「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(骨子案)」に対し、2回目のパブリックコメントがはじまっています。
現在の骨子案には動物の視点が欠けています。
牛の代わりに、どうぞみなさんからも意見を届けてください。
「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(骨子案)」に対する国民の皆様からの御意見の募集
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_suisin/150227.html
募集期間
平成27年2月27日(金曜日)~平成27年3月6日(金曜日)17時00分必着
終了しました。
パブリックコメントの結果はこちらに掲載しています。
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次の文章に【】内を追加したほうがよいと考えます。
「消費者の需要の多様化や【アニマルウェルフェアへの関心の高まり、】国際環境の変化等により、今後の発展に向けた好機も生じている。 」
OIE、FAOなどの国際機関、各国がアニマルウェルフェアに取り組んでおり、アニマルウェルフェアが畜産物の価値のひとつになりつつあります。
日本でもアニマルウェルフェア商品の潜在的な需要はあります。私どもが2014年に行った消費者調査では「スーパーやコンビニで、動物福祉に配慮された畜産物(放牧飼育された肉、卵、牛乳等)を選択できるようになったほうが良い」という問いに13.8%の人が「そう思う」、54.3%の人が「ややそう思う」と答えています。「アニマルウェルフェア商品」の需要の拡大の可能性は大きいと思います。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
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次の一文に【】内を追加・変更したほうが良いと思います。
「2.消費者の需要の変化
人口減少等により国内需要は減少が見込まれる中、消費者ニーズは、 【動物がより自然な状態で飼育されている、畜産場の衛生管理がしっかりしているなどの】安全・安心【な畜産物】への関心や健康志向等により多様化している。 牛乳・乳製品では、チーズ、発酵乳等の需要が増加し、牛肉では、 脂肪交雑の多い霜降り牛肉だけでなく、【赤身】の牛肉への関心も高まっている。」
消費者の考える安心・安全は、衛生管理にとどまるものではなく、飼育環境にも及びます。私どもが2014年に行った消費者調査では「より自然な状態で育った動物の肉、卵、牛乳のほうが安全性が高いと思うか」という問いに26.9%の人が「そう思う」、53.3%の人が「ややそう思う」と回答しています。より具体的な表現に変更したほうがよいと考えます。
また「適度な脂肪交雑」という表現が用いられていますが、わかりにくく、一般的ではないため、「赤身」という言葉に置き換えたほうが、消費者ニーズが脂肪交雑から離れているということが的確に伝わります。
「消費者の志向がいわゆるサシから赤身へと移っていることが挙げられる。長らく低迷した景気動向に伴う消費者の経済性志向や、健康志向の高まり、さらには、今や65歳以上の人口が4人に1人の割合に達するほど進行している高齢化などにより、脂肪分の少ない赤身肉への需要が増加しているものとみられる。」「さらに高齢化が進行していく中で、赤身肉への需要はますます増えていくことが予想される」(2015年3月の月報「畜産の情報」より)
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「3.国際環境の変化」に、課題としてアニマルウェルフェアへの対応を記載したほうがよいと考えます。OIE、FAOなどの国際機関、各国がアニマルウェルフェアに取り組み法的枠組みを作っている中、日本はアニマルウェルフェアへの対応に残念ながら遅れをとってしまっています。国際化が進む中、他国と足並みをそろえることは喫緊の課題だと思います。
現在、日本政府と欧州連合(EU)間で経済連携協定(EPA)交渉が進められていますが、EUはこれまで各国との貿易協定に動物福祉の基準導入を働きかけており(※)、日本との貿易協定にも動物福祉が求められる可能性もあります。
