日本でも進みはじめた畜産動物・水産動物のアニマルウェルフェアですが、その動きを大きくするのは企業の取り組みです。この1年間で重要な一歩を踏み出した企業3社を高く評価し、アニマルウェルフェアアワード鶏賞、および豚賞を送ります。アニマルウェルフェアの取り組みにおいて日本はアジア諸国の中でも遅れており、まだまだ手探りのような状態。そのような中、取り組みや決断の裏には大変な努力があります。各社の取り組みや決断に、心から敬意を表します。
2024年、キユーピー株式会社はOpenWingAllianceとのキャンペーンと交渉により、欧米では使用するすべての卵をケージフリーにすること、グローバルでは2027年までにマヨネーズに使用する卵を20%ケージフリーにすること、そして日本では2030年までにマヨネーズに使用する卵の20%にあたる量をケージフリーで調達し、さらにケージフリーの市場拡大を目指すことを明らかにしました。
これにより数十万羽の鶏がケージから解放されることとなり、これまでの国内企業の取り組みの中では最大の鶏への恩恵になるであろうことを評価しました。
シャトレーゼは自社で放牧養鶏を始め、2024年にその卵を使ったプリンの販売を『YATSUDOKI』のブランドで開始しました。平飼い卵の安定調達と、中長期的に見た企業価値向上を目標に、大手製菓企業が自社内で養鶏を始めるのは新たな方法であることはもちろんのこと、放牧という世界水準を超えるアニマルウェルフェアに取り組むことは、日本の卵業界、および製菓業界に衝撃を与えます。放牧4万羽という数は決して少なくありません。
さらに昨今、ケージフリー卵の需要増加に対し、十分な供給ができない状態の国内養鶏を刺激した、インパクトの高さを評価しました。
七星食品は香川県、徳島県に位置する養豚場です。国際的なアニマルウェルフェアをいち早く取り入れ、妊娠ストールフリーに取り組んできました。2025年、新たな一歩として、残りの母豚の妊娠ストール豚舎もストールフリーに建て替えることを決め、動き始めました。七星食品は1棟目の妊娠ストールフリー豚舎から、その価値と経験を、他の養豚業者にも伝えてくれています。養豚大手が妊娠ストールフリーに向けて動き始める一方で、国内の中小養豚場が取り残されつつあるなか、七星食品の活躍と姿勢は大きなインパクトを与えます。
アニマルウェルフェアを正しく前向きに捉え、従業員の働きがいにつなげ、小売業と協働で発信も行うという、アニマルウェルフェアを実践する生産者としての価値を、最大限に活かす姿勢を評価しました。
▼アニマルウェルフェアアワードとは
前年度に国内のアニマルウェルフェアにとって効果的だった企業に贈るアニマルウェルフェアアワード。今年は鶏賞を2社に、豚賞を1社にを送ることが決定しました。
アニマルウェルフェアアワードは畜産水産動物福祉の向上に取り組む認定NPO法人アニマルライツセンターが、前年度(2024年4~2025年3月末)までの間のアニマルウェルフェア向上に最もインパクトのあった企業を評価するものです。
▼アニマルウェルフェア、すべての食品企業が進める時代に
世界のアニマルウェルフェアの進みと国内の進みでは、速度が異なりますが、それでも国内でもようやく具体的な動きが始まりました。それが2024年度に起きたことです。しぶしぶ一歩を踏み出した企業も、価値を把握して意気揚々と一歩を踏み出した企業もありますが、その両方が国内の畜産動物たちの希望です。
しかし残念ながら肉用鶏のアニマルウェルフェアについては良い動きがありません。外国産の鶏肉のアニマルウェルフェアの水準まで全く追いつかない国内の鶏肉は、大きなリスクを抱えています。食の安全に直結する肉用鶏のアニマルウェルフェアを進めないことは、国民全体のリスクでもあります。2025年度以降は、肉用鶏のアニマルウェルフェアについても取り組みが深まることを期待します。
最後に、アニマルウェルフェアを上げることを検討し、行動をしてくれたすべての企業に感謝します。
ありがとうございました。
なお、受賞企業にはあらためてお礼をお伝えいたします。