国の実施する畜産業界への支援制度には様々なものがありますが、そのうちの一つに強い農業・担い手づくり総合支援交付金というものがあります。
以前別の記事でお知らせしましたが、2018年からは、この交付金を使って産地食肉センター(豚や牛などの屠殺場)を整備する場合は「アニマルウェルフェアへの配慮」が求められるようになり、そしてアニマルライツセンターが要望を続けてきた屠殺場への飲水設備の設置が必要になりました。
「アニマルウェルフェアへの配慮」というぼんやりした言葉だけでは具体性がなく実行力にかけます。しかし、交付金制度の基準にこのような項目が加わったのは一歩前進です。しかしアニマルウェルフェアが産地食肉センターに限定されてしまっており、これは問題です。交付金は食鳥処理場(鶏の屠殺場)や牛豚鶏の飼養施設(農場)にも出ているからです。
2019年の交付金基準でもアニマルウェルフェアは産地食肉センターに限定されていたため、アニマルライツセンターは範囲を食鳥処理場と牛豚鶏の飼養施設にも広げるよう要望していました。
2020年の強い農業・担い手づくり総合支援交付金の基準には次の項目が加わりました。
肉用牛、乳用牛、養豚及び養鶏を対象としたスマート農業実践施設の整備を実施する場合には、スマート技術を2つ以上導入すること。また、スマート技術で得られたデータは畜産クラウドに提供すること。また、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理になるように施設の整備を行うこと。
2020年からの強い農業・担い手づくり総合支援交付金にはその施策の一つに「スマート農業の推進に関する施策」が加わり、そしてスマート農業整備で交付金を受けるためにはアニマルウェルフェアが求められることになりました。畜産におけるスマート整備とは、例えばAIを活用して死亡鶏を発見したり母豚の種付け時期を推定したり、畜舎内にセンサーを設置してインターネット経由で異常を察知したりなどが想定されますが、要するに農場のデジタル化のことです。
牛豚鶏の飼養施設のスマート整備への交付にあたってアニマルウェルフェアへの配慮が求められるようになったのは悪いことではありません。しかしなぜここでもスマート整備に限定されるのかという問題があります。どのような施策であっても畜産への交付金を実施する場合はアニマルウェルフェアへの配慮は必須とすべきです。この交付制度は以前と変わらずアニマルウェルフェアを軽視したものになっています。
現在の交付基準は妊娠ストールやバタリーケージといった虐待施設にも交付される内容になっています。さらに「アニマルウェルフェアへの配慮」というたった一言でさえ産地食肉センターとスマート整備に限定されています。
これらの交付金は私たちの税金を使って行われます。
税金で虐待施設を整備しないでほしい、アニマルウェルフェアへ配慮しない農場に交付しないでほしいと、ぜひ皆様からも地元の国会議員へ意見を届けてみてください。選挙区民からの陳情を真摯に受け止めてくれる国会議員は少なくありません。アニマルライツセンターも引き続きこの問題に取り組んでまいります。