※自由貿易協定としては2002年にチリとの間で初めて動物福祉が盛り込んだのを皮切りに、その後2004 年にカナダ、2010年には韓国、中米(コスタリカ、エルサルバドル、ガテマラ、ホンジュラス、パナマ、ニカラグア)コロンビアおよびペルーへと拡大した。
その他にタイおよびベトナムとの協力連携協定にも動物福祉が含まれており、ニュージーランド(2007 年)およびオーストラリア(2008 年)とは動物福祉に関する協力フォーラムを設置している。
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新規就農者は、アニマルウェルフェアにかかわる技術・知識の習得が必要であること、および、新規就農者を育成する側の地域の関係機関や国や地方自治体などもアニマルウェルフェアにかかわる技術・知識に熟知していることが必要であることも記載したほうがよいと考えます。国際的な動きをかんがみても、遅れがちな日本のアニマルウェルフェアの基盤を整えることは喫緊の課題であると考えます。
現在の畜産場では、牛に与える必要のない痛みが、慣例的におこなわれてしまっています。
たとえば牛の角の切断ですが、生後1週間に薬品で除角すれば痛みも少ないといわれていますが実際には日本の牛のほとんどが生後数ヶ月以上で角を切断されています。
また、切断後焼きゴテで止血するところもあります。切断された箇所に焼きゴテを当てられるのは相当な苦痛がともない、本来このような処置をする必要はありません。
「とくに気をつけることは、止血に焼きゴテを使用しないことです。牛に無用な苦痛を与え、化膿の原因にもなります。止血はティッシュペーパーを四つおりにして傷口に貼り付けるだけで十分です。出欠が多くても大丈夫。必ず血は自然に止まります」(現代農業2013年5月号より引用)
また牛の角の切断に変わる処置として、全農畜産サービス株式会社は「牛の角カバー」を販売しています。この角カバーは3個セットで2500円程度と高価なものではありません。飼育者への怪我を防ぐだけではなく、角の切断の必要もなく、角の成長も抑えられます。しかし2008年に発売されてからいまだ普及にいたっていない状況にあります。こういった情報も収集し畜産関係者で共有していくべきだと考えます。
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乳牛の子宮機能を研究するなど、牛の生産性を高めるための研究で侵襲的な実験が行われる可能性があるため、「優良な乳用後継牛の確保を推進」においては動物愛護管理法41条の「(動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等)」の遵守を明記すべきであると考えます。
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④ 需給環境の変化に応じた家畜改良の推進の(対応・取組)の中の
【】の部分を削除したほうがよいと考えます。
「乳用牛については、一頭当たり【乳量の向上と】供用 期間の延長による生涯生産性を高める観点から、泌乳能力と体型 をバランス良く改良する。」
「肉用牛については、生産コストの低減や多様な消費者ニーズへ の対応の観点から、早期に十分な体重に達し、【現状と同程度の脂肪交雑が入り】繁殖性等にも優れる種畜の作出や選抜・利用を推 進する。 」
乳量の高さは骨粗しょう症、第四胃変位などの病気につながり、子牛の生産性にも影響します。「世界的な傾向として、20年以上前から乳量の増加とともに繁殖成績が低下している。このことから乳量の増加が繁殖成績に大きく影響していることは明らかであり、遺伝改良による乳量の増加に栄養摂取が追いついていない可能性が示唆された。」(日本獣医師会雑誌 2013年10月号)この問題をクリアするために、泌乳持続性が高い牛の改良を進め病気のリスクを減らそうと日本は研究を進めていますが、研究がはじめられて5年たった今も結果が出ていないという状況です。肉牛の年間乳量が1000kg程度であることに比較すると、日本の乳牛の平均乳量は8100kg。中には10000kgを超えるスーパーカウもいるという状況です。これ以上牛の生理機能の限界を超えた改良を続けても得るものはないと考えます。
肉用牛については、消費者ニーズは「現状と同程度の脂肪交雑」から離れてきており(※)脂肪交雑にこだわる必要はないと考えます。
