェアは担保されません。
アニマルウェルフェアは、動物の本来の習性を尊重した飼育方法をすることで、ストレスを減らし、心身の健康を保つという考え方です。
海外では、その考えに則り、研究を重ね、より修正を発揮できる環境を用意することで、アニマルウェルフェアを担保していますが、日本は今は同じ方向を向いてはいないようです。
この【ズレ】を認め、本来のアニマルウェルフェアの向上に向けて、前向きな努力を行政、生産農家、小売業者、加工業者、消費者、動物保護団体がしていかなくてはならないのではないでしょうか。