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ゲノム編集という次なる暴力

ゲノム編集という次なる暴力

ゲノム編集は遺伝子改変と異なって安全なんだという主張が一部ある。しかしこれは誤りであり、より危険である可能性もある。だれもなにも、証明していないのに、安全だと言い切って日本政府は数々のゲノム編集技術に公金を費やしている。

アニマルライツセンターは食の安全の観点ではなく、動物への影響、苦しみ、生命倫理、そこから派生する生物多様性の破壊という観点から、動物のゲノム編集に強く反対する。

ゲノム編集技術とは

遺伝子組換え技術は、Aの動物に別の遺伝子を挿入することで、本来持たない特性を持つようにする技術だ。

一方、ゲノム編集技術は、Aの動物の遺伝子の一部を破壊することで、その動物が本来持つべき能力を失わせる技術だ。

方法は違えど、その動物の体を弄ぶという点では同じことだ。また、人間を含めて動物の体はすべてバランスを保ってできている。本来持つべき能力・機能を一つ失えば、バランスが崩れる。自分の体を考えればわかるだろう、食欲がずっと満足しなければ我慢することはストレスに繋がり、食べ続ければ内蔵や体に不調があらわれる。

アニマルライツチャンネルでは、動物へのゲノム編集を特集し、OKシードプロジェクトの印鑰智哉氏にゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9について解説してもらっている。ゲノム編集というと、多くの場合「自然の作用だ」「DNAの一部を切り取る」などまるで自然に起きる変異を人間が緻密に計算して行うような印象を与える表現がなされている。しかし実際には、CRISPR/Cas9という技術はそんな緻密なものではない。センサーがついた爆破装置だと印鑰氏は表現する。実際、その見た目はカットするハサミのようなものではなく、DNAに寄生する不気味な大型の爆弾である。DNAの一部を破壊すると動物の体はそれを修復しようとする。しかしCRISPR/Cas9は何度も何度も執拗に爆破し続けるのだ。そのうちに修復ミスが起き、遺伝子の大量欠損や染色体が粉砕されたりということがおきるという。

動物に行われるゲノム編集

では、実際にこのCISPER/Cas9で動物のどこを破壊しているのか。

レプチン受容体遺伝子をCISPER/Cas9で破壊

レプチン受容体遺伝子を破壊することで動物が急速に太るようにするというゲノム編集が行われている(その魚はすでに市場に出ている)。

レプチンというホルモンは、”脂肪細胞から放出されるホルモンで、脳内の摂食中枢に作用して強力に摂食行動を抑制*1”する。つまり太ってくるとレプチンがたくさん放出され、それを感知するのがレプチン受容体だ。感知する受容体が破壊されたら、どんなにレプチンが体の中に大量になっても、制御できず、動物は餌があれば食べ続けてしまう。肥満になるのだ。漁業産業的には、肥満になれば可食部分が増えるので、いいというわけだ。

しかし、前の節で述べている通り、ただ狙った効果=肥満になることだけが達成されるわけではない。

レプチン a ( lepa ) 遺伝子欠損を持つゼブラフィッシュ変異体は、肥満、不安、攻撃性の低下と恐怖、概日リズムと色の好みの調節異常を示す*2。以下のような変化が見られている

行動学的変化:活動を示す不安症の表現型を示し、速い泳ぎ、停止時間の減少、捕食者への恐怖の減少、緩い群れ領域の形成、概日リズムの乱れ、色嗜好性の調節不全

生理学的変化:脳内のメラトニン、ノルエピネフリン、アセチルコリン、セロトニンのレベルが有意に減少
ドーパミン、グリシン、コルチゾールのレベルは脳内で有意に上昇

神経質で過敏、ストレスフルな状態になっていることは明確である。

例えばメラトニンが減れば、体内時計が狂い、眠れなくなる。ノルエピネフリンが減れば、ストレスを軽減できなくなり、感情が高ぶったら抑えられなくなる。アセチルコリンが減れば、集中力がなくなり記憶力も低下し、心臓、血管、気道、泌尿器、消化管にも影響が出る。セロトニンが減れば、怒りや焦りを制御できず、精神不安定になる。

ゲノム編集された魚は、精神、身体ともに、慢性的に病んでいる状態であるということだ。

ミオスタチンをCISPER/Cas9で破壊

ミオスタチンとは、筋肉の成長を抑制するタンパク質であり、その遺伝子欠失や機能不全は、異常に発達した筋肉量(筋肉過形成)をもたらす。

木下 ● 筋肉量が多く肉厚のマダイをつくるヒントになったのが「肉牛」。筋肉が異常に発達する変種が、ヨーロッパでは「ベルジアン・ブルー」や「ピエモンテ」の名前で品種化されています。」(京大発、「肉厚マダイ」参上 食に革命を起こすゲノム編集と安全*3)