※「消費者の志向がいわゆるサシから赤身へと移っていることが挙げられる。長らく低迷した景気動向に伴う消費者の経済性志向や、健康志向の高まり、さらには、今や65歳以上の人口が4人に1人の割合に達するほど進行している高齢化などにより、脂肪分の少ない赤身肉への需要が増加しているものとみられる。」「さらに高齢化が進行していく中で、赤身肉への需要はますます増えていくことが予想される」(2015年3月の月報「畜産の情報」より)
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「⑥ 家畜の快適性に配慮した飼養管理の推進」に「去勢や断角などの痛みを伴う処置をする際には動物に対する苦痛やストレスを最小限にするよう施術する。これらの処置はできるだけ若いうちに実施するか、獣医師の監督や助言に基づいて鎮静または麻酔下で実施すべきである」という一文を加えたほうがよいと思います。日本では畜産動物に外科処置をする際、ほとんどの場合痛みを最小限にする配慮が行われていないからです。
2012年に採択されたOIEコード「アニマルウエルフェアと肉用牛生産方式」には、「牛には、生産効率、動物の健康と快適性、人間の安全性の理由から、痛みを伴う可能性のある処置が日常的に行われている。これらの処置は、動物に対する苦痛やストレスを最小限にするよう施術する必要がある。これらの処置は、できるだけ若いうちに実施するか、獣医師の監督や助言に基づいて鎮静または麻酔下で実施すべきである。」と書かれています。また日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針にも「除角によるストレスが少ないと言われている焼きごてでの実施が可能な生後2ヶ月以内に実施することが推奨される。また、子牛市場からの導入後に除角を行う場合は、可能な限り苦痛を生じさせない方法により行うこととする。」と書かれていますがいずれも守られていません。実態は、乳牛も肉牛も、2ヶ月以上で除角するのが一般的であり(肉牛の場合は3ヶ月以上での断角が88.4%-2009年畜産技術協会調査)農家自身の手で施術し、痛みを抑える処置が施されることはほとんどありません。
「④ 生産物の付加価値の向上」の(対応・取組)にアニマルウェルフェア食品を消費者等に訴求し、ブランド化することも盛り込んだほうがよいと考えます。
EUは家畜福祉商品ブランドとしてWelfare Quality(WQ)研究開発2004年から2009年まで実施しており、現在EUの食品企業はヨーロッパだけでなく世界市場に開拓を進めています。アニマルウェルフェア商品が世界的進展を進める中、日本の対応は生産・流通・商品化すべてにおいて遅れています。
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「(2)畜産環境対策」に抗生物質の削減を盛り込むべきだと考えます。
世界保健機関(WHO)は、ヒト医療における薬剤耐性菌問題の原因が食用動物に抗菌性物質を使用することにあるとの観点から薬剤耐性菌が動物と人との間でどの程度分布し、広がっているかという状況を把握するためのモニタリング(耐性菌の動向調査と情報収集)の重要性を指摘しています。日本でも1999年から全国的な薬剤耐性調査が開始しており、2009年の「薬剤耐性菌についてのQ&A(農林水産省)」には『抗菌性物質を使う場合、獣医師の診断や検査結果などの根拠に基づいて「有効な薬剤」の使用を「最小限」に抑えていく、「慎重使用」に心がけていくことが大切となります。』と書かれています。
2014年、欧州連合(EU)は「昨年より抗菌剤が15パーセント減少した」と発表。イギリスの動物用医薬品総局は畜産動物単位当たりの抗生剤の使用量が4ミリグラムの低下したことを報告。 オランダでは人2007と比較して2013年は抗生物質使用量が50から60パーセントの減少したと報告しています。世界各国が畜産における抗生物質の削減に取り組んでいることを考えると、この基本指針にも対策を強化すべき問題として明記すべきだと思います。
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現代の工場型の畜産から環境負荷の少ない自然循環型の持続可能な畜産業への転換を図る、ということを追加するべきだと思います。
