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OIE陸生動物衛生規約 第7.1 章 アニマルウェルフェアの勧告に係る序論(日本語訳)

OIE陸生動物衛生規約 第7.1 章 アニマルウェルフェアの勧告に係る序論(日本語訳)

OIE(世界動物保健機関・国際獣疫事務局)の陸生動物衛生規約の7章はアニマルウェルフェアについてですが、日本政府はこの作成に携わり税金を使っているにも関わらず、日本語訳を公開していません。OIEは獣医師が集まり科学的根拠を持って、また世界のレベルに合わせながら国際基準を作っており、畜産後進国である日本にとっては学ぶべきことが多数あります。

アニマルライツセンターは最低限このOIE動物福祉規約を守って欲しいと考えており、日本語訳を行い公開しています。

https://www.oie.int/index.php?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_introduction.htm

【アニマルライツセンター訳】2019年改定版

第7.1 章 アニマルウェルフェアの勧告に係る序論

第7.1.1 条 総論

アニマルウェルフェアとは、動物がその生活する及び死亡する環境に関する身体的及び心理的状態をいう。

動物は、健康で、快適で、栄養豊かで、安全で、不快な状態(苦痛、恐れ、苦悩など)に苦しんでおらず、身体的及び心理的状態に重要な行動を発現できている場合には、良好なウェルフェアを享受している。

良好なアニマルウェルフェアには、疾病の予防及び適切な獣医ケア、収容施設、管理、栄養、刺激がありかつ安全な環境、人道的取り扱い並びに人道的なと畜/殺処分が必要である。アニマルウェルフェアとは、当該動物のそのような状態をいい、動物が受けるそのような取り扱いは、動物ケア、動物ハズバンドリー、人道的トリートメントなど他の用語の中でも語られている。

第7.1.2 条 アニマルウェルフェアの指導原則

1) 動物衛生とアニマルウェルフェアの間には決定的な相互関連性が存在する。

2) 国際的に認められた‘五つの自由’(飢え、乾き及び栄養不良からの自由、恐怖及び苦痛からの自由、物理的及び寒暖の不快からの自由、痛み、損傷及び疾病からの自由並びに通常の行動様式を発現する自由)は、アニマルウェルフェアの役立つ指針である。

3) 国際的に認められた‘三つのR’(動物の数の削減(reduction)、実験方法の改善(refinement)及び動物から非動物技術への置換(replacement))は、科学における動物の利用に係る役立つ指針である。

4) アニマルウェルフェアの科学的評価には、まとめて考える必要がある多様な要素が関係しており、これらの要素の選定及び重み付けもまた、可能な限り明示的に示されるべき価値付け仮説が関係している。

5) 農業、教育及び研究における並びに伴侶としての親密な付き合い、娯楽及び興行のための動物の利用が、人の幸福に大きな貢献をしている。

6) 動物の利用には、現実的な範囲で最大限その動物のウェルフェアを確保する倫理的責任が伴っている。

7) 農場でのアニマルウェルフェアの向上は、しばしば生産性及び食品安全を向上させることができ、したがって経済的利益に繋がる。

8)アニマルウェルフェアの基準及び勧告を比較する場合には、設計基準に基づく同定システムを基礎とするよりも、むしろ生産成績基準に基づく相当する成果が基礎となる。

第7.1.3 条 勧告の科学的根拠

1) ウェルフェアは、上述の‘五つの自由’に言及されるものも含めて、動物の生活の質に貢献する多くの要素を含む広義な用語である。

2) アニマルウェルフェアの科学的評価は、近年急速に発展しており、これら勧告の根拠を形成している。

3) アニマルウェルフェアの測定指標の中には、損傷、疾病及び栄養不良に関連して損なわれた機能の程度評価に関係するものもある。その他の測定指標の中には、しばしば動物の好み、動機付け及び忌避の強さを測定することによって、動物のニーズ及び飢え、痛み、恐怖等の感情状態に関する情報を提供するものもある。動物が多様な困難への対応として示す身体的、行動的及び免疫学的変化又は影響を評価する測定指標もある。