このように述べている。ベルジアン・ブルーを検索してほしい。品種改変により異常な筋肉がついた通常よりも大きな牛だ。大きすぎる子供が生まれるため産道を通れず帝王切開で生まれてくる。もはや自然界では生息できない。

その他に以下のような特徴を持っている。

  • 母体の産道に対して胎児が大きすぎるため、難産の発生率増大
  • 非常に高いレベルの帝王切開が必要となる
  • 異常な筋肉量が生殖器官の発達や機能に悪影響を及ぼすため出産時の合併症を引き起こす
  • 顎の変形を引き起こす
  • 肥大しすぎた舌(子牛の哺乳能力、ひいては生存率に影響する)
  • 呼吸器疾患の発生
  • 過剰な筋肉が心臓や他の臓器に余分な負荷をかける
  • 心臓、生殖に関する問題
  • 短命になる

ゲノム編集でこの異常さを目指したということだ。同じこと、または全く予期しなかった変化がマダイたちの中でも起きている可能性が高い。

ゲノム編集の技術は海外発 お金も海外へ流出

日本政府はこのゲノム編集魚やその他ゲノム編集をつかった新たな”商品”開発に多額の公金を使っている。だが、印鑰氏によるとその技術を使うためには特許料を払い続ける必要があるという。「ゲノム編集」技術は研究用には無償で使えるけれども、商業利用には特許料が必要なのだ。数%から10%程度を払い続ける必要がある可能性が高い。つまり、ゲノム編集で作られた魚は安くはならないし、海外の何処かの企業に特許料をずっと払い続けるのだ。

一部の企業や国は、ゲノム編集魚を、タンパク質が足りなくなる未来に向けたサステナブルな食べ物だといいながら、プロモーションを展開している。だが、誰かに特許料を払い続けなくてはならない食べ物を、一部の倫理観の欠如した金持ちが食べる、または倫理観の欠如した企業がいいものだと言いながら売るというところに、社会課題の解決といった側面はない。あるのは金儲けだけだ。

次なるリスク

ゲノム編集の動物への最大のリスクは、その苦しみだ。

ブロイラーの鶏は時間をかけて品種改変を行い結果的に鶏たちはこれでもかというくらい苦しんで、そして短命である。同じことを一瞬で強制的にやるのがゲノム編集であり遺伝子組換えだ。

以前の記事でも書いた通り、アニマルウェルフェアの評価は一切なされておらず、更には魚のアニマルウェルフェアについて理解すらできていない状態である。かならず、意図しない問題が発生し(100%発生すると考えるべき)、改変する過程でも事故を含め動物の犠牲が発生し、自然な行動や機能が抑制されるようになり、そして倫理観が破壊されていく。

さらに、
•生物多様性を破壊する可能性
•新たな薬剤耐性菌を生み出す可能性
•編集された遺伝子が他の生物種へ水平に移動する可能性
そんな問題も指摘される。魚や鶏などの動物だけが犠牲者かと油断していたら、実はその悪影響は、環境、人間にいつかはやってくるだろう。

必要なこと

動物のゲノム編集を認可しないことが望ましいが、少なくとも以下の対策を講じる必要がある。

  1. 類似結果を提供する別の方法がある場合、動物のゲノム編集、遺伝子編集を許可しない(雛の雌雄鑑別法などがこれにあたる)
  2. 単に集約的な農業システムを支えるために、動物を病気に抵抗力を持たせるためのゲノム編集、遺伝子編集が使用されないようにする
  3. 経済性を上げるためのゲノム編集、遺伝子編集を許可しない(太らせる、急成長させる、卵アレルギーを抑えるなどがこれにあたる)
  4. アニマルウェルフェアの潮流を重視し、脊椎動物に限らずすべての動物に対し、アニマルウェルフェア上の評価を行い、動物が苦しむ原因となる可能性があるリスクを排除し、やりすぎない規制を作る
  5. 補助金の対象とする場合、倫理的側面についての配慮を義務化する

個人でできることもある。
ゲノム編集魚を購入しない、これを応援したり販売したりする企業に一切のお金を払わないということ、さらにはゲノム編集はNOであることを企業や政治家、自治体に声を届けていくことだ。

動物たちの次なる悲劇を、できるだけ早い段階で、止めなくてはならない。

*1 https://www.nibb.ac.jp/press/2017/09/14.html
*2 https://www.mdpi.com/1422-0067/19/12/4038
*3 https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/201809/taidan/

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