「養豚農業の振興に関する基本方針」第二回のパブリックコメントがはじまっています。
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_kikaku/150302_1.html
2015年3月9日終了しました。パブコメ結果はこちら。
「養豚農業の振興に関する基本方針」の策定に伴う2014年に実施された第一回のパブリックコメントに寄せられた意見は406名。うちアニマルウェルフェアの立場からの意見は20数件という少ないものでした。
2013年のカナダの「豚の飼育と取り扱いに関する規約」(code of practice)の草案に対するパブリックコメントには32,340件の批判が寄せられたそうです。
日本の豚が、その必要がないのに麻酔無しで去勢され、母豚が狭い方向転換もできない檻に閉じ込められているのは、多くの意見が届けられないことも要因かもしれません。2015年2月6日にこの基本方針を話し合う会議「第2回養豚農業の振興に関する基本方針について意見を聴く会」の傍聴に行きましたが、アニマルウェルフェアについてはまったく議論が行われませんでした。
「妊娠ストールの廃止を盛り込んでほしい」という一言だけでも、たくさん意見が集まれば国の方向性を変えることができます。ぜひ皆さんからも意見をお願いします。
「養豚農業の振興に関する基本方針(骨子案)」に対する国民の皆様からの御意見の募集
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_kikaku/150302_1.html
(1)養豚農業の振興の意義及び基本的な事項に関する事項
■(2)養豚農業の課題として、アニマルウェルフェアへの対応を追加するべきだと考えます。
OIE、FAOなどの国際機関、各国がアニマルウェルフェアに取り組み法的枠組みを作っている中、日本はアニマルウェルフェアへの対応に残念ながら遅れをとっています。
国際化が進む中、他国と足並みをそろえることは喫緊の課題だと思います。
現在、日本政府と欧州連合(EU)間で経済連携協定(EPA)交渉が進められていますが、EUはこれまで各国との貿易協定に動物福祉の基準導入を働きかけており(※)、日本との貿易協定にも動物福祉が求められる可能性もあります。
※自由貿易協定としては2002年にチリとの間で初めて動物福祉が盛り込んだのを皮切りに、その後2004 年にカナダ、2010年には韓国、中米(コスタリカ、エルサルバドル、ガテマラ、ホンジュラス、パナマ、ニカラグア)コロンビアおよびペルーへと拡大した。
その他にタイおよびベトナムとの協力連携協定にも動物福祉が含まれており、ニュージーランド(2007 年)およびオーストラリア(2008 年)とは動物福祉に関する協力フォーラムを設置している。
■(2)養豚農業の課題として、現代の工場型の畜産から環境負荷の少ない自然循環型の持続可能な畜産業への転換を図る必要性を追加すべきだと考えます。
畜産環境問題は、排泄物や臭気のみだけではありません。2006年にFAOは地球陸地面積の42%を占める(家畜用飼料を生産するために使用されている土地も含む)畜産業が環境破壊の主要原因となっていると報告しています。穀物生産で使われるエネルギーと比較すると畜産業で使われるエネルギーは膨大であり、2009年のアメリカワールドウォッチ研究所は、畜産業からの二酸化炭素排出量は少なくとも年間326億トンで、世界の年間排出量の51%に上るとしています。世界中の穀物の34%は畜産動物や養殖魚の飼料に使われ(2012年度)ているというほど畜産動物の数は増えており、水資源にも悪影響を与えています。家畜の飼料栽培に使われる灌漑農業は水不足の大きな原因となっており、2006年、国連環境計画(UNEP)国際地球水アセスメント(GIWA)は、2030年までに17億増える人口を養う水を確保するためには、天水に頼る作物栽培を増やすともに食肉消費も減らさねばならない、と発表しています。
また、畜産業から出される排泄物や抗生物質、飼料用作物生産に使われる肥料・農薬は水質汚染やサンゴ礁の富栄養化・劣化など諸問題の原因となっています(FAO2006年報告)。
