2013年のレポートです。少し古い記録ですが、酪農家の仕事や繋ぎ飼いの牛たちの状況について分かりやすく書かれています。乳牛のアニマルウェルフェアを考えるときの参考にしてみてください。
*写真は、トップの一枚以外は、体験農場で撮影されたものです。
アニマルライツセンター会員
家の近くに酪農を営んでいるご夫婦がおり、酪農家の仕事体験をさせていただきました。農場のスタッフは夫婦二人のみ。40頭ほどの牛が飼育されており、だいたい毎朝6時前後と夕方17時前後の2回に牛舎の清掃・餌やり・乳絞り作業が行われます。
夏場は暑さが厳しい事から、大型の扇風機やミストシャワーなどを導入して温度管理が徹底されているそうだ。これらの費用は光熱費として負担が増すデメリットがあるものの、牛乳が冬場よりも高く売れるメリットがあるとの話であった。
搾乳牛に関しては、完全に繋ぎ飼い。
短いロープに繋がれており、動けるスペースも限られている。特に神経質な牛は、作業中に紐が短くされることもある。私がおが屑をまく作業の時に、嬉しさから激しく体を地面にこすり付ける牛もいたが、巨体であるし左右にも牛がいるため、そのような行為でも事故に繋がる恐れがあると感じた。なにより繋ぎ飼いは可哀想との所感であった。
この農場では、乳牛で飼育する期間は約10年ということだった。
こちらの画像の機械を使って自動的に行う。
乳絞りを行う前に、消毒用のタオルを絞り、事前に乳を拭いてから乳絞り機を付けるが、搾乳を嫌がる牛だと、後ろ足を上げ下げしたり、尻尾を激しく降るなどして抵抗する。
乳牛の乳絞りは1日2回。妊娠直後の乳牛で25~30L、少ない牛で3~5L。ちゃんと絞り切る前に機械を外してしまうと乳房炎になる懸念があるそうだ。
主な乳牛の病気として、乳房炎、関節炎が見られた(画像参照)。
乳房炎
関節炎
乳房炎については、まず薬剤の注射を酪農家が行うものの、なかなか改善されない場合、獣医師を呼んで抗生物質などの投与が行われる。この期間中には乳絞りは出来ず、完治するまで数週間掛かるそうだ。治療中は個別に乳絞りを行い、成分や状態などのチェックも行われる。私が行った時も2頭に症状が出ていた。
仮にこれらの乳が出荷用に混入すると、後の成分検査で廃棄対象となるため、特に注意する必要がある。複数の酪農家の乳を業者が一緒に集めるため、その全ての廃棄処理費用を該当の酪農家が負担する事になってしまうそうだ。
関節炎は対処法がなく、人間で言うと水が溜まるとかと同じで、特に何もしないとのだった。
乳牛の管理として、除角を行っているものの、断尾は行っていない。断尾をしない理由は、尾はハエを追い払ったり体に付いた汚れを落としたりするために必要だからだとのこと。ちなみに角が残っている牛もいたが、他所から移動してきた牛だと断角してない場合もあるそうだ。また、断角は、子牛の時に農協(専門)に任せているとのことであった。
予想以上に、温厚な性格だと感じました。
中には神経質な牛もいるものの、ごく稀です。狭い牛舎を動き回ったり、乳牛たちの狭い間を通ったり、乳絞り器の取り付け・取り外しなど、もし彼らが攻撃的なら成立しません。ただ、いきなり立ち上がったり、横になったりするケースや隣の牛に反応して、動く事もあるので、事故などには十分気を付ける必要があると感じました。
アニマルウェルフェアの観点から、やはり飼育スペースの拡大や常時繋ぎ飼いの廃止、また棒で叩くなどの虐待的行為も改善が必要だと考えました。現実的には色々難しいのでしょうが・・・。