畜産環境問題は、排泄物や臭気のみだけではありません。2006年にFAOは地球陸地面積の42%を占める(家畜用飼料を生産するために使用されている土地も含む)畜産業が環境破壊の主要原因となっていると報告しています。穀物生産で使われるエネルギーと比較すると畜産業で使われるエネルギーは膨大であり、2009年のアメリカワールドウォッチ研究所は、畜産業からの二酸化炭素排出量は少なくとも年間326億トンで、世界の年間排出量の51%に上るとしています。世界中の穀物の34%は畜産動物や養殖魚の飼料に使われ(2012年度)、反芻動物から出るメタンの除去方法を各国が研究を行なわねばならぬほど地球上の畜産動物の数は増えており、水資源にも悪影響を与えています。家畜の飼料栽培に使われる灌漑農業は水不足の大きな原因であり、また牛肉生産に必要とされる水消費量は米生産に必要とされる水消費量の20倍にものぼります。2006年、国連環境計画(UNEP)国際地球水アセスメント(GIWA)は、2030年までに17億増える人口を養う水を確保するためには、天水に頼る作物栽培を増やすともに食肉消費も減らさねばならない、と発表しています。
畜産業から出される排泄物や抗生物質、飼料用作物生産に使われる肥料・農薬は水質汚染やサンゴ礁の富栄養化・劣化など諸問題の原因となっています(FAO2006年報告)。
大規模畜産から自然循環型の畜産に移行するということはすなわち、飼育頭数の縮小を意味しますが、畜産振興、畜産の近代化に反することではないと思います。新しい畜産のあり方を検討すべき時期にきていると考えます。
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「危機管理体制の強化」と関連して、「管理者は、地震、火災等の緊急事態に際して採るべき措置に関する畜産動物救護計画をあらかじめ作成する」ことを追加すべきと考えます。
2011年の東日本大震災では多くの畜産動物が取り残され、惨たらしい死を遂げました。再び同じ惨事をおこさないために、あらかじめ行政機関と畜産農家が連携し、救護計画を立てておくことが必要です。2012年の動物愛護管理法の改正時の附帯決議の第十に、「被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること。」とされています。また、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」にも「各農場においては、危機管理マニュアル等を作成し、これについて管理者及び飼養者が習熟することが推奨される。」と書かれています。私たちと同じように感受性があり苦しむことができる畜産動物が、残酷で緩慢な死を迎えなければならないことを避けるために、事前に安楽殺の方法も含めた計画を立てておくことが必要だと考えます。
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アニマルウェルフェア対応のための金融上の措置の必要性を追加するべきだと考えます。
EUでは高い基準の動物福祉を実現することを契約する農場経営者には、それに生じる追加コストと減少した所得を補う制度があります。アニマルウェルフェアの普及には、このような制度が必要だと考えます。私どもが2014年に行った消費者調査では「国に、畜産動物の飼育環境の改善にもっと積極的に取り組んでほしいと思うか」という問いに19%の人が「そう思う」、59.5%の人が「ややそう思う」と答えており、国としてアニマルウェルフェアに取り組むことが求められています。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
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輸出拡大を図り国際競争力を高める上で、アニマルウェルフェアへの対応が欠かせないことを明記すべきだと考えます。
OIE、FAOなどの国際機関、各国がアニマルウェルフェアに取り組んでいる中、日本はアニマルウェルフェアへの対応が遅れています。OIEはWTOの準拠機関であり、OIEが作成した動物福祉規約は貿易に対して大きな影響力を持ちます。輸出拡大を目指すならば、アニマルウェルフェアへの取り組みは必須であると思います。
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「適度な脂肪交雑」という言葉は「赤身」に置き換えたほうが、消費者ニーズが脂肪交雑から離れているということが分かりやすいと思います。
「消費者の志向がいわゆるサシから赤身へと移っていることが挙げられる。長らく低迷した景気動向に伴う消費者の経済性志向や、健康志向の高まり、さらには、今や65歳以上の人口が4人に1人の割合に達するほど進行している高齢化などにより、脂肪分の少ない赤身肉への需要が増加しているものとみられる。」「さらに高齢化が進行していく中で、赤身肉への需要はますます増えていくことが予想される」(2015年3月の月報「畜産の情報」より)