大規模畜産から自然循環型の畜産に移行するということはすなわち、飼育頭数の縮小を意味しますが、畜産振興、畜産の近代化に反することではなく、長期的な発展を意味するものであり、新しい畜産のあり方を検討すべき時期にきていると考えます。
■(2)養豚農業の課題「生産コストを抑えつつ的確な環境対策を行うことが課題となっている。」に、飼料価格の高騰や環境問題やアニマルウェルフェアへの投資による価格の適正化について、国民に理解を求めることも盛り込むべきである。
■(2)養豚農業の課題「国際化が進展する中、養豚農業についても国際的な競争力の強化が求められているほか、」は具体性に欠ける。
「国際化が進展する中、養豚農業についても、アニマルウェルフェアへの配慮やブランド化など、国際的な競争力の強化が求められているほか、」とすべき。
■(3)基本的な対応方向「養豚農業が直面する課題に対処するためには、まず、規模拡大による生産コストの低減、飼養管理などの能力向上を通じて、養豚農業の経営安定を図ることとする。」
の「まず、規模拡大による生産コストの低減」は規模拡大だけが課題の解決方法であるかのような表現であり、削除すべきである。
規模の拡大はこれまで行われてきている流れをそのまま踏襲するに過ぎず、現状の課題を解決する方法にはならない安易な表現である。規模拡大、価格を抑えるという施策を続ければ、養豚業の振興はかなわないことは目に見えている上、国際的な競争力も失う。
■(3)基本的な対応方向として
「放牧養豚の活用を進める」ことを盛り込むべきだと考えます。放牧養豚は「耕作放棄地の解消」「農場残さの循環」「農業の六次産業化」というメリットがあり、乳用牛・肉用牛の放牧と同様に、放牧養豚は国産飼料の自給率向上にもつながります。
以下に北海道と鹿児島県の放牧養豚場の例を紹介します。
北海道
北海道の放牧養豚場、ホープランドではブロッコリー・スイートコーンなどの収穫後の跡地に牧草の種をまき、豚が放牧されている。牧草を食べつくすと、豚はほかの畑へ転牧される。豚は収穫残さを綺麗に食べてくれると言う。このホープランドの飼料自給率は70%を超える。放牧養豚のメリットは自給率だけではない。雑草の根っこも豚は食べるため雑草の繁殖も抑えられる。排泄物処理の問題も解決する。豚の糞尿の肥料効果で、放牧跡地に作付けされた野菜は上質なものができたという。
ホープランドの放牧養豚に関する報告
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2010/feb/spe-01.htm
鹿児島県
農業生産法人えこふぁーむでは、地域に点在していた耕作放棄地に豚を放牧し、農地として再生させた土地を活用して飼料作物や西洋野菜の生産をおこなっているそうです。自社農場で生産したトウモロコシなどの飼料を給与することにより、飼料費の低減も実現させています。(えこふぁーむについては農畜産業振興機構「畜産の情報」2014年5月号を参照)
■(3)基本的な対応方向として、母豚の妊娠ストール飼育から群飼育への切り替えを盛り込むべきだと考えます。
EU、スイス、アメリカの9つの州、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどは妊娠ストールがすでに廃止あるいは今後廃止することが決まっています。海外では企業単位での動きはさらに加速しており、世界最大の豚肉業者であるスミスフィールドも、2017年までに自社の養豚場での妊娠ストールの廃止を宣言、契約農家にも移行を積極的に促しており、さらに2014年に穀物メジャーのカーギル社、ブラジル国内食品製造第2位のシェアのブラジルフーズが妊娠ストール廃止を決定したのは記憶に新しいところです。今後、WTO、FTA 交渉等、国際化の一層の進展が予想される中で、各国と足並みをそろえる必要があると考えます。
妊娠豚の群れ飼育は経営的にも技術的にも十分成立することが欧米で明らかにされており(※)、群飼育の推進を妨げる理由はありません。
日本の多くの国民もストール飼育には問題があると考えています。
