成鶏の屠殺場が鶏たちをギュウギュウ詰めのかごに入れっぱなして長時間放置している問題に関し、2018年11月、厚生労働省の調査結果がだされた。
2018年11月21日の農林水産委員会の答弁の中で示された厚生労働省が行った調査によると、調査対象は全国に32施設(2016年時点)ある成鶏の大規模食鳥処理場のうち28施設。(岡山県の3施設、福岡県の1施設が抜けていた)
厚生労働省の調査は、基本的に衛生面のみの調査だ。そのため、コンテナの高さが足りず頭をあげられない、鶏が別の鶏に乗っかってしまった状態になっている、骨折している、野生動物に襲われた、足がもげているなどのアニマルウェルフェアに関することは調査結果に上がらない。鶏の半数以上が上から降ってくる糞や卵によって汚れているかどうかで統計を出している。
それでもアニマルウェルフェアを推し量ることはできる。
たとえば放置時間の調査では、12時間を超えて保管している割合は約半数、中には2日を超えているところや、72時間放置というものまである。
あなたは、食べ物も水もない状態で、何時間くらい動かずに同じ姿勢で耐えることができるだろうか。鶏たちは12時間~72時間、それを強いられている。
また冷水をかけて汚れを落とせば良しとしてしまっている施設もある。真冬にシャワーをかけるとなるとより過酷な状況になり得る。
改善への取り組みがみられる施設もある。
7施設が、計画的な出荷を農場側と調整を行い、保管時間を短くしていることが伺える。これらの施設がどこの施設なのかは調査結果からは不明だが、苦しみが少しだけ減ることは確実だ。
一方、改善を行っていない、または行えない施設が7施設あるようだ。
この中には「鶏の保管時の滞留による汚染を重要視していないため」と、取り組みの意志もないと回答しているところが2施設あり、呆れる。
その他は改善に向けて取り組んでいる最中であったり、状況が不明なところなどであった。
3度の通知
2019年3月にも再び改善を求める通知が農林水産省から出された。これで3度めとなる。内容を読むと通知は特に養鶏場にむけて発せられている。
食鳥処理場への鶏の計画的な出荷について
標記の件につき、平成 30年3月26日付け29生畜第1114号及び平成30年11月15
日付け事務連絡において、貴管内の都道府県に対する養鶏業者等関係者への周知依頼をお願いしたところです。
昨今の鶏卵価格の低迷により、今後、養鶏業者からの成鶏の出荷が増加することが見込まれていることから、仮に、食鳥処理場への出荷が過度に集中し、食鳥処理業者等において、輸送の過密化や食鳥処理場での保管の長時間化を余儀なくされた場合、関係法令等に定める保管基準等の適切な遵守に支障を来すことが懸念されます。
また、先般、厚生労働省が実施した食鳥処理業者に対する調査において、一部の食鳥処理業者から、養鶏業者に出荷を依頼している立場であるため、計画的な出荷の協力依頼が困難である旨の回答もあったところです。
ついては、貴管内の都道府県に対し、食鳥処理場への出荷に当たっては、養鶏業者と食鳥処理業者が調整の上、関係法令等に留意しつつ、計画的に出荷するとともに、養鶏業者は、食鳥処理場から計画的な出荷を求められた場合は積極的に協力すべき旨、改めて養鶏業者等関係者への周知依頼をお願いします。
養鶏場は要請されたからではなく、積極的に自発的に計画的な出荷を徹底すべきだ。それまで卵を奪い続け、体をぼろぼろになるまで搾取した動物を、最後にまた徹底的に痛めつけるというこの行為、人間として恥ずべき行為だ。動物を守りたいという運動をしていると、「畜産業者も決して動物を痛めつけたいわけではない」と言われることがあるが、その良心を信じたいという思いを打ち破る事実がここにあるのだ。
農林水産省、厚生労働省より通知が出されてから約1年が経過している。
期限を決めて改善を行い、厳しい指導を求める。
食鳥処理場を管理監督する厚生労働省と、動物福祉を管理監督する環境省に意見を届けてください。
▼厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長
03-3595-2337
100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
▼環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室
03-3581-3351