2021年2月25日衆議院予算委員会第6分科会で、串田誠一議員(神奈川)の質問は丸々30分を日本の動物たちのために使った。動物愛護法改正の付帯決議の内容に基づき、数多くの質問をした。この記事ではその中から畜産動物に関する部分を取り上げる。
串田議員は、WAPの評価で日本の畜産動物保護指数が最低ランクであることを指摘し、日本での取り組みの必要性を述べた。小泉環境大臣は民間団体の評価ではあるが
こういった低い評価がなされたという事実も一つの結果として受け止めて、今後も産業動物も含む動物の適正な取り扱いの確保を追求していくことが環境省の使命である
と非常に前向きに答え、以下のように続けた。
我が国が、国際的にもアニマルウェルフェアについて一定の評価がなされる国であるべきだ、そういうふうに考えていますので、これからも産業動物の適正な飼養がさらに確保されるように関係省庁と連携して対応していきたいと考えています。
串田議員は「まさにそこ!」と連携の強化を訴えた。
串田議員は環境省の「産業動物の飼養及び保管に関する基準」も「動物の殺処分方法に関する指針」もアニマルウェルフェアという言葉はないものの、かなり寄り添った評価できる指針であるとし、この指針が農林水産省の運営にちゃんと活かされているのか質問した。
日本だけがバタリーケージをまだ95%も採用しているという状況の中で、大臣、この指針が、農水省の今の運営に活かされている、あるいは連携されているとお思いになりますでしょうか。
この質問は小泉環境大臣の画期的な回答を引き出した。
我々が作ったものに対してしっかりと各省庁それを踏まえて対応してもらいというふうに思っています。
いまご指摘の採卵鶏、これは飼養の9割がまさにご指摘があったとおりバタリーケージということですが、このバタリーケージには止り木に止まったり、地面をつついたりと言った鶏が本来備えている行動欲求を満たすことができないという課題があって、アニマルウェルフェアの行動の発現の自由の観点からはこういった飼い方が推奨されるものではないと考えています。
一方で鶏の闘争、戦うことですね、などについては平飼いよりもリスクが少ないという指摘もありますが、動物愛護を所管する環境省としては、あらゆる動物がアニマルウェルフェアという観点から考えて少しでも望ましい形で飼育されるように変わっていく事が重要だと考えていますので、こういった共通認識を各省とも共有できるように我々としてもしっかりと連携していきたいと思います。
バタリーケージのような飼育方法は推奨されないと明言したのだ。
これまでアニマルライツセンターが畜産動物のアニマルウェルフェアについて農林水産省と話し合いを始めてからずっと超えられなかった壁があった。それは本来の行動が発現できない、つまり5つの自由が1つでも欠けたらアニマルウェルフェアが守られている状態ではないという世界の共通認識がどうしても行政に認めてもらえなかった点だ。それを今回超えたのだ!!!!!
環境省と農林水産省はこれまでの連絡会議を持つという連携だけでなく、連携文書に署名したという。
ここまでに来るために、多くの国会議員が質問に立ってくれた(別途記事にしたい)。そして多くの市民が国に意見を届けた。世論の高まりと、多くの人々の声が国を一歩前に進ませたのだ。
翌朝の環境大臣記者会見の場では、産経新聞の記者がこの点を質問し記事にしている。環境大臣はこう答えている。
昨日も(串田議員に対する)答弁で申し上げましたけど、野上大臣との合意の中で、様々な連携が書いてあります。昨日のバタリーケージの案件を含めたアニマルウェルフェア、この観点からも、我々連携が深められればと思います。昨日串田先生からもありましたが、国際的な動きの中で、気付いたら日本の中では問題視されていなかったのに、世界的な動きの中で、日本のビジネスのチャンスが失われかねない、こういったことにつながってはいけません。コロナの後に、外国人観光客の方を含め、インバウンドが再開されたときに、日本のバタリーケージで産まれている卵だから私たちは食べたくないとか、こういった動きが拡大したときに、その経済的な影響を受けるのが、そのことを知らなかった日本の事業者だとすると、それは我々行政のサイドも国際的な動きをしっかりと共有していただきながら、その移行支援というものをどのように一緒になってできるか、環境省と農水省でできることがあれば、ぜひそれは考えてみたいと思います。