私どもが2014年に行った消費者調査では「母豚が、管理をしやすいように、方向転換できず、立つか寝るか以外は身動きの取れない檻(ストール)に拘束されていることをどう思うか」という問いに29.9%の人が「やめてほしい」57.8%の人が「改善策があればやめてほしい」と答えています。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
(※2009年7月号「畜産技術」を参照)
■(3)基本的な対応方向として、アニマルウェルフェアの普及啓発をおこなうことを盛り込むべきであると考えます。
アニマルウェルフェアに配慮された畜産物は、安心安全であり、自然食品として高価格でも価値のあるものですが、現在日本の消費者の理解が進んでいません。そのため、アニマルウェルフェアに配慮された生産方法の普及が進まず、さらに消費者はアニマルウェルフェアに配慮されが畜産物に触れる機会も入手する機会もないままとなり、結果的にアニマルウェルフェアの普及を停滞させることになっています。私たちが2014年に行った生活者に対する調査では、「学校、地域、家庭等における教育活動、広報活動などを通じて、畜産動物の福祉の普及啓発をおこなってほしいと思う」と考える人は、72.7%(「そう思う 17.1%」「ややそう思う 55.6%」)となっており、多くの人が学ぶ機会を欲していることを示しています。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
(2)養豚農家の経営の安定に関する事項
■(1)養豚農業に係る生産基盤の整備と競争力強化 の一施策として、国民のアニマルウェルフェアに配慮した畜産物への理解を促す普及啓発を盛り込むべきだと考えます。
アニマルウェルフェアへの配慮が国際的な変化に対応するためにも、安心安全な食品の確保のためにも必要ですが、欧米とは異なり国民の知識は乏しく、アニマルウェルフェアを生産者が取り入れる基盤ができていないことが、取り組みを遅れさせています。
■アニマルウェルフェア対応のための金融上の措置の必要性を追加するべきだと考えます。
EUでは高い基準の動物福祉を実現することを契約する農場経営者には、それに生じる追加コストと減少した所得を補う制度があります。アニマルウェルフェアの普及には、このような制度が必要だと考えます。日本でもアニマルウェルフェア予算が充てられていますがその額は年間1500万円で、EUの日本円にして150億円という予算に比べると、アニマルウェルフェアへもっと国を挙げて取り組む必要があると考えます。
私どもが2014年に行った消費者調査では「国に、畜産動物の飼育環境の改善にもっと積極的に取り組んでほしいと思うか」という問いに19%の人が「そう思う」、59.5%の人が「ややそう思う」と答えており、国民もアニマルウェルフェアへの取り組みを求めています。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
災害の予防等の推進に、「管理者は、地震、火災等の緊急事態に際して採るべき措置に関する畜産動物救護計画をあらかじめ作成する」ことを追加すべきと考えます。
2011年の東日本大震災では多くの畜産動物が取り残され、惨たらしい死を遂げました。再び同じ惨事をおこさないために、あらかじめ行政機関と畜産農家が連携し、救護計画を立てておくことが必要です。2012年の動物愛護管理法の改正時の附帯決議の第十に、「被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること。」とされています。また、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」にも「各農場においては、危機管理マニュアル等を作成し、これについて管理者及び飼養者が習熟することが推奨される。」と書かれています。私たちと同じように感受性があり苦しむことができる畜産動物が、残酷で緩慢な死を迎えなければならないことを避けるために、事前に安楽殺の方法も含めた計画を立てておくことが必要だと考えます。
(4)豚の飼養衛生管理の高度化に関する事項
