2017年6月14日、小川勝也参議院議員、篠原孝衆議院議員が呼びかけ人となり、アニマルウェルフェア(畜産動物の福祉)研究会の第1回目の会合が開かれました。
冒頭、小川議員は、これまで数度国会で日本のアニマルウェルフェアの後れを指摘し質問をしたり、農水省との話し合いを行うなどしてきたがなかなか推進されてこなかった、2020年東京オリンピック・パラリンピックにむけて、諸外国の基準にあった畜肉にしていかねばならない、この問題を進めるにはもう今年しかないのではないかという危機感を持っていると話し、アニマルウェルフェアの必要性を訴えました。
また、どうせ殺されて口に入れるならなにをしても構わないということではすまされない、鶏は卵をたくさん産むように改良され、本来なら10,000回地面を突き採食するような鶏が地面を突くことなく、土に触れることもなく一生を終える、いわば卵工場になっているなど動物の現状に触れ、今日集まった議員の皆さまとともにしっかりとした議論構築をしていき、国を動かしてアニマルウェルフェアに取り組む国にしていこうと呼びかけました。
さらに篠原議員からも、アニマルウェルフェアはヨーロッパが推進しているように思えるけど、本来であれば日本人はやさしい国民。そのやさしさを呼び戻す会合にしたいと挨拶がなされました。
国会閉会の3日前でという忙しさもあり、また問題の難しさもあり、当日出席された議員は6名でしたが、課題と必要性の認識をしていただくことが出来ました。
アニマルライツセンターから課題の提起として、欧米や中国や韓国でのアニマルウェルフェアの現在の状況、日本の畜産現場(農場内・輸送・と畜まで)の現状、国民の意識、オリンピック・パラリンピックの畜産物調達におけるアニマルウェルフェアの状況、動物愛護法における産業動物に関わる改正のポイント、今後どのように改善にむけて取り組むべきかについてを共有しました。
その後質問や議論が交わされました。
議論の中では、
1960年代以降、欧米では環境への影響、人畜共通感染症などの問題からとともにアニマルウェルフェアが取り組まれてきましたが、日本はひどい状態になってしまっていること、
日本では土地が狭いからとよく言われる点について、近隣からのニオイの苦情などはあるが、狭いからということは決してそうではない、ただし移行の際に生産がストップしてしまうことによるダメージはあるため、補助が必要であること
EUでは規制と良い取り組みをした農家への補助金というアメとムチを使い分けた誘導があったこと
アニマルウェルフェアに取り組んでいる動物保護、認証、生産者、学識団体があること
など共通の認識を持つことが出来ました。
今後もこの研究会は継続されます。
2020年という目標となる年が目前に迫る中、小川議員がおっしゃったとおり、今年こそ変革を生み出さなくては間に合わないだろうと思われます。
さらには、農林水産省で進めているJGAP認証の”アニマルウェルフェア”は、最低限担保すべき虐待の防止、配慮であり、この最低限担保すべきアニマルウェルフェアがままならない日本において、農林水産省の動きは重要ですが、この点は強制力を持って行っても良い点であると考えられます。なぜなら、多くの国民がまさか自分が口にする肉や卵の生産過程で積極的な暴力行為が行われていると想定していないからです。ましてや東京オリンピック・パラリンピックのときにやってくる海外のアスリートや観光客は、まったく想定していないからです。
しかし、この最低限の福祉の担保だけをやっていても、世界が進めているアニマルウェルフェアのレベルとの差は開いていくばかりです。世界は今まさに転がるようにアニマルウェルフェアに配慮した飼育システムに変換していっています。飼育システム(ケージシステムや拘束檻のシステムなどの飼育環境)の変革についても、推し進めていかなくてはならないターニングポイントに来ています。
消費者、生産者、小売、行政、政治、全てのステークホルダーに対する働きかけ、転換をするための方法の提言などを行わなくてはなりません。この日集まってくださった議員の先生方が、そのリーダーであることは間違いがなく、そしてその他全ての分野でリーダーシップを取る人々が現れるよう、私たちもさらなる働きかけを行ってまいります。
篠原議員がおっしゃるとおり日本人には動物に配慮する素地が本来はあるはずであると、また欧米を追い越してより高いアニマルウェルフェアが社会に定着することを私たちも信じています。