普段牛乳・
また、乳業メーカーが自社で使用している生乳(生の牛のお乳)がどのような農場からやってきているのか、生乳を出す牛がどのような飼育環境にあるのかを把握しているということは、食品の安全、トレーサビリティーの観点を重要視する方にとっては大切な基準ではないでしょうか。
アニマルライツセンターは日本の主要な乳業メーカーに、乳牛の飼育方法や、企業としてアニマルウェルフェアの取り組みを行っているかについてアンケート調査を行いました。回答結果を以下にまとめましたので、牛乳や乳製品を購入する場合は参考にしてみてください。
株式会社明治
明治は自社独自の評価項目(衛生的な作業および衛生的な作業空間、健康な牛づくり、食の安全・安心への配慮、環境への配慮)を達成した農場を「良質乳生産牧場」として認定しており、2018年3月時点で262戸が認定されています*1 。アンケートでは、2018年3月時点で認定農場262戸のうちつなぎ飼育が79パーセント、フリーストール・フリーバーンが21パーセントであるとの回答をいただきました。認定農場以外の農家の飼育方法は把握していないとのことでした。
認定農場には主な飼養方法として放牧をしている農家はありませんでした。認定農場以外からも生乳を購入しているためこの割合を明治全体の割合として考えることはできませんが、つなぎ飼育が圧倒的に多いという印象です。
ホームページによると「今後も、全ての生乳の生産元が認定牧場となることを目指して」*2 とありますので、今後生乳を仕入れている全ての農場での乳牛の飼養方法を把握することが可能になるかもしれません。
森永乳業株式会社
乳牛の飼育方法に関しては回答を控えたいとのことでした。飼育方法を把握しているのかしていないのかということについても回答を控えるとのことでした。
雪印メグミルク株式会社
他の乳業メーカーにも共通している問題ですが、複数の牧場の生乳が混ざった状態のものを調達しているため牧場ごとの飼養方法は特定できないとのことでした。
しあわせ乳業株式会社
全ての乳牛を365日放牧しています。放牧された牛の生乳から作られた牛乳や乳製品を楽天や新宿伊勢丹で販売しています。
八丈島乳業株式会社
放牧された牛の生乳のみ使用した乳製品をオンラインショップなどで販売しています。社内の勉強会や研修などでアニマルウェルフェア向上に努めています。
有限会社あすなろファーミング
放牧された牛の生乳のみ使用した牛乳・乳製品をオンラインショップなどで販売しています。生乳を調達している農家2戸のうち1戸は、アニマルウェルフェア畜産協会の認証を受けています。
株式会社須藤牧場
放牧、フリーバーン/フリーストールで飼育された牛の生乳を使用した牛乳や乳製品を販売しています。
株式会社町村農場
フリーバーン/フリーストールで飼育された牛の生乳を使用した牛乳や乳製品をオンラインショップなどで販売しています。(乳酸菌、脱脂粉乳のみ乳牛の飼育方法が不明)
株式会社長門牧場
フリーバーン/フリーストールで飼育されている牛の生乳を使用した牛乳や乳製品を販売しています。
有限会社シリカファームしすい
フリーバーン/フリーストールで飼育されている牛の生乳を使用した牛乳を販売しています。
株式会社宝幸
原材料として購入しているチーズの約50パーセントが放牧されている乳牛からのものになっています。
有限会社わたなべ牧場
生乳を購入している農家5軒のうち、1件がフリースバーン/フリーストール、4件がつなぎ飼育です。
株式会社 湯田牛乳公社
把握している15戸のうち13戸がつなぎ飼育、2戸がフリーバーン/フリーストールです。
株式会社十勝野フロマージュ
砂谷株式会社
飼養方法はつなぎ飼いのみですが、「断尾をしない農家からしか生乳を購入していない」「原則として鼻輪をつけない飼育を指導している」など、飼育形態ではない部分ではアニマルウェルフェアの取り組みが行われています。
フクロイ乳業株式会社
ニシラク乳業株式会社
株式会社 日清煉乳
株式会社アトリエ・ド・フロマージュ
株式会社おおのミルク工房
広島協同乳業株式会社
倉島乳業株式会社
中沢チーズ株式会社
オハヨー乳業株式会社
淡路島牛乳株式会社
株式会社ホンマ
牛乳のパッケージや乳業のホームページ、コマーシャルなどでは放牧されている牛の写真が使用されることが多いので、乳業メーカーが放牧していない牛の生乳を使用していたり、そもそも牛の飼養方法について把握していない場合も多いということに驚く人もいるかもしれません。
今回263の乳業メーカーに質問状を出し、有効回答をいただけたのは25件のみでした。
回答があった乳業はアニマルウェルフェアに配慮しているところが多い印象があります。実際にはより多くの乳業メーカーがつなぎ飼いの生乳を多く使用していたり、牛の飼養方法を把握していないのではないかと考えられます。
牛乳は飲まない人、放牧された牛の牛乳だけを飲みたい人、牛のアニマルウェルフェアに配慮された牛乳を飲みたい人、安全な牛乳を飲みたい人、安い牛乳を飲みたい人など、一人ひとり牛乳との関わり方は異なるでしょう。
しかし誰もが自分の口に入れる食べ物・飲み物がどのように生産されているのか、自分の購買行動によって動物たちにどのような影響を与えているのか一度考えてみる必要があるでしょう。
放牧やフリーバーン/フリーストールの牛乳でも1リットルあたり300円台の商品もあるなど、必ずしも手が届かないほど高級なものではありません。牛が子供を育てるために出すお乳が水よりも安いという現状ですが、牛乳を飲む頻度を減らして、その分牛に優しい牛乳を選ぶという選択肢もあるのではないでしょうか。また、乳牛の飼育方法に関して自分の納得できる基準に達している乳製品が手に入らない時には、植物性ミルクなどの代替品を選択することも検討してみてください。
*1 https://www.meiji.com/csr/procurement/#procurement02_02
*2 https://www.meiji.co.jp/csr/procurement/introduction/#anc02