2017年9月12日、宮城県議会の一般質問にて、境 恒春(さかいつねはる)議員(みやぎ県民の声)からアニマルウェルフェアについて3点質問が行われました。境議員は以前にも犬や猫の里親探しのシステムづくりについて知事に求める質問をしています。
今回は、採卵鶏のバタリーケージ、ブタの拘束飼育(妊娠ストール)からのアニマルウェルフェアシステムへの移行を後押しする内容、アニマルウェルフェアへの県の積極的取り組みを求める内容、と畜場の飲水設備や人道的な移動方法について改善を求める内容の質問をしてくださいました。
県の回答の中では、畜産クラスターという大規模な畜産の補助金制度があり、その制度をアニマルウェルフェアを利用することを支援することなどが示されました。
①採卵鶏の金網ケージでの飼養や繁殖用メスブタを狭い檻に囲う方法は、日本ではいまだ主流だが世界的には禁止・廃止に向かっている。家畜の快適性に配慮した飼養管理であるアニマルウェルフェアシステムへの移行について、国交付金の活用が可能となっているが、県として農家に促したり助言等は行っているのか。
県農業として、アニマルウェルフェアに配慮した生産システム導入への補助を検討すべきと思うがどうか。
家畜のアニマルウェルフェア、すなわち家畜の快適性に配慮した飼養管理は、家畜の能力が引き出されて健康になり、生産性の向上や畜産物の安全・安心につながるもので、畜産振興の観点からも大切であると認識しております。
公益社団法人畜産技術協会作成の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」では、最も重視されるべきは、「日々の家畜の観察や記録、家畜の丁寧な取扱い、良質な飼料や水の給与等の適正な飼養管理により、家畜が健康であること」と定めており、県では、この考えに基づいて飼養管理の指導等を行っております。
こうしたことから、施設等の整備において、生産者から国交付金の利用相談があった場合は、事業要件や生産者の意向を十分に確認し、安定した事業活動が継続できるかなどの総合的な観点から助言を行うこととしております。
また、アニマルウェルフェアに配慮した生産システムへの補助については、畜産クラスター事業など国の事業が活用できることから、これらを用いて取組を支援してまいります。
今後の畜産振興にはアニマルウェルフェアは必須で、本県畜産物の評価を下げないためにも積極的に取り組むべきだが、現在の取組状況と養豚振興のための具体的施策についてどうか。
県では、毎年すべての畜産農家に対し、飼養衛生管理基準に基づいた指導を行っており、過密な状態で家畜を飼養しないことなど、アニマルウェルフェアにも配慮を求めているところであります。
さらに、アニマルウェルフェアは、東京オリンピック・パラリンピックにおける畜産物提供の要件の1つとされるなど、畜産物を維持・発展させる上で、その重要性は高まっております。
県といたしましては、安全な畜産物の生産性の向上にも寄与するものとして、アニマルウェルフェアを包含する農業生産工程管理、いわゆる畜産GAPの認証が進むよう、養豚業者を始めとする生産者に対する研修会、指導員の育成等を順次進め、アニマルウェルフェアの普及啓発に努めてまいります。
宮城県食肉流通センターでは、シャワーを飲水の代用とし、スタンガン等の電気式追い立て道具を誘導で用いるなど、豚の扱いについて改善の余地があると思うが、県の所感はどうか。
宮城県食肉流通センターは、県内での豚のと畜の約7割が行われる拠点施設であり、平成19年に包括的な食品安全システムの国際認証規格であるSQF認証を取得するなど、安全で高品質な食肉の提供に努めております。
御指摘のありました繋留所の飲水設備については、約1,200頭の収容頭数のうち、800頭程度をカバーするエリアで設置されております。
様々な大きさの豚を収容するエリアでは、一般的な給水施設では怪我や事故のおそれがあるため未設置となっておりますが、職員が家畜の状態を見ながらホースで給水すると伺っており、やむを得ないものと認識しております。
また、誘導はパネルを使って行っておりますが、どうしても豚が動かない場合に限り、電気式追い立て道具を使用しているとのことであり、必要最小限の対応であると考えております。
県といたしましては、今後施設の改修等を行う場合、飲水設備の整備を検討してもらうなど、より一層、アニマルウェルフェアに配慮した運営を行うよう支援に努めてまいります。