4) そのような測定指標が、動物の様々な管理方法がそのウェルフェアにどのように影響するかの評価に役立つ基準及び指標へと繋がる場合もある。

第7.1.4条 アニマルウェルフェアを評価するための測定指標の使用のための指導原則

1) 世界的に適用されるOIEのアニマルウェルフェアの基準では、ある状況においては動物の環境及び管理の特定の条件を勧告することが必要な場合があるが、動物にとって好ましい成果を強調するものとする。成果は一般的に、第7.1.2章で記述されている‘5つの自由’の動物の享受を評価することによって測定される。

2)第7.1.5条の各原則において、最も適切な測定基準(又は測定指標)(理想的には、動物の状態に基づく測定指標から成る)が基準に含まれるものとする。どの動物の状態に基づく測定指標も、2つ以上の原則に関連することがある。

3)基準は、可能な場合には、動物の状態に基づく測定指標を満たすための明確な目標又は閾値を定めるものとする。そのような目標値は関連する科学及び専門家の経験に基づくものとする。

4)動物の状態に基づく測定指標に加え、リソースに基づく測定指標や管理に基づく測定指標も、ウェルフェアの成果がリソース又は管理行為と明らかに関連していると明らかに示している、科学及び専門家の経験に基づいて定めるものとする。

5)基準のユーザーは、基準で列挙されている動物の状態に基づく測定指標のうち、生産のシステム又は条件にとって最も適切なものを選択するものとする。成果は、飼育施設、輸送又はと畜場からのデータを使って、個別の動物又は動物群又はそれらの代表的なサンプルを評価することによって測定することができる。所轄官庁は、ユーザーに関連するすべてのデータを収集して、目標値と閾値を設定するものとする。

6)測定の基礎が何であっても、成果が満足のいくものでない場合は、ユーザーは成果を改善するためにリソース又は管理にどのような変更が必要かを検討するものとする。

第7.1.5条 家畜生産システムにおける動物のウェルフェアの一般原則

1) 遺伝学的選択は、常に動物の健康とウェルフェアを考慮するものとする。

2) 新しい環境へ導入するために選択された動物は、その土地の気候に適ったものであり、その土地の疾病、寄生虫及び栄養への順応が可能なものであるものとする。

3) 生育環境(歩道表面、休息場所表面等)を含む物理環境は、損傷及び動物への疾病又は寄生虫の伝播のリスクを最小限に抑えるため、当該種に適ったものであるものとする。

4) 物理環境は、快適な休息、正常な姿勢変化を含む安全で快適な移動、及び動物が遂行するよう動機付けられている自然な行動を遂行する機会を与えることができるものとする。

5) 動物の社会的グループ分けは、積極的な社会行動を可能にし、損傷、苦痛及び慢性的恐怖を最小限に抑えるよう管理されるものとする。

6) 舎飼動物の場合には、空気の質、温度及び湿度は、良好な動物衛生を維持し、有害ではないものとする。動物は、極端な状況が発生する場所では、自然な温度調節法の利用を妨げられないものとする。

7) 動物は、当該動物の週齢及びニーズに適った、正常な健康及び生産性を維持し、長期的な飢え、乾き、栄養不良又は脱水症状を予防するのに十分な量の飼料及び水の入手ができるものとする。

8) 疾病及び寄生虫は、良好な管理規範を通じて、可能な限り予防及び管理されるものとする。深刻な健康問題がある動物は、直ちに隔離及び治療し、治療が可能ではない若しくは回復が見込めない場合には、苦痛を与えないように殺処分されるものとする。

9) 痛みを伴う方法を避けることができない場合には、その結果生じる痛みは、利用できる方法が許す範囲で管理されるものとする。

10) 動物の取り扱いは、人と動物との肯定的な関係を育成し、損傷、パニック、長期的恐怖又は避けられないストレスを引き起こすことがないようにするものとする。

11) 所有者及び使用管理者は、これらの原則に従い動物が取り扱われることを確保するのに十分な技量及び知識を持っているものとする。

 

翻訳協力:アニマルライツセンター翻訳チーム Misaki Takahashi

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