■農業従事者や地域の関係機関や国や地方自治体などはアニマルウェルフェアにかかわる技術・知識に熟知する必要があることを記載したほうがよいと考えます。国際的な動きをかんがみても、遅れがちな日本のアニマルウェルフェアの基盤を整えることは喫緊の課題であると考えます。畜産農家がアニマルウェルフェアの情報にアクセスできていないことから、豚に対して必ずしも必要のない痛みが慣例的に与えられているという状況があり、早急な改善が必要だと考えます。
たとえば豚の雄臭をコントロールするためにの外科去勢に変わる処置として、インプロバックという免学的去勢製剤があります。オーストラリアでは10年の使用実績があり、安全性は確認されており、食肉の残留検査で、ワクチンが検出されることもありません。睾丸の除去による免疫力の低下も防ぐことができます。
またワクチンの摂取オス豚は、外科的去勢オス豚に比べると自然なパターンで発育することができるため、飼料効率がよく、糞量も少なく、環境にやさしいそうです。アニマルウェルフェアと生産性の両面でメリットのある雄臭コントロール方法ですが、2010年に日本で承認されて以来、日本では普及にいたっていません。
去勢だけではなく、尾かじり予防の尾の切断も慣例的におこなわれていますが、その有効性に疑問を呈する研究もあります。「ブタが尾かじりを行う原因は正常行動の不十分な発現だけではない。尾かじりを予防するための断尾が、その尾かじりを助長させているという報告もある。イギリスの92農場を対象として尾かじりが起こる危険因子を調査したところ、断尾を行うことによって尾かじりが起こるリスクが3倍にも増加していた。」(「畜産技術」2014.9月号より引用)
こういった情報も収集し畜産関係者で共有していくべきだと考えます。
消費者も畜産動物に与える痛みを問題視しています。
私どもが2014年に行った消費者調査では「去勢や角切り、尾切り、クチバシなどの体の部位の切断が、犬や猫とは違って麻酔なしで行われていることをどう思うか」という問いに「やめてほしい」と答えた人は33.7%、「改善策があればやめてほしい」と答えた人は53.3%という結果でした。
産官学が一体となってアニマルウェルフェア向上に取り組むことは消費者も望むことであると考えます。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
■(1)高度な飼養衛生管理の手法の導入に、母豚の群飼育の促進を盛り込むべき。
動物を拘束し自由を奪う形での管理は、国際的な養豚の流れからは大きく遅れた考え方である。EU、スイス、アメリカの9つの州、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどは妊娠ストールがすでに廃止あるいは今後廃止になっており、世界最大の養豚業者であるスミスフィールド社をはじめ、大手企業が廃止に向かっている。
■(1)高度な飼養衛生管理の手法の導入に、アニマルウェルフェアに配慮した飼育方法をより具体的に学ぶことができるマニュアルの作成、トレーニングの実施を盛り込むべきである。
■高度な飼養管理として、繊維質の飼料給与の促進を盛り込むべきだと考えます。一般的に豚には粗飼料が給餌されませんが、豚にも繊維質の飼料が必要です。「豚は配合飼料だけでは円滑な成長・繁殖を営むことができない」(「家畜飼育の基礎」2000年)。肥育豚の3/4が胃潰瘍であるといわれていますが、その原因の一つとして粒子の細かい飼料や、粗線維の不足が挙げられています。また繊維質の飼料給与は、尾かじり予防にもつながります。
「豚は「噛む」行動に強く動機づけられており、その行動を抑えると仲間の尾やわき腹を「噛む」ようになる。群飼では「噛む」行動を刺激する物の提供が必要とされる。(中略)欧州評議会指令では、十分な嵩のある高繊維質の餌の給与が規定されている。(2009年7月号「畜産技術」より引用)また、「味が良い」と評判のTOKYO Xの豚には繊維質の飼料が与えられており、繊維質の飼料給与は肉質にも好影響を与える可能性があります。
正常行動等の発現を促すための工夫の必要性を盛り込むべきだと考えます。
「オガコ豚舎や発酵床システ ムの場合、豚が自ら好きな場所 を掘り返すこと等ができ正常 行動の発現にプラスとなりま す。 また、ボールや鎖を豚房内に 設置することで、ルーティングに変わる遊戯行動を行うこと ができ、行動レパートリーの多 様化につながることから、試験 等でストレス減少の可能性が示唆されています。」(2014年作成 アニマルウェルフェアの向上を目指して -AWを向上させるための飼養管理-より引用)
(5)安全で安心して消費することができる豚肉の生産の促進、消費の拡大に関する事項
■(5)消費者への情報提供と国産豚肉に対する信頼確保
に、給餌飼料、飼養方法の違いによる肉質の向上だけでなく、アニマルウェルフェアの違いによる品質(安心安全)の向上についても、消費者への理解促進を含めるべき。
アニマルウェルフェア食品のブランド化を盛り込んだほうがよいと考えます。
EUは家畜福祉商品ブランドとしてWelfare Quality(WQ)研究開発2004年から2009年まで実施しており、現在EUの食品企業はヨーロッパだけでなく世界市場に開拓を進めています。アニマルウェルフェア商品が世界的進展を進める中、日本の対応は生産・流通・商品化すべてにおいて遅れています。
また、日本におけるアニマルウェルフェア食品の需要の拡大は期待できるものと考えます。
私どもが2014年に行った消費者調査では「平飼い卵(放し飼い)や放牧豚肉など、動物福祉に配慮された食品を購入するようにしている」という問いに「はい」と回答したのは8.6%にすぎませんでした。しかし同時に「動物の福祉に配慮したお肉や乳製品、卵製品を購入するために、現在の平均的な価格と比較して、あなたはいくら多く支払うことが出来ますか。」という質問に「1.1倍~1.3倍」と答えた人は38.2%、「1.3~1.5倍」と答えた人は12.4%、「1.5~2倍」と答えた人は4.7%、「2倍以上」と回答した人は3.4%という結果でした。58.7%の人はアニマルウェルフェア食品にお金を支払うことができると回答しています。現在は8.6%に過ぎないアニマルウェルフェア食品の購入者を、今より増やすことは十分可能であると考えます。
アンケート詳細
https://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340
(6)その他養豚農業の振興に関し必要な事項
■2013年に発表された「動物福祉と生産衛生を考慮した家畜の係留・追込みおよびと畜についての指針」の周知・普及をはかることを盛り込むべきだと考えます。((財)日本食肉生産技術開発センターが、日本中央 競馬会特別振興資金助成を受けて策定した指針)
日本のと畜場での動物の扱いは、国際基準に反しています。
OIEの動物福祉に関する陸生衛生動物規約の「と殺」には以下が明記されています。
・と殺場についてすぐにと殺されない哺乳類は、常に飲水できる必要がある
・12時間以上と殺されない動物には餌が与えられなければならない
この規約ができたのは2005年ですが、それから現在にいたるまで、このコードに違反した状況が続いています。
以下に日本のと畜場における牛と豚の飲水状況を記します。
【2011年の食肉衛生検査所の調査】
牛:と畜場の50.4%で飲水できない
豚:と畜場の86.4%で飲水できない
※牛と豚の半分は前日搬入・翌日と殺
また、と畜場への私どもの聞き取り調査では「水を与えると肉質が落ちる」ために、と殺場に到着後も水を与えないというところも珍しくありませんでした。
しかしそのような考えは迷信にすぎません。帯広畜産大学の調査で、給水が枝肉の食肉格付けに影響することはまったくなかったそうです(ALIVE2015冬号参照)
アニマルウェルフェアを著しく阻害する、このような不合理で国際基準に反する状況は国を挙げて改善に取り組む必要があると思います。
ブタの改良研究や臨床教育の際に、動物愛護管理法41条の「(動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等)」を遵守しなければならないという文言を盛り込むべきだと考えます。豚肉生産には豚に対する臨床研究や緊急時の対応の習得がかかせませんが、このための実習技術を学ぶために生体がつかわれています。しかし近年麻布大学では生体では全員が十分な実習を受けられない、動物の苦痛が一定限度以上に発生することが多い、などの理由から代替法としてブタの模型を作成しています。畜産業の一環としてこういう動きを促進させるべきだと考えます。