12月28日、山口県の養鶏場で3万7000羽の、宮崎県の養鶏場では4万2000羽の鶏の殺処分が開始された。
高病原性鳥インフルエンザが確認されたためだ。
12月30日朝、首相官邸では「鳥インフルエンザ関係閣僚会議」が開かれた。
鳥インフル発生のたびに徹底した防疫措置が行われる。
人の出入りが制限され輸出入が停止され、消毒が行われ鶏は殺処分される。
しかしそれで問題は解決しただろうか。
毎年世界各国で鳥インフルンザが発生し、事態は終息していない。
鳥インフルエンザが猛威をふるいはじめた2003年から2011年の間に高原性鳥インフルエンザのために殺処分された家禽は4億羽といわれている。日本国内での数は1,019万羽*だ。
日本の家畜伝染病予防に基づく飼養衛生管理基準には「密飼いの防止」あげられている。過密飼育は伝染病のリスクを高めるからだ。過密飼育から来るストレスも鶏の免疫力を低下させる。
しかし日本の卵用鶏は1羽あたりアイパッド一枚分くらいのスペースで飼育されており、肉用鶏は1平方メートルあたり16羽という過密飼育が一般的だ。
健全な衛生状態を保つことも難しい。養鶏場に行ったことがある方なら分かるが、建物からかなり離れた場所でも異臭がする。日本では養鶏場1戸あたり平均5万もの鶏が飼育されているのだ。糞の量も半端なものではない。鶏を出荷するまでそれらの糞は搬出されない。鶏たちは殺されるまで自分たちの排泄物とともに生きなければならないのだ。
鶏は気嚢を持っており、その大きさは肺の約9倍あり、酸素消費量は豚・牛と比べて3倍以上ある。鶏たちは自らの排泄物から発生したアンモニアなどの有害物質、チリとなった糞、鶏の体から出る脂粉やホコリ状にの羽毛をたっぷり吸い込む。
このような悪環境で暮らす鶏たちには卵の時からワクチンや抗生物質が多剤投与される。飼料の中には成長目的での抗生物質も含まれている。
肉用鶏なら肉が効率よくつくように、卵用鶏なら卵を効率よく産むように続けられてきた「品種改良」も鶏の健康に有害だ。
ブロイラーは少量の餌で体重が増えるよう改良されてきたため「高速成長病」ともいうべき骨格の問題や腹水症を抱えている。急激な体の成長に脚がついていけず歩行困難になっている鶏もいる。「ブロイラーの1/4は、一生の1/3を慢性的な疼痛の中で生きているだろう」という報告もあるくらいなのだ。
採卵用鶏の「改良」も同様に過酷だ。少しの餌でたくさんの卵を産ませるために、採卵用の鶏に行われてきた遺伝的選抜は、鶏の骨をもろくしてしまった。自らに必要なカルシウムも卵の殻として排出されてしまうため、と殺の出荷前の捕鳥作業時、輸送のときに骨折しやすいのだ。
このような形質をもち、このような環境で飼育される鶏たちが病気に強いと考えられるだろうか。
鳥インフルエンザが発生しては徹底的に殺し消毒し、発生しては徹底的に殺し消毒しと繰り返しても解決にはならない。
鳥インフルエンザが終息しないのは、根本的に今の畜産のあり方が間違っているからだ。利益一辺倒で鶏をモノのように扱いその感受性を無視し続ける限り決して収まらない。鳥インフルエンザは家禽たちからの警告にほかならない。
私たちは鶏肉や卵を食べたいという気持ちを抑え、今のように大量生産大量消費される鶏たちの数をもっと劇的に減らす必要がある。工場型の畜産には終止符を打たなければならないのだ。
*「最近の家畜衛生をめぐる情勢について」2016.3.19 農林水産省消費・安全局 動物衛生課国際衛生対策室