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「(4)畜産や畜産物に対する国民の理解の醸成、食育等の推進」において、アニマルウェルフェアの情報発信の必要性も盛り込むべきだと考えます。
私どもが2014年に行った消費者調査では「学校、地域、家庭等における教育活動、広報活動などを通じて、畜産動物の福祉の普及啓発をおこなってほしいと思うか」という問いに17.1%の人が「そう思う」55.6%の人が「ややそう思う」と答えています。また「自分が購入する畜産物(肉、卵、牛乳等)が、どのような環境で飼育されたものか知りたいか」という問いには15.6%の人が「そう思う」、53.8%の人が「ややそう思う」と答えています。生産と消費の現場の乖離により、消費者は畜産動物がどのように飼育されているのかを知りたくても知る機会が少ない状況です。そのことが日本におけるアニマルウェルフェア普及を妨げている要因のひとつであると考えます。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
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「(4)畜産や畜産物に対する国民の理解の醸成、食育等の推進」の中の「特に、学校給食については、牛乳の飲用習慣の定着化だけでなく」「牛乳の飲用習慣の定着化や」「学校給食への安定的な牛乳等の供給を推進 する」という学校給食の牛乳の定着化を肯定する文章は、削除したほうがよいと思います。牛乳摂取が体に及ぼす影響や、米と牛乳という食べ合わせの問題から、学校給食で牛乳が出されることの是非については意見の分かれているところです。昨年は学校給食で牛乳を廃止した自治体もあります。消費者のニーズや知識はかつてとは変化してきており、それらを反映していない方針であると言えます。牛乳については肯定的な意見だけではなく、否定的な意見も数多くあることから、結論の出ていない問題を国の基本指針の中で肯定的に記すべきではないと思います。
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飼養方法として「つなぎ飼い」と記されている部分は一律に「牛房群飼」に書き換えたほうがよいと思います。つなぎ飼いは牛のアニマルウェルフェアを著しく阻害します。私どもが2014年に行った消費者調査では「日本の乳牛の多くが放牧されておらず、方向転換できない長さの綱でつながれたまま、多くの時間をすごしていることをどう思うか」という問いに23.7%の人が「やめてほしい」62.9%の人が「改善策があればやめてほしい」と答えています。放牧が不可能な立地であっても、牛房群飼は可能です。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
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食肉処理においては HACCP導入の促進だけでなく、アニマルウェルフェア導入も促進するよう明記すべきだと考えます。
日本では、OIEの動物福祉に関する陸生衛生動物規約の「と殺」の下記の部分が守られていない状況です。
・と殺場についてすぐにと殺されない哺乳類は、常に飲水できる必要がある
・12時間以上と殺されない動物には餌が与えられなければならない
この規約ができたのは2005年ですが、それから現在にいたるまで、このコードに違反した状況が続いています。
以下に日本のと畜場における牛と豚の飲水状況を記します。
【2011年の食肉衛生検査所の調査】
牛:と畜場の50.4%で飲水できない
豚:と畜場の86.4%で飲水できない
※牛と豚の半分は前日搬入・翌日と殺
また、と畜場への私どもの聞き取り調査では「水を与えると肉質が落ちる」ために、と殺場に到着後も水を与えないというところも珍しくありませんでした。
しかしそのような考えは迷信にすぎません。帯広畜産大学の調査で、給水が枝肉の食肉格付けに影響することはまったくなかったそうです(ALIVE2015冬号参照)
アニマルウェルフェアを著しく阻害する、このような不合理で国際基準に反する状況は国を挙げて改善に取り組む必要があると思います。