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2014年の調査*1では、日本の養鶏場の83.7%で採卵鶏のクチバシが切断されているという結果でした。

(画像:wikipediaより)

なぜクチバシを切断するのか?

鶏同士がつつき合い、傷つけあうのを防ぐため。

なぜツツクのか?

鶏は本来、一日に15000回地面をつついて過ごす生き物です*2
ほかのほとんどの動物と同様、鶏も一日の多くの時間を摂食行動に費やします。自然環境におかれたなら、雌鶏は1日の50%を餌を探してクチバシで地面をつついたり肢で地面をひっかいたりして、餌を探しながら過ごします*3
つついて餌を探したいというのは、鶏の本能です。
しかし四方も床も金網のケージで囲まれ、つつく地面も、たった一本のワラも何もない環境では、鶏が持っている「つつきたい」という強い欲求を満たすことができず、満たされない欲求は「仲間をつつく」という行動に転嫁します。

敷料のない施設では高頻度で羽ツツキやカニバリズムが起こることが、明らかになっています*5

デビークのやり方・鶏に与える苦痛

雛の段階で、電気加温式断嘴器で、麻酔なしでクチバシを切断(デビークまたはビークトリミングとも呼ばれる)します。
クチバシは複雑に神経が通う機能的な器官で、デビーク時には出血、デビーク時の痛みだけではなく、その後慢性的な痛みを経験すると言われています。
『摂食の減少、活動量の減少、永続的な無気力、警戒心が強くなる、神経症』などが引き起こされ *4切断面から感染し、死亡率も高まります*8

赤外線方式なら痛みはないのか?

UKでは(ツツキを抑制する必要がある緊急時を除いて)高温刃方式のビークトリミングは禁止*9されており、赤外線方式のみが許されています。日本でも赤外線のビークトリミングを行っているところがあります。
赤外線方式のトリミングは高温刃方式よりも痛みが少ないという主張もありますが、一方で、赤外線方式のトリミングもまた生まれて数週間の間痛みを引き起こすという行動学上の証拠も提示されています*10
ある研究は、赤外線方式のトリミングを「共食いとツツキ抑制のための理想的な解決方法であるとみなすべきではない。トリミングに代わる方法を、できる限り早急に調査し実施する必要がある*11」と結論づけています。

クチバシを切断しないで、ツツキを防ぐことができるのか?
→できます。

鶏の習性を理解し本来の行動を発現できる環境を用意することでツツキは防ぐことが可能です*12

  • 砂浴び、止まり木の設置
  • 栄養不足によるツツキを引き起こさないため、バランスの取れた給餌をする
  • ペレット状の食餌よりも、すりつぶした食餌を与える。繊維質の餌を食べる時間を増やすことはツツキの減少につながる
  • 飼育密度を低くする
  • ワラ、木くずなどの敷料の設置
  • 群れの羽数を小さくする
  • 羽つつきの少ない品種(LSL Leghorn (white))を選ぶ
  • 雄鶏を混飼

『どのような施設でもツツキは起こりうる。その重要な要因は、飼育者が雌鶏の飼育方法や性質を全然、あるいは少ししか理解していないためだ』-Martin Häne*5

また鶏をよく観察し、つつかれて傷を負っている鶏は早期に別飼育をするなどのケアも必要です。
鶏の行動を理解しようとせず、環境の改善もせずに、いきなりクチバシを切断するというやり方は、非常に暴力的なのです

デビークを規制する国

  • オーストリアでは2000年に養鶏業者や動物福祉団体など関係者間でデビークの段階的廃止に合意。2001年時点で45%強であったデビーク率は2005年には5%以下に低下。現在デビークは殆ど行われていない*14
  • スイス、ノルウェー(1974)、フィンランド(1986)、スウェーデン(1988)はデビークを禁止*13*16
  • デンマークでは採卵鶏はデビークされていない。2014年に養鶏業界がケージ鶏、ケージフリー鶏のデビークを自主規制することに署名した*6
  • ドイツでは、業界団体と政府が、2016年8月からデビークを中止し2017年1月からはデビークされた雌鶏の仕入れを止める自主規制に合意*15
    (参考:2016年の記事で「ドイツとオランダでは、新たに導入された鶏の50%が、デビークを受けていない」とある*7
  • オランダでは、2017年にデビークしない鶏をケージフリー下で飼育した調査から満足のいく結果が得られたため、2018年9月1日からデビークを禁止*13*16
  • オーストラリアの首都特別地域(Australian Capital Territory)はデビークを禁止*13
  • イギリスとフランスでは議論が継続されているが、現時点(2019年6月)では廃止にいたっていない。

*1 平成 26 年度国産畜産物安心確保等支援事業「採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書 」

*2  「アニマルウェルフェア」 佐藤衆介(2005年)

*3 Compassion in World Farming「PRACTICAL ALTERNATIVES TO BATTERY CAGES FOR LAYING HENS」

*4 USDA「Laying Hen Welfare Fact Sheet Fall 」2010年

*5 Heinzpeter Studer「How Switzerland got rid of battery cages 」2001年

*6 BEAK TRIMMING – NO THANKS DanægProducts

*7 Layers with untreated beaks on a commercial farm(world poulty 2016.5.11)

*8 Natural Beak Smoothing at Eurotier 21-11-2016

*9 The Mutilations (Permitted Procedures) (England) (Amendment) Regulations 2010.

*10  Marchant‐Forde RM and Cheng HW (2006) Infrared beak treatment; Part 1, Comparative effects of infrared
and 1/3 hot blade trimming on behaviour and feeding ability. Poultry Science Association Annual Meeting Abstracts 85: 104.

*11  Angevaare, M.J., Prins, S., van der Staay, F.J. & Nordquist, R.E. (2012) The effect of maternal care and infrared beak trimming on development, performance and behaviour of Silver Nick hens, Applied Animal Behaviour Science, 140: 70 – 84

*12 ツツキを防ぐ方法については、次のほか多数の資料を参照 FeatherWel, 2013. Improving feather cover. 

*13 Beak Trimming Action Group Review November 2015

*14 LAYING HEN CASE STUDY AUSTRIA 1 An account of the successful phasing out of beak trimming without increasing problems of injurious pecking

*15 German Poultry Associations Commit to Stopping Beak Cutting

*16 Beak trimming trends Why parts of Europe are keeping them intact. Melanie Epp April 05, 2019

参照

Qaisrani S et al, 2013 Effects of dietary dilution source and dilution level on feather damage, performance, behavior, and litter condition in pullets. Poultry Science 92/3: 591‐602 

Status of beak trimming in EU – Danish poultry Congress 2016 – Status of beak